9月19日、日本映画「さとこはいつも」をローソン・ユナイテッドシネマ小倉で観ました。「さとこ」の名を持つ3人の女性の物語でしたが、最近ヘビーな日本映画ばかり観てきたせいか、ちょっとユルい印象を受けました。そこが本作の良さなのでしょうが・・・・・・。
映画.comの「解説」には、こう書かれています。
「長編映画デビュー20周年を迎えた沖田修一監督が、年齢も育った環境も異なる3人の『さとこ』という女性の人生が交差していく様子をオリジナルストーリーで描いた人間ドラマ」「有村架純が35歳の沙都子役、石田ひかりが55歳の里子役、オーディションで選ばれた姫野花春が15歳の聡子役で主演を務め、聡子の心を揺さぶるミステリアスな国語教師役で吉田羊、沙都子の不倫相手である印刷会社の営業マン役でオダギリジョー共演。さらに筒井道隆が里子の夫役を務め、テレビドラマ『あすなろ白書』から33年の時を経て石田と夫婦役で再共演を果たした。
映画.comの「あらすじ」は、「15歳の中井聡子は鼻炎持ちの中学3年生で、学校ではソフト部に所属し、同じ耳鼻科に通う同級生に恋をしている。国語教師から文章を書くよう勧められた彼女は自分の初恋物語に着手するが、初恋相手に対する妄想が暴走してしまう。姪と韓国カルチャーを愛する35歳の西田沙都子は、映画配給会社の宣伝部で働いている。6年目になる不倫が倦怠期を迎えている彼女は、自分の人生を振り返りながら不倫の日々についてつづっていく。55歳の飯島里子は子育てがひと段落し、ようやく自分の時間を持てるようになった。かつて作家になる夢を抱いていたことを思い出した彼女は、自分の初恋の物語をノートに書きはじめる。まったく違う人生を歩む3人の『さとこ』たちだったが、それぞれ自分の人生を小説としてつづるうちに、他人だったはずの3人の物語は少しずつ交差していく」です。
本作は、姫野花春演じる15歳の聡子の物語、有村架純演じる35歳の沙都子の物語、石田ひかり演じる55歳の里子の物語の3つのパートから成っていますが、純粋なオムニバスではなく3人の登場人物がときどき交差していました。完全なる女性の物語なので、「監督も脚本家も女性に違いない!」と思ったら、いずれも49歳の男性である沖田修一その人でした。しかも、彼は原作小説まで出版しています。正直、これにはちょっと引きました。「女心をよく理解している」などというレベルを超えた違和感をおぼえました。
本作の鑑賞は、日常的に映画館に通い慣れているわたしにとっても居心地の悪いものでした。なんというか、乙女チックすぎて恥ずかしくなるのです。15歳の聡子の初恋エピソードは観ているこちらが恥ずかしくなるシーンの連続でした。55歳の里子の青春を振り返るエピソードも甘すぎて赤面しました。唯一、35歳の沙都子のドロドロ不倫劇だけがしっくりきました。「汚れちまった悲しみ」を感じた次第です。ただし、わがお気に入りの女優である有村架純だけでなく、姫野花春と石田ひかりの演技も悪くなかったです。
本作の予告編を見たとき、2002年のアメリカ映画「めぐりあう時間たち」を連想しました。同作は、作家ヴァージニア・ウルフの小説『ダロウェイ夫人』を軸に、異なる3つの時代を生きる3人の女性の「生と死の選択」「苦悩と尊厳」を重層的に描いた名作(マイケル・カニンガム原作、スティーブン・ダルドリー監督)です。同作が持つ「生と死」「自死への衝動やそれに抗う命」といった深いテーマ性は、わたしの死生観とも非常に親和性が高かったです。しかし、「さとこはいつも」にはそこまでの深みはありませんでしたし、同時代を生きる3人の女性の物語という点で「めぐりあう時間」とは異なります。
「さとこはいつも」で有村架純が演じる西田沙都子は、映画配給会社の宣伝部で働いています。同社が配給する韓国映画の新作のプロモーション会議のシーンが映し出されますが、沙都子は自信たっぷりで、自分と違う意見を述べる後輩の女子社員に対しては戦闘モードで接します。ピリピリした会議の雰囲気がよく伝わってきました。わたしも映画好きですが、外国映画の邦題とかポスターのデザインに「それは違うだろ!」と突っ込みを入れたくなることが多々あります。新作映画の売り出し方について、自分も会議に参加してみたいなと思いました。
本作では、石田ひかりと筒井道隆が「あすなろ白書」以来33年ぶりに共演を果たしたことで話題となっています。「あすなろ白書」は、石田ひかりと筒井道隆のダブル主演で、1993年10月クールにフジテレビ系の「月9」枠で放送された伝説的な青春ドラマです。柴門ふみの漫画が原作で、北川悦吏子が脚本を手掛けました。男女5人の大学生活や恋愛模様を描き、劇中での木村拓哉による「あすなろ抱き(後ろからのハグ)」なども含めて社会現象となりました。藤井フミヤが歌った主題歌「TRUE LOVE」も大ヒットしました。この曲、わたしのお気に入りで、カラオケで数えきれないほど歌いましたね。また、わたしが初めてキムタクを知ったのも「あすなろ白書」でした。
本作「さとこはいつも」では、学生結婚をした飯島里子(石田ひかり)と茂(筒井道隆)の夫婦が登場します。33年前に「あすなろ白書」で恋人同士を演じた2人は、2026年9月の舞台挨拶でも「本当に居心地が良い」「年月を感じさせない自然な空気感」とお互いへの信頼を語っています。石田ひかりによると、筒井道隆は劇中でお弁当を渡すシーンのために「映らないお弁当作りから自主練習をしていた」という独特な演技へのアプローチを見せ、現場を和ませていたそうです。「あすなろ白書」といえば、大学合格を目指す受験生を演じた筒井道隆がイカの塩辛でお茶漬けを食べるシーンがありましたが、なんと「さとこはいつも」でもそのシーンが登場します。個人的に、なつかしかったですね。