盆休みの最終日、一条真也の映画館「マーターズ」で紹介したフランス・カナダ合作映画に続いて、同じパスカル・ロジェ監督によるフランス・カナダ合作映画「ゴーストランドの惨劇」をU-NEXTで観ました。再鑑賞だったのですが、究極のトラウマ映画に真夏に震え上がりました!
この映画のDVDを持っていましたが、開封していなかったので未見かと思って観始めたら、途中で観たことがあることに気づきました。劇場で観た記憶はない(必ずブログに書くから)のですが、どこで観たのでしょうね? ちょっとしたミステリーです。「ゴーストランドの惨劇」は「マーターズ」の鬼才パスカル・ロジェが6年ぶりにメガホンをとり、絶望的な惨劇に巻き込まれた姉妹の運命を、全編に伏線と罠を張り巡らせながら描いたホラー映画です。出演はテレビドラマ「ティーン・ウルフ」のクリスタル・リード、「ブリムストーン」のエミリア・ジョーンズなど。
人里離れた叔母の家を相続し、そこへ移り住むことになったシングルマザーのポリーンと双子の娘。奔放で現代的な姉ベラとラブクラフトを崇拝する内向的な妹ベスは、双子でありながら正反対の性格でした。新居へ越してきた日の夜、2人の暴漢が家に押し入ってきます。母は娘たちを守るため必死に反撃し、姉妹の目の前で暴漢たちをメッタ刺しにしてしまいます。事件から16年後、ベスは小説家として成功しましたが、ベラは精神を病んで現在もあの家で母と暮らしていました。久々に実家に帰って来たベスに対し、地下室に閉じこもるベラは衝撃の言葉をつぶやくのでした。
当ブログをお読みになっている方ならおわかりでしょうが、わたしは三度の飯よりもホラー映画が好きです。これまで古今東西の名作を観てきました。そんなわたしが断言しますが、本作「ゴーストランドの惨劇」はとにかく怖いです。世界のホラー映画史に燦然と輝く名作だと思います。もしかすると最初に観たときの衝撃と恐怖があまりにも大きかったために脳が記憶から消していたのかもしれません。ポリーンと双子の娘が訪れた叔母の家からして怖いです。ゴシック様式の古い邸宅に、飾られた無数の人形。そして、心臓が飛び出るような古いからくり箱・・・・・・これだけでも十分怖いのに、さらに狂った暴漢たちが侵入してくるのですから、もう「恐怖度MAX」です!
本作「ゴーストランドの惨劇」は「映画史上最も不快なトラウマ映画」と呼ばれていますが、これまでパスカル・ロジェ監督の前作「マーターズ」がその呼び名を得ていました。それを10年後に同じロジェ監督の「ゴーストランドの惨劇」が得たわけですから、凄いですね。両作品とも理不尽な暴力や残酷描写は共通していますが、「ゴーストランドの惨劇」の怖さの本質は「現実が一転する」という恐怖です。これまで自分が信じていた現実がじつは偽の記憶だとしたら、すべてが信じられなくなり虚無の奈落に突き落とされます。
主人公のベスは、怪奇作家ラブクラフトを崇拝しています。本作の冒頭には彼の肖像写真が映し出され、終盤にもラブクラフトその人が登場します。彼の膨大な作品群は「クトゥルー神話」と呼ばれますが、人智を超えた超常的な恐怖を描いたことで知られます。ところが、「ゴーストランドの惨劇」には超常的描写はありません。怪物も幽霊も登場しません。出てくるのは、人形好きの巨漢とか、魔女に扮した中年男とか、頭のおかしい連中です。いわゆる「ヒトコワ」系の作品とも言えますが、じつはもっと怖いものが登場します。それは「記憶の危うさ」です。考えてみれば、現実が歪むほど怖いことはないわけです。この映画、わたしは初鑑賞のはずなのに、確実に以前観たことがありました。わたしの記憶は確かでしょうか? わたしの現実は大丈夫でしょうか?