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「八つ墓村」

No.1403

9月18日の夜、この日から公開された日本映画「八つ墓村」をローソン・ユナイテッドシネマ小倉で観ました。清水祟監督作品と知っていたので期待はしていませんでしたが、予想通りの駄作でした。つまらなくて、寝落ちするのをこらえるのが大変でした。

ヤフーの「解説」には、こう書かれています。
「横溝正史の小説を『呪怨』シリーズなどの清水崇が映画化し、主人公の名探偵・金田一耕助を歌舞伎や映画、ドラマなどで活動する尾上松也が演じるミステリー。名家の出身である母親を亡くしたことをきっかけに、自身のルーツである八つ墓村を訪れた大学生が、金田一と共に不可解な連続殺人事件に巻き込まれていく。奥智哉、堀田真由、高島礼子、滝藤賢一などが共演する」

ヤフーの「あらすじ」は、以下の通りです。
「大学生の井川辰弥(奥智哉)のもとに母の訃報が届き、辰弥は一風変わった探偵の金田一耕助(尾上松也)に誘われて岡山県の山奥にある八つ墓村を訪れる。名家である田治見家の遺産相続人である辰弥の帰りを見計らっていたかのように、連続殺人事件が起こる」

横溝正史が生んだ名探偵・金田一耕助といえば石坂浩二や古谷一行が演じたイメージが強いですが、過去に映画化された「八つ墓村」では渥美清や豊川悦司が演じました。今回は歌舞伎役者の尾上松也が演じたわけですが、出番が少なすぎて印象が薄かったです。最初に登場するシーンも、財布を忘れてバス代が払えなくなり、バス運転手と口論するというもので、まったく締まりません。『八つ墓村』といえば『犬神家の一族』と並んで横溝正史の代表作なのに、金田一耕助の存在が霞んでしまって残念でした。

あと、本作の金田一耕助は帽子を被っています。石坂浩二版や古谷一行版に親しんだ者からすと、あのモジャモジャ頭を掻きむしってフケが飛び散るシーンがないと物足りません。そもそも、本作の冒頭にはスマホが登場します。令和版「八つ墓村」というわけでしょうが、横溝正史のあのドロドロしたミステリーは昭和という時代背景があってこそです。なんか、まったくピンときませんでした。唯一、滝藤憲一だけは良い仕事をしていました。あのギョロ目が最高ですね!

『八つ墓村』はこれまでに計4回映画化されていますが、1977年の松竹版が最高傑作だと思います。なにしろ、監督が野村芳太郎、脚本が橋本忍という黄金コンビの作品です。この2人は、日本映画史に燦然と輝く名作である「砂の器」(1974年)でもタッグを組んでいます。「砂の器」の原作者は松本清張ですが、彼の登場によって社会派ミステリーが全盛となり、探偵小説の人気作家であった横溝正史が時代遅れになったという歴史を振り返ると、興味深いですね。

野村芳太郎版「八つ墓村」は、一条真也の映画館「『犬神家の一族』4Kデジタル修復版」で紹介した1976年の市川崑監督作品と並んで、横溝正史原作映画の最高傑作です。金田一耕助を渥美清が演じました。日本中の鍾乳洞をロケしてつなぎあわせた村の地下洞シーンや落武者惨殺、村人32人殺し、寺田家炎上などおどろおどろしい映像的見所も多いですが、謎解きミステリを超えて、怨念の実在を説く映画独自のストーリー展開でした。本作と同じく、この作品もホラー寄りだったのですが、本作とは違って非常に怖かったです!

さて、小説『八つ墓村』のモデル(事件のモチーフ)となったのは、1938年(昭和13年)5月21日未明に岡山県苫田郡加茂町(現・津山市)の貝尾集落で発生した「津山事件(津山三十人殺し)」です。 都井睦雄という青年が夜間に集落で多数の住民を襲撃した、昭和の日本における未曾有の惨劇です。横溝正史はこの事件を冒頭の「村人32人殺し」のモチーフとしましたが、小説内の地理的な設定などは実際の事件現場から離れた場所(岡山県新見市付近)にアレンジされています。

都井睦雄は民家11軒に侵入、住民を猟銃や刃物で次々と襲い、約1時間半の間に23名を即死させ、5名に重軽傷を負わせました(そのうち12時間後までに2名が死亡)。都井は犯行後に自殺しています。その後、被疑者死亡で不起訴となりました。日本が明治維新後に西洋式の近代法制を整備して以降、戦争行為を除く犯罪としては、京都アニメーション放火殺人事件が発生する2019年までの81年という長きに渡って最多の犠牲者数でした。

この津山事件は西村望のノンフィクション小説『丑三つの村』のモチーフにもなり、1983年には同名で映画化もされました。戦時下の岡山の寒村。祖母と二人で暮らす犬丸継男(古尾谷雅人)は、村一番の秀才として名高い青年でした。ある日、村の風習である夜這いを知り、彼もこれに溺れるようになります。徴兵検査を受けた継男は、当時の医学では不治の伝染病として忌み嫌われていた結核と診断され、「名誉の出兵」が叶わなくなります。このことが村人たちに知れ渡り、女たちも彼を役立たずと馬鹿にするようになります。村八分のような状況となった彼から恋人のやすよ(田中美佐子)も離れ、次第に追い詰められた彼は村人たちに対して、復讐を決行するのでした。

本作「八つ墓村」は、多くのホラー映画のメガホンを取った清水祟が監督だけあって、ミステリーというよりも完全にホラーに振り切っていました。しかし悲しいことに、まったく怖くないのです。村人たちが変な面を被った神楽も、なんだかコミカルでした。清水監督といえば、一条真也の映画館「犬鳴村」「樹海村」「牛首村」で紹介した「恐怖の村」シリーズがありますが、「八つ墓村」だけあって、このシリーズの1作として作られたのかもしれませんね。笑

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