9月5日、東京から北九州に戻りました。9月4日の夜、この日から公開されたアメリカのホラー映画「バックルームズ」をTOHOシネマズ日比谷のレイトショーで観ました。すごく期待していたのですが、すごくつまらなかったです。(涙)酒が入っていたこともあって前半は爆睡しました。
ヤフーの「解説」には、こう書かれています。
「現実世界の裏側に存在する空間を舞台にしたインターネット発の短編動画『The Backrooms(Found Footage)』を映画化したスリラー。存在するとうわさされる現実世界の裏側に足を踏み入れてしまった者たちが、黄色い壁紙の部屋が無限に連なる空間から抜け出そうとする。監督は短編版も手掛けたケイン・パーソンズ。『それでも夜は明ける』などのキウェテル・イジョフォー、『わたしは最悪。』などのレナーテ・レインスヴェのほか、マーク・デュプラス、フィン・ベネットらが出演する」
ヤフーの「あらすじ」は、以下の通りです。
「家具店を経営するクラーク(キウェテル・イジョフォー)は、ある日突然、店の地下から不気味な空間へ迷い込んでしまう。そこは黄色い壁紙の部屋が連なり、終わりのない廊下がどこまでも続く、現実世界とは何かがずれた、出口のない空間だった。次々と起きる怪異に慄きながらも、クラークはそこから抜け出そうとする」
そもそも、バックルームとは何か。それは、英語圏の匿名掲示板「4chan」に投稿されたクリーピーパスタに由来するインターネット都市伝説です。The Backroomsは、普通は群衆で混雑している空間が不自然に閑散としている様子を描写するリミナルスペースと呼ばれるインターネット美学の最も有名な例です。The Backroomsの起源は「現実でnoclipモードになる」ことで迷い込んでしまう空っぽなオフィスルームの迷宮というアイデアです。The Backroomsの人気が徐々に高まるにつれて、インターネットユーザーはThe Backroomsに新しいフロアを追加したり、The Backroomsに生息する怪物を作成したりすることで、元のアイデアを拡張していきました。
一部の創作者は、共同創作ウィキやファンメイドのゲームや短編ビデオなどを作成。特に諫山創の『進撃の巨人』から多大な影響を受け、YouTube上で『進撃の巨人』をテーマにした“歴史的ドキュメンタリー風”の映像や、独自のVFXを駆使した作品を複数公開していたケイン・パーソンズがYouTubeに投稿した一連の短編ホラービデオ『The Backrooms(Found Footage)』は、リミナルスペースをインターネット文化のメインストリームに引き上げたとされています。彼は、2022年1月からクリーピーパスタを基にしたウェブシリーズ『バックルームズ』をYouTubeで公開し、人気を博しています。
都市伝説としての「バックルーム」については、一条真也の読書館『AI時代の都市伝説』で紹介したノンフィクション作家の宇佐和通著の著書で知りました。同書には、2019年5月に4chanユーザーが「不快なだけの不穏な画像」を投稿するよう呼びかけたことが紹介。これに応えて、ぼうっとした感じの黄色い光を投げかける蛍光灯と黄色い壁に囲まれた無機質なオフィスの画像が寄せられました。やがてこの画像に「バックルーム」という名前が付けられ、6億平方マイルという広大なスペースにわたって広がっているという説明文が書きこまれたのです。宇佐和氏は、「やがて多くのユーザーが、この画像を見て思い起こすことができるさまざまな物語を書きこむようになった。こうして具体的なコンセプトが固まりはじめ、それに多くのユーザーたちが作成した画像や映像、ゲームの要素などを盛り込み、ザ・バックルーム・カルチャーが形成されていった」と書いています。
ケイン・パーソンズが短編動画『The Backrooms(Found Footage)』を映画化したというので楽しみにしていたのですが、完全に期待外れでした。「センススイングで不条理バットを殴りつけ」というレビューがありましたが、まさにそんな感じです。雰囲気だけで作ってしまいましたね。登場人物のメンタルや記憶と反応して変化するような設定があるのかもしれませんが、まったく支離滅裂で「わけがわからん!」と叫びたくなります。その理由づけとして研究組織みたいなのが登場しますが、取ってつけたようで違和感がありました。エンドロール後に特別映像があるというので、トイレに行きたいのを我慢しましたが、その特別映像がまたどうしようもない内容で、「つまらない」の一言。蛇足というか、時間のムダでしたね。
本作の時代設定は1990年。ある場所で撮影されたビデオ映像が映し出され、そこから物語が始まります。キウェテル・イジョフォーが演じる主人公クラークは家具店を経営しながら、メアリーという女性セラピストのセラピーを受けています。また、家具店で働くキャットやボビーと仲良くやっていました。ある日、家具店のブレーカーに異常が発生し、クラークはあちこち見て回りました。その夜、テレビが勝手に作動したり、照明が点滅したりします。そこでクラークは家具店の地下に迷路があることを発見するのです。その迷路にはルールがありました。①音がする方へ進んではいけない②誰かに呼ばれても応じてはいけない③むやみに扉を開けてはいけない④立ち止まってはいけない・・・・・・などです。
本作を観て、わたしは一条真也の映画館「8番出口」で紹介した2025年の日本映画を連想しました。ゲームクリエイターの KOTAKE CREATE が制作した、異変探しゲームを原作にしたドラマです。原作ゲームは日本の地下通路やリミナルスペース、そして「バックルーム」にインスパイアされて開発されたそうです。無限にループする地下通路に迷い込んだある男性が8番出口を目指す物語です。どこにでもありそうな地下鉄の駅に、ある男性(二宮和也)が閉じ込められます。そこは地下通路が無限にループする世界で、そこでは異変を見逃すことなく、万が一異変を見つけた場合はすぐに引き返すのがルールでした。もし異変が見つからなかったときは引き返さずに、最終的に8番出口を見つけてそこから外に出なければなりません。「バックルームズ」と違って、「8番出口」は面白かったです!
WWDのインタビューに答えたケイン・パーソンズ監督は、「未知のものを理解可能なものに変換したがる人間の衝動に興味があったのでしょうか?」という質問に対して、「その衝動は『バックルームズ』について考える上で常に中心にあったものであり、YouTubeシリーズから今回の長編映画に至るまで、一貫して重要なテーマでした。私自身、このシリーズに何年も取り組む中で、「すべての情報を把握していたい」という感覚との付き合い方が少し変わってきたと思います。本作で考えたかったのは、人間が自分たちよりも大きな構造やシステムを体系的に作り上げ、私たちが処理しようとしているあらゆる情報をそこに保持し、代わりに処理させるようになってきた、ということです」と答えています。
続いて、彼は「それによって私たちはどこへ向かっているのか。その過程で人間の神経系に何が欠けていくのか、私たちは何を失ってしまうのか、ということを見つめたかった。結局のところ私が考えようとしているのは、そうした人間の衝動が、最終的に人類を滅ぼすものになり得るのか、という問いです。その衝動を単純に『間違い』と決めつけているわけではありません。人類の何百万年もの進化の中で、何らかの具体的な理由があって発達してきたものですから。ただ私は、それが人間の持つ最もかけがえのないものなのか、それとも結果的に破滅へとつながる『間違い』なのか、ということに興味があるんです」と答えています。21歳の若者にしては、すごくしっかりした発言なので感心しました。映画はつまらなかったですが、考えはきちんとしています。とりあえず、次回作に期待したいと思います。