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「オデュッセイア」

No.1395

9月4日の早朝から次回作の出版打ち合わせをした後、アメリカ映画「オデュッセイア」をTOHOシネマズ日比谷のIMAXで観ました。11日からの公開なのですが、先行上映が行われたので鑑賞しました。全篇IMAX撮影で作られた映像は圧巻でしたが、上映時間172分は長過ぎた!

ヤフーの「解説」には、「クリストファー・ノーランが脚本・製作・監督を務める、叙事詩的なファンタジー・アクション映画。本作は、ホメロスの同名の叙事詩(オデュッセイア)を原作とした作品であり、ユニバーサル・ピクチャーズが配給し、製作はノーランが自ら率いるシンコピー・フィルムズが手掛ける。映画では、マット・デイモンが古代ギリシアのイタケーの王(バシレウス)であるオデュッセウスを演じ、トロイア戦争後に妻のペネロペと再会するために故郷へ帰還する旅路が描かれる。また、アンサンブル・キャストとして、トム・ホランド、アン・ハサウェイ、ゼンデイヤ、ルピタ・ニョンゴ、ロバート・パティンソン、シャーリーズ・セロンらが出演する」と書かれています。

ヤフーの「解説」には、こうも書かれています。
「2024年10月、ノーランが前作『オッペンハイマー』(2023年公開)に続き、ユニバーサル・ピクチャーズで次回作を制作中であることが明らかになった。その後数か月にわたってキャスティングが行われ、同年12月には本作がホメロスの『オデュッセイア』を原作とした作品であることが発表された。撮影は2025年2月下旬に、イギリス、モロッコ、そしてイタリア各地で開始された。推定製作費は2億5000万ドルとされており、ノーランのキャリア史上、最も高額な映画になると見られている。2026年7月17日にアメリカで劇場公開された」

ヤフーの「あらすじ」は、「古代ギリシアのイタケーの王である英雄オデュッセウスがトロイア戦争の勝利の後に故郷イタケーへ帰還(凱旋)する途中に起きた危険な旅を描く。オデュッセウスは、キュクロープスのポリュペーモス、セイレーン、そして魔女神キルケーと遭遇しながら進み、最終的に妻ペネロペとの再会を果たすまでの旅路を描く」です。

原作の『オデュッセイア』は、ホメロスによる古代ギリシアの二大叙事詩の1つです。『イーリアス』とともに西洋最古の古典とされます。本作はイタケー島の英雄王オデュッセウスが、10年にわたったトロイア戦争終了後、故郷に帰還する物語です。トロイアからイタケーまでの旅には更に10年が費やされ、この間、オデュッセウスは多数の危難に遭遇し、彼の船の搭乗員は全員が命を落とします。長い期間の不在によって、彼はイタケーでは死亡したと見なされ、妻ペーネロペーと息子テレマコスは、ペーネロペーと結婚して財産と王の地位を手にいれようと互いに争う、無法で不埒な求婚者たちの群れに抗する日々を過ごしていました。

西洋文化を根幹から支えている二大カノンといえば、『ギリシャ神話』と『聖書』。オデュッセウスの物語は『ギリシャ神話』の中のエピソードですが、欧米人にとっては日本人の「桃太郎」や「浦島太郎」のように誰でも知っています。もう何度も映画化されていますが、ここにクリストファー・ノーラン版「オデュッセイア」が完成しました。先行公開初日にちょうど東京出張中でしたので、朝一番の回を予約。わたしは後方通路側の席を取りましたが、満席で窮屈でした。本当はプレミアムボックスシートを取りたかったのですが、なぜか会員予約開始の時点ですでに満席。関係者用に押さえたのでしょうが、こういうのはやめていただきたい!

本作「オデュッセイア」の冒頭には、トロイア戦争の回想シーンが流れます。トロイア戦争といえば、2004年のアメリカ映画「トロイ」を思い出します。居間から約3000年前の紀元前12世紀に起こったとされるギリシャ神話の悲劇を題材に、恋の情熱によって引き起こされたトロイ戦争を壮大なスケールで描いた歴史スペクタル大作です。美しく無謀なトロイの王子パリス(オーランド・ブルーム)は、愛するあまり他国の王妃ヘレン(ダイアン・クルーガー)を奪い花嫁にします。彼女を取り戻すため差し向けられたのはギリシャの大軍と無敵の戦士アキレス(ブラッド・ピット)。そして、史上最大の戦いの幕が開くのでした。監督はウォルフガング・ペーターゼンですが、独自の解釈でギリシャ神話を映画化したという点では「トロイ」と「オデュッセイア」は双璧をなす作品であると言えるでしょう。

