日本・フランス合作映画「私はあなたを知らない、」をローソン・ユナイテッドシネマ小倉で観ました。ネットでの高評価は知っていましたが、実際に鑑賞してすごく良かったです。監督自らが書いたという脚本が素晴らしい! 泣けましたし、ラストシーンも含めて「巧いなあ!」と唸りました。一条賞の映画篇大賞候補作品です!
ヤフーの「解説」には、こう書かれています。
「『湯を沸かすほどの熱い愛』などの中野量太監督が、罪と贖罪、赦しをテーマに撮り上げたヒューマンサスペンス。身寄りのない孤独な青年がシングルマザーとその娘に出会い、彼女たちと過ごすうちに生きる喜びを見いだしていく。『盤上の向日葵』などの坂口健太郎が主人公を演じ、『違国日記』などの早瀬憩、『バカ塗りの娘』などの堀田真由のほか、倉田瑛茉、滝藤賢一、原田美枝子らが共演する」
ヤフーの「あらすじ」は、以下の通りです。
「身寄りのない28歳の西山夕平(坂口健太郎)は、自分の中で決められたルーティンをこなすだけの日々を送り、それを寂しいとも思わずに生きてきた。そんな彼の単調な日常が、職場のパート職員・東浜紗月(堀田真由)との出会いにより色づき始める。あるとき彼女から5歳の娘・朝子(倉田瑛茉)を紹介され、夕平は紗月がシングルマザーであることを知る。彼女たちとの交流を通じ、家族の温かさに触れた夕平の心は解きほぐされていく」
わたしは中野量太という映画監督を初めて知ったのは、一条真也の映画館「湯を沸かすほどの熱い愛」で紹介した2016年の日本映画を観たときです。余命宣告を受けた主人公の奮闘に迫る家族ドラマで、非常に感動しました。1年前、あるじの一浩(オダギリジョー)が家を出て行って以来銭湯・幸の湯は閉まったままでしたが、双葉(宮沢りえ)と安澄(杉咲花)の母娘は2人で頑張ってきました。しかしある日、いつも元気な双葉がパート先で急に倒れ、精密検査の結果末期ガンを告知されます。気丈な彼女は残された時間を使い、生きているうちにやるべきことを着実にやり遂げようとするのでした。本作「私は、あなたを知らない、」は、「湯を沸かすほどの熱い愛」以来、10年ぶりに中野監督が完全オリジナル脚本を手がけたヒューマンサスペンスです。
本作では、狂おしいほどに“家族”という幸せを求め、愛する人を殺める重い罪を犯した孤独な青年・夕平(坂口健太郎)が、封印してきた記憶と真実に触れていく姿が描かれます。「坂口健太郎、すごいな!」と思えるほどの熱演でした。本作で初タッグを組んだ坂口と中野監督は、撮影の約1年前に初めて顔を合わせたそうです。坂口は、「まだ監督とお会いする前までは、繊細な方だと思っていたんです。文学的ともちょっと違うんですけど、感情を書ける、気恥ずかしいことも書ける生々しさを感じた」と振り返ります。 特に印象に残ったのは夕平が遊園地で幼い朝子と過ごす場面だそうで、「こんなに頑張っているんだよ。こんなに君のために」と尽くした相手から心ない反応を受け、心にわずかな“黒いもの”が浮かぶ瞬間に「すごく理解できる」と語る一方、それを脚本に書くことについて「弱点というか、自分の恥ずかしい部分を書くこと」だと感じたといいます。
一方、中野監督は、坂口に当初「繊細なイメージ」を抱いていたものの、実際に会うと「体育会系のお兄さんだった」と笑いながら告白しています。「めちゃくちゃ明るい人で、めちゃくちゃ人のことをちゃんと見てくれている」と印象を明かしました。演技についても「僕が求めていた部分はきちんとあって、そこをうまく出してくれて、俳優って面白いな、と思った」と称賛しています。 中野監督が本作で向き合ったのは「人を殺める」という重い題材で、これまで避けてきたテーマだったそうです。しかし、簡単に命が失われていく社会情勢を目にする中で「ひとりの命が殺められたことで、一体何が起きるかを、とことん丁寧に描いてやろう」と決意し、「それが今の時代に対する僕のメッセージになるかなと思った」と語ります。 本作は監督自らが書いた脚本が本当に素晴らしいのですが、特に「パン切り包丁」と「サボテン」という小道具の使い方が天才的に巧かったです。
夕平を演じた坂口はもちろんですが、紗月を演じた堀田真由も良かったです。シングルマザーである彼女には夕平を利用するだけして用済みになったら捨てるようなずるい一面があるのですが、そのへんも見事に演じていました。そして何より幼少期の朝子を演じた倉田瑛茉ちゃんの演技が素晴らしかったです。怒ったり、泣いたり、笑ったり・・・・・・さまざまな表情を自然に演じており、将来が楽しみな子役ですね。完成した作品を観た坂口は、開口一番「超名作!」と声を上げたそうです。夕平、紗月、朝子という限られた関係性を描いた「すごく狭い世界の話」でありながら、そこには「無限が広がっている」と感じたといいます。また坂口は、夕平を演じるうえでは、「100%理解しないようにしようみたいなところもあった」と言う一方で、「ただ、100%共感はしていたい」と意識したことも告白しています。夕平の選択を肯定するのではなく、「彼がどう思って、生きて、決断したのかは本当に丁寧に出したい」と役に向き合ったそうですが、よく理解できます。
中野監督も「正しい、正しくないということではない」とし、「共感はして演じるけど、決して正しい行為かと言われたら、そうではないかもしれない」とコメントしています。「登場人物の選択に答えを示すのではなく、その思いと行く末を観客に委ねる作品です」と語りましたた。中野監督によると、試写を観た知人からは「人間味あふれた、ユーモアあふれるサスペンス」と評されたといいます。監督自身も「普通の、ただのサスペンスでは全然ない」と語ります。坂口も、「自分なりの感想を伝えたい」という連絡をもらうことが多く驚いたと明かしています。「男性、女性、年齢、環境を問わず、その人が観てくれる瞬間に一番届く映画」と表現し、作品の何かが「雫みたいに、観てくれた方の心に残る」ことを願っているとか。本作にはフランス映画界も出資のオファーが来ましたが、日本映画がまた超名作を生みだしたことを世界中の映画ファンに知ってほしいですね!