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「ドラマなふたり」

No.1384

8月23日の日曜日、一条真也の映画館「グレイ・ミッション」で紹介したアメリカ・イギリス合作映画を観た後、そのまま同じコロナワールドシネマ小倉でアメリカ映画「ドラマなふたり」を観ました。結婚式を1週間後に控えたカップルの物語というので仕事柄もあって観たのですが、想像以上に重かった!

ヤフーの「解説」には、こう書かれています。
「結婚式を間近に控えたカップルの関係が、ある告白をきっかけに揺らぎ始めるラブストーリー。幸せの絶頂から一転、崩壊直前に陥るカップルを『チャレンジャーズ』などのゼンデイヤと『THE BATMAN-ザ・バットマン-』などのロバート・パティンソンが演じるほか、アラナ・ハイム、ママドゥ・アティエ、ヘイリー・ゲイツらが出演。監督・脚本は『ドリーム・シナリオ』などのクリストファー・ボルグリ、製作には『エディントンへようこそ』などのアリ・アスター監督らが名を連ねる」

ヤフーの「あらすじ」は、以下の通りです。
「結婚式を1週間後に控え、幸せの絶頂にいるチャーリー(ロバート・パティンソン)とエマ(ゼンデイヤ)。親友夫婦との食事中、4人は過去に犯した最悪の行いを明かすゲームを始めるが、エマの告白に全員があぜんとし、チャーリーは彼女への信頼が揺らいでしまう。幸せな日々は一転し、二人はぎくしゃくした状態のまま結婚式当日を迎える」

クリストファー・ボルグリ監督の名は、 一条真也の映画館「ドリーム・シナリオ」で紹介した2024年のアメリカ映画で初めて知りました。平凡な大学教授のポール・マシューズ(ニコラス・ケイジ)は、世界中の何百万人もの夢に一斉に現れて一躍有名人になります。しかし、ポールが人々の夢の中で悪事を働いたことから、現実世界でも嫌われ始め、悪夢のような日々を過ごすことになります。最初は何も行動しなかったポールですが、次第に暴力やレイプ、殺人などの凶行を繰り返します。人々はポールを恐れ、忌み嫌うようになります。レストランで食事をすることも、娘が出演する舞台を鑑賞することもできません。愛車は落書きされ、街を歩けば暴行を受けます。彼は「ぼくは何もしていないのに、どうしてみんなから忌み嫌われるんだ?」と絶望します。悪夢を描いたという点では、「ドリーム・シナリオ」も、「ドラマなふたり」も共通していると言えますね。

「ドラマなふたり」で主演した2人は、一条真也の映画館「THE BATMAN―ザ・バットマン―」で紹介した2022年のアメリカ映画でバットマンを演じたロバート・パティンソン、「スパイダーマン」シリーズのヒロイン役で夫はスパイダーマンを演じたトム・ホランドというゼンデイヤ。この豪華な顔合わせだけで多くの映画ファンが「観たい!」と思ったのではないでしょうか。バットマンとスパイダーマンの妻の恋愛映画というだけでシュールな印象ですが、本作はけっして非現実な物語ではありません。きわめて現実的かつ切実な物語となっています。

結婚式を1週間後に控えたロバート・パティンソン演じるチャーリー、ゼンデイヤ演じるエマの2人は、結婚披露宴でスピーチを依頼している親友夫婦と飲みます。そのとき、4人は「過去に犯した最悪の行いを明かす」ゲームを始めます。ネタバレになるのでその内容はここには書きませんが、4人はそれぞれ正直に話します。そのとき、エマの告白に全員が度肝を抜かれ、彼女がサイコパスのような見方をされてしまうのですが、わたしには違和感がありました。なぜなら、エマは最悪の出来事を「想像した」、あるいは「計画した」だけで実行には至っていません。一方、他の3人は悪事のレベルの差はあれ、実際に行ったことだからです。

そもそも「告白ゲーム」なんかするのが間違っています。わたしは「王様ゲーム」という下品なゲームも大嫌いなのですが、本作に登場する「告白ゲーム」はそれ以上に悪質であり、友人同士、ましてやこれから結婚する者同士がするような遊びではありません。相手の「他者性」というものは踏み越えてはならない一線です。たとえ、夫婦や恋人であっても一線を越えてはなりません。エマの告白を聴いたチャーリーはそのことが頭から離れなくなり、彼女の本性を疑うようになります。しかし、多額の費用とエネルギーをかけた結婚式は数日後に迫っている。「このまま彼女と結婚していいのだろうか?」と迷うチャーリー。これはかなりのストレスを伴う生き地獄であると言えます。

チャーリーの妄想はひどくなる一方で、エマのことを恐怖の対象として見始めます。こうなると、もうほとんどサイコホラー映画に近づいていきます。実際、結婚披露宴のシーンなどはこれまでに観たどんなウェディング・シーンよりも恐ろしかったです。恋愛ホラーという点では、一条真也の映画館「オブセッション 災愛」で紹介したアメリカ映画を連想しました。内向的な性格のベア(マイケル・ジョンストン)は、ニッキー(インディ・ナヴァレッテ)に好意を抱いていました。彼女に近づきたいがためにベアは、願いをかなえるという不吉なまじないに手を出してしまいます。それ以来彼の生活は少しずつおかしくなっていき、ニッキーへのベアの純粋な好意はやがて執着へと変化するのでした。

しかし、「オブセッション 災愛」の場合はファンタジー性が強いですが、「ドラマなふたり」はリアリティのある物語であり、もっと怖いかもしれません。この映画、結婚披露宴がぶち壊しになります。チャーリーのスピーチの失敗が最大の原因なのですが、それ以外の人々のスピーチにも明らかに悪意がありました。わたしは祝いの席で祝われるべき当人をディスる行為を絶対に許せません。結婚披露宴などでも受けを狙って、新郎新婦をディスるような馬鹿がいますが、そういう人間は社会人失格であり、誰からも相手にされなくなるでしょう。儀式や祝宴を破壊する行為は「人の道」に反する行為であり、破壊者は必ず社会的制裁を受けるのです。

 

「祝い」の席でネガティブな言葉を吐く者は「呪い」を口にしているのと同じ。「祝い」と「呪い」とは正反対の関係にあります。「おめでとう」に代表される「祝い」の言葉には、善き言霊があります。「祝」に似た字に「呪」がありますが、どちらも「兄」とつきます。漢字学の第一人者だった白川静によれば、「呪」も「祝」も神職者に関わる字であり、「まじない」の意味を持ちます。「呪い」も「祝い」ももともと言葉が「告(の)る」つまり「言葉を使う」という意味であり、心の負のエネルギーが「呪い」であり、相手を全否定し、闇をもたらします。一方、心の正のエネルギーが「祝い」であり、相手を全肯定し、光をもたらします。

ネガティブな「呪い」を解く最高の方法とは、冠婚葬祭に代表される「祝い」を行うことなのです。わが社の冠婚施設では、結婚披露宴のみならず、長寿祝い、厄除け祝い、還暦祝いなどが開かれ、多くの方々が参加しています。これからも、「おめでとう」と「ありがとう」の声、心のサーブと心のレシーブが行き交う社会の実現をめざしたいです。分断や対立が続く時代だからこそ、祝いの文化を絶やしてはなりません。「おめでとう」と「ありがとう」が自然に交わされる社会には、人を思いやり、感謝する心が育まれます。祝いの光を広げることこそ、心ゆたかな社会への第一歩なのです。映画「ドラマなふたり」を観て、そんなことを考えました。

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