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シャドウワーク

No.1407

9月25日から公開された日本映画「シャドウワーク」をローソン・ユナイテッドシネマ小倉で観ました。最初はDVをテーマにした社会派映画ぐらいに思っていたのですが、途中から想定外の展開となり、予想を超える面白さでした。

ヤフーの「解説」には、こう書かれています。
「佐野広実の小説『シャドウワーク』を実写化したクライムサスペンス。暴力を振るう夫のもとから逃げ出し、配偶者や親によるDVの被害者をかくまうシェルターに身を寄せる女性が、そこで異様なルールを知る。監督は『君は永遠にそいつらより若い』などの吉野竜平。『ストリート・キングダム 自分の音を鳴らせ。』などの吉岡里帆、『死ねばいいのに』などの奈緒、『死神バーバー』などの美保純のほか、酒井若菜、ファーストサマーウイカらが出演する」

ヤフーの「あらすじ」は、以下の通りです。
「すぐに手が出る夫のもとから逃げ出したものの、居場所を突き止められてしまった紀子(吉岡里帆)は、知り合った看護師・路子(美保純)に連れられて、三浦海岸の外れにある施設に向かう。そこは配偶者や親から暴力を受けた女性たちを保護するシェルターで、しのぶ(酒井若菜)、奈美(ファーストサマーウイカ)ら入居者は、そこを『おうち』と呼び、食事の用意や掃除などが持ち回り制で行われていた。平穏な日々を取り戻す紀子だが、シェルターやほかの女性たちの言動に、ある違和感を抱く」

原作者の佐野広実は1961年、神奈川県生まれ。小学4年生のときに江戸川乱歩の『黒蜥蜴』に魅了され、小説を書き始めたそうです。神奈川県立横浜翠嵐高等学校、横浜国立大学教育学部卒業後、私立中高の国語教師や業界誌編集者の傍ら、執筆活動を行いました。第6回松本清張賞を「島村匠」名義で受賞。2020年、『わたしが消える』で第66回江戸川乱歩賞を受賞。2022年9月に講談社より本作の原作小説『シャドウワーク』を発表。他の著書に『誰かがこの町で』『氾濫の家』などがあります。

本作が映画として面白いのは、もちろん原作が優れていることも大きいですが、役者陣のレベルの高さを忘れることはできません。風吹ジュンと美保純の2人が出演しているだけで、わたしは安心してしまい、「もう名作確定!」といった気分になりました。実際、この2人の老熟した演技が本当に素晴らしかったです。2人とも秘密を抱えていますが、刑事と対面しているときのポーカーフェイスが秀逸でした。また、風吹ジュン演じる「おうち」の主が吉岡里帆演じる紀子に秘密を打ち明けるときの迫力も圧巻でした!

それから、奈緒が演じる薫の夫を演じた北村匠海がパーフェクトな悪役を演じていました。彼を初めてスクリーンで見たのは一条真也の映画館「君の膵臓をたべたい」で紹介した2017年の日本映画ですが、そのときの彼は20歳の初々しい若者でした。あの純粋な青年が本作ではとんでもない悪党を演じています。一条真也の映画館「悪い夏」や一条真也の映画館「愚か者の身分」で紹介した、ともに2025年の日本映画でもワルの役でしたが、それでも共感できる部分のある役でした。ところが本作では、1ミリも共感できないクズの中のクズ。まさにパーフェクトな悪役を見事に演じたのです。

そして、なんといっても吉岡里帆と奈緒のW主役が最高に素晴らしかったです。吉岡のDV夫に怯える表情はリアルそのもので、「彼女は本当にDVのトラウマがあるのではないか?」と思えるほどでしたね。夫のDVによって入院した先で知り合った看護師・路子(美保純)から紹介された「おうち」の来たときもビクビクと怯えていましたが、迫真の演技でした。臆病な紀子が「おうちを守らなきゃ!」と奮起して敵に向かって行く場面も良かったです。「さすがは日本アカデミー賞最優秀助演女優だ!」と思いました。

吉岡里帆とW主演を張った奈緒も負けていませんでした。最初は「吉岡に比べて奈緒じゃ相手にならないのでは?」と思ってたのですが、杞憂でしたね。わたしにとっての彼女は、ブログ「あなたの番です」で紹介した2019年に日本テレビ系「日曜ドラマ」で放映されたサスペンス・ドラマのイメージが強いです。同作で奈緒が演じた女性は笑顔を絶やさないのですが、その素性は他の女性の彼氏や夫を狙い、付き合うと一転して興味を無くし冷める性格でした。それで「色物」的な印象を抱いていたのですが、本作ではDV夫に悩む女刑事を見事に演じていました。

本作で描かれているDVには強い怒りを感じました。全国的な配偶者からの暴力に関する相談等件数は年間9万件を超え、警視庁の配偶者からの暴力事案の概況や内閣府の統計でも高い水準で推移しています。女性の約3人に1人が配偶者からの暴力被害経験があるとされ、決して他人事ではない身近な問題です。身体的暴力だけでなく、精神的DV(モラハラ)や経済的・性的DVに悩むケースも多く見られます。女性だけでなく、男性からの相談割合も年々増加傾向にあるといいます。恋人同士による「デートDV」や、子どもの目の前で暴力を行う「面前DV」の増加も深刻な問題となっています。

映画版の公開に先立って、WOWOWでは「連続ドラマW シャドウワーク」が2025年に放送されました。監督は山田篤宏、脚本は関久代、出演は多部未華子、 桜井ユキ、川西拓実(JO1) トリンドル玲奈 、上原実矩 、須藤理彩 、街田しおん 、森岡龍 竹、財輝之助、石田ひかり、寺島しのぶ。WOWOWの番組紹介には、「殺されるな、命も魂も。命がけでDV夫から逃れてきたその家にはある『ルール』があった。声をあげられない被害者たちの究極の選択を描くヒューマン・ミステリー」と書かれています。ドラマと映画の相乗効果で、多くの人々がDVの実情を知るようになればいいですね。心から、そう思います。

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