IMAX映像で描かれるオデュッセウスの物語は超弩級の迫力ですが、特に一つ目巨人キュクロプスや六頭の蛇でできている怪物スキュラの登場シーンはまさに大怪獣映画でした。また、トロイの木馬の内部に兵士が隠れているシーンがすごくリアルで、臨場感満点でした。あと、古代ギリシャの「クセニア」というホスピタリティ思想が描かれていて、興味深かったです。古代中国の「礼」のごとく、古代ギリシャでは客人は理由を問わず受け入れてもてなし義務がありました。なぜなら、浮浪者のような旅人であっても、神々が人間に化けているかもしれないからです。客人は神と同じくらいの対応をされますが、もてなされた側も敬意ある対応をしなければなりません。まさに「礼」の応酬ですね。

客人を必ずもてなすという「クセニア」は、「ゼウスの掟」という神聖な義務となっています。最高神ゼウスがこの秩序を守っているのです。「もてなし」というのは生者に対する礼ですが、古代ギリシャでは死者への礼も重んじられました。死者には適切な葬送儀礼を行うことが義務だったのです。死ぬことよりも、死んだ後に正しく葬られないことが死者への最大級の侮辱とされました。適切に葬送されないと、死者はハデスの冥界をさまよってしまうのです。たとえ戦争中であっても弔いの儀式は欠かせませんでした。祖国へ帰る途中のオデュッセウスが「亡くなった部下たちを西の地で必ず弔う」と誓ったシーンが印象的でした。3000年前から、葬送儀礼は「人の道」だったのです!

本作には綺羅星の如くハリウッド・スターが大勢出演していますが、中でもスパイダーマン役で知られるトム・ホランドが印象的でした。彼は英雄オデュッセウス(マット・デイモン)と妻ペネロペ(アン・ハサウェイ)の間に生まれた息子テレマコスを熱演しました。トロイア戦争の終結後も帰還しない父オデュッセウスを捜すため、テレマコスは女神アテナ(ゼンディア)の導きによってピュロスやスパルタを訪れる旅に出ます。『オデュッセイア』の中でこの部分は「テレマキア」とも呼ばれます。テレマコスは母ペネロペに群がる不遜な求婚者たちに悩まされながらも、若き王子として宮殿を守ろうと奮闘します。帰還した父オデュッセウスと正体を明かさぬまま再会し、協力して宮殿の求婚者たちを一掃しました。このときのアクション・シーンは素晴らしかったです。

さて、本作「オデュッセイア」は世界興行収入が15億ドルを突破し、クリストファー・ノーランの代名詞であった「ダークナイト」(2008年)を超えて名実ともに“ノーラン史上最高傑作”と評されています。本作が「最高傑作」と絶賛される主な理由は以下の3点です。①映画史上初「全編IMAXフィルムカメラ」撮影②主演級が勢揃いした「オールスターキャスト」③巧みな「時系列の魔術」と泥臭い家族ドラマ。このような相乗効果もあって、本作はアメリカでは公開1年前から座席指定券を販売しましたが、なんと1時間以内に95%が完売したそうです。さらには映画チケット販売システムが相次いでパンクするなど大騒動になりました。今年7月17日の北米公開後も勢いは衰えず、世界興収は11億ドルを突破。ノーラン作品で最高興行収入となりました。もちろん現在も記録を更新中で、2026年の全世界興収でも屈指のヒットとなっています。

「オデュッセイア」のハイライトはやはりトロイの木馬が登場するトロイア戦争のシーンでしょうが、このときオデュッセウスが「トロイを焼き尽くすことは、世界を焼き尽くすことだ」とつぶやいたのが印象的でした。このとき、わたしの中で古代ギリシャのトロイが81年前の広島や長崎に重なりました。 一条真也の映画館「オッペンハイマー」で紹介したノーラン監督の前作はアカデミー作品賞や監督賞など7冠に輝きましたが、彼の中には「世界の終焉」への志向があるのでしょうか? 最後に「トロイ」でわたしの大好きなダイアン・クルーガーが演じたヘレンを「オデュッセイア」ではアフリカ系の女優が演じていたのには驚きました。ポリコレなのでしょうが、せっかくの超大作なので原作に忠実に描いてほしかったと思うのは、わたしだけではありますまい。

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