No.960


 10月27日に行われた衆議院選挙は予想通りの結果でしたね。 イギリス映画「2度目のはなればなれ」をシネプレックス小倉で観ました。亡くなった人々への想いを感動的に描いた名作です。90歳の老人が冒険をする物語なのですが、わたしは、先月20日に満88歳で旅立った父と、残された母のことを思い浮かべながら観ました。
 
 ヤフーの「解説」には、「マイケル・ケインとグレンダ・ジャクソンが『愛と哀しみのエリザベス』からおよそ50年ぶりに共演し、ある退役軍人の実話を基にしたドラマ。決して離れないと妻に誓った男性が老人ホームからいなくなる出来事が発生し、そのことを警察がSNSで発信したことから、世界中で彼の行方に注目が集まり始める。監督を『ジョニー・イングリッシュ 気休めの報酬』などのオリヴァー・パーカーが務める」と書かれています。
 
 ヤフーの「あらすじ」は、「2014年の夏。老夫婦のバーナード(マイケル・ケイン)とレネ(グレンダ・ジャクソン)はイギリスの老人ホームで余生を過ごしていた。ところがバーナードはフランスのノルマンディーへと旅立ってしまう。バーナードが行方不明になったというツイートを警察が発信すると世界中で話題となるが、レネは夫が必ず帰ってくると信じていた」となっています。
 
 この映画の主人公・バーナードは、老人ホームを脱走してノルマンディーへと向かいますが、そこには70年前に命を失った戦友への想いがありました。わたしは、人間という存在は亡くなった人を弔い・鎮魂・慰霊・供養するために生きているという「唯葬論」の立場にありますが、映画「2度目のはなればなれ」はまさに唯葬論的映画でした。70年の時間を経て、元イギリス兵と元ドイツ兵が心を交わすシーンは涙なしでは観ることができませんでした。
 
 主人公バーナードは、「D‐デイ」すなわち「ノルマンディー上陸」を実行した日から70年目の式典に参加するために、フランスを訪れます。ノルマンディー上陸作戦は、第2次世界大戦中の1944年6月6日に連合国軍によって行われた、ナチス・ドイツ占領下のフランス北部への上陸作戦です。連合国軍の正式作戦名は「ネプチューン作戦」、上陸からフランスの首都パリの解放までの作戦全体は「オーヴァーロード作戦」と呼ばれます。イギリスを進発したイギリス軍、アメリカ軍を主力とする連合国軍の兵員が、作戦初日だけで約15万人、オーヴァーロード作戦全体で200万人が英仏海峡を渡ってノルマンディー海岸とコタンタン半島東岸に上陸しました。
 
 ノルマンディー上陸は、現在に至るまで歴史上最大規模の上陸作戦です。本作戦は、北フランス内陸に対する夜間の落下傘部隊の降下から始まり、上陸予定地への空襲と艦砲射撃に続いて、早朝からの上陸用舟艇による敵前上陸が行われました。連合軍は、イギリスの首相ウィンストン・チャーチルが「かつて行われたもののうちで最も複雑な作戦」と評したほどの苦戦も覚悟していましたが、さまざまな要因もあってドイツ軍にとっては完全な奇襲となり、上陸作戦は「オマハ・ビーチ」など一部を除いて円滑に進み、損害は想定を遥かに下回ったのです。
 
 とはいえドイツ国防軍と武装親衛隊(武装SS)の抵抗は激しく、連合国軍は橋頭堡を確保した後、内陸への進撃は計画より遅れました。ナチス・ドイツは、ソビエト連邦(ソ連)との東部戦線、イタリア戦線に加えて、西部戦線でも再び陸上での戦闘を余儀なくされることになり、1年足らず後の1945年5月上旬には降伏に追い込まれました。ノルマンディーの上陸作戦は第二次世界大戦中最もよく知られた戦いの1つでもあります。本作戦で用いられた用語「D‐デイ」は作戦決行日を表し、現在では主に作戦開始当日の1944年6月6日について使われます。
 
 第2次世界大戦で連合軍の勝利を決定づけたノルマンディー上陸作戦を、壮大なスケールで描いた戦争巨編映画が「史上最大の作戦」(1962年)です。コーネリアス・ライアンによる同名ノンフィクションを原作に、名プロデューサーのダリル・F・ザナックが巨額の製作費を投入して映画化。第ⅱ次世界大戦末期の1944年6月。ドイツ軍は連合軍のフランス上陸に備え防御を固めていたが、司令官ロンメル元帥は折からの悪天候を理由に近日中の侵攻はないと判断する。一方、イギリスで連合軍を指揮する最高司令官アイゼンハワーは、上陸作戦の決行日である「D‐デイ」を決定しようとしていました。キャストにはジョン・ウェイン、ヘンリー・フォンダら豪華俳優陣が集結。1963年の第35回アカデミー賞で撮影賞と特殊効果賞を受賞。テーマ曲「史上最大の作戦のマーチ」も大ヒット。
 
 ノルマンディー上陸作戦を題材にした映画では、スティーブン・スピルバーグ監督の「プライベート・ライアン」(1998年)もあります。凄惨な戦場を徹底したリアリズムで描き、1999年の第71回アカデミー賞で監督賞、撮影賞など5部門を受賞。1944年のノルマンディー海岸では、多くの兵士たちが命を落としました。激戦を生き延びたミラー大尉は、最前線で行方不明になった落下傘兵ジェームズ・ライアン二等兵の救出を命じられます。ライアン家は4人の息子のうち3人が相次いで戦死しており、軍上層部は末っ子のジェームズだけでも故郷の母親の元へ帰還させようと考えたのです。トム・ハンクスが主演を務め、トム・サイズモア、エドワード・バーンズ、バリー・ペッパー、ビン・ディーゼルらが共演。ライアン二等兵役はマット・デイモンが務めました。
 
 本作「2度目のはなればなれ」は、夫婦愛の物語でもありました。90歳の老人であるバーナードとその妻レネの若き日の恋愛や、老後の生活ぶりを見ると、わたしは自分の両親のことを想いました。結婚してから60年以上の時間が経過しても、両親はとても仲が良かったです。今年の3月20日、父が小倉記念病院に入院したときには母が車椅子に乗ってお見舞いに行きました。そのとき、父はとても喜んでいました。9月20日に亡くなる前は、毎日のように母と握手をしていました。父は、そのたびに「あんたは、いい顔をしてる」とか「あんたのおかげで、ここまで来れた。本当に、ありがとう」と言いました。すると母は、「長生きしてね。ひとりになったら寂しいよ」と言っていました。この両親が出会い、愛し合わなかったら私自身が存在していないわけですから、感謝の気持ちでいっぱいです。わたしの両親は本当にはなればなれになってしまいましたが、きっとあの世で再会きるでしょう。
入院中の父を見舞った母