日本のドキュメンタリー映画「三茶のポルターガイスト」(2023年)をYouTubeの無料公開で観ました。その存在は以前から知っており、観たいと思っていましたが、ようやく鑑賞(視聴)できました。内容は、三軒茶屋にある日本一の心霊多発ビルへの潜入取材の様子です。わたしは心霊に関心が深い人間なので、興味深かったです。ちなみに、本作は今年観た140本目の映画です。
ヤフーの「解説」には、「心霊スポットに潜入取材を試みるホラードキュメンタリー。三軒茶屋に実在するビルに潜入した取材チームが、不可解な現象の数々に遭遇する。監督を務めるのは『真・事故物件』シリーズなどの製作に携わってきた後藤剛。『怪談新耳袋Gメン ラスト・ツアー』などの角由紀子、漫画家のやくみつる、『NIGHT☆KING ナイトキング』などのいしだ壱成のほか、横澤丈二、海老野心、石川翔鈴らが出演する」と書かれています。
ヤフーの「あらすじ」は、「東京・三軒茶屋の雑居ビルにある、某芸能プロダクションがレッスンスタジオとして使用するフロアは、さまざまな心霊現象が起きる心霊スポットとして知られる。そこへ潜入した取材チームは、振動しながら点滅する照明器具、あらぬ方向へ飛んでいく壁掛け時計、水が吹き出す鏡など、数々のポルターガイスト現象に遭遇する。やがて、カメラの前に人間の姿をした白い影が浮き上がり、あり得ない場所から白い手が伸びてくる」となっています。
タイトルにある「ポルターガイスト」とは、ドイツ語で「騒がしい霊」を意味する超常現象です。物が勝手に動く、激しい物音がするなど、特定の場所や人で不思議な出来事が起きることを指します。この映画の舞台である三軒茶屋に実在するビルの4階にある「横澤プロダクション」では、毎日のように心霊現象が多発しており、その様子が本作にはしっかりと収められています。もし、これらの映像がフェイクでないなら、ブログ「トランプのUFO情報公開について」で紹介したアメリカ国防総省によるUFOおよびUAP(未確認異常現象)に関連する写真や動画を公式HPで公開したことに匹敵する、「心霊ディスクロージャー」だと思いました。
映画監督の森達也氏は、一条真也の読書館『オカルト』で紹介した著書を出版しました。同書のサブタイトルは「現れるモノ、隠れるモノ、見たいモノ」でした。森氏は、UFOや心霊写真、超能力といった現象が「客観的な証拠(決定的な写真や映像)を撮ろうとすると、するりと隠れてしまう性質」を持っているのではないかと考察しています。安易に「インチキだ」と全否定することも、「本物だ」と妄信する立場も取りません。「ほぼフェイクだと思いつつも、なぜ人はこれほどオカルトに惹かれ、決定的な瞬間を追い求めてしまうのか」という人間の心理や境界線をドキュメンタリー監督の視点から探る名著です。何度も読みました。
森氏には2005年に刊行した『ドキュメンタリーは嘘をつく』という著書もあります。同書で、森氏は「写真や映像は、真実をありのままに写すものではない」と強く主張しています。どんなに客観的に見える『決定的な写真』であっても、それは撮影者が主観で四角いフレームに切り取った一側面に過ぎないと述べます。「決定的な写真」が提示されたとき、人はそれを信じ込んでしまいがちですが、本当に重要なのは「フレームの外側に何が隠されているか」です。森氏はこの、見えない部分を想像する姿勢こそがメディアリテラシーであり、ある種の「オカルト(隠されたもの)」に向き合う態度と地続きであると述べています。
それにしても、ヨコザワプロダクションで起こる心霊現象はあまりにもはっきりとカメラにとらえられています。しかも、動画で。正直、かつてMr.マリックの「超魔術」を初めて見たときを思い出しました。超能力かマジックか素人目にはわからない現象の数々を見せられましたが、結局はマジックでした。心霊現象を模したマジック(怪奇マジック)は、ポルターガイスト現象、心霊写真、精神感応などを、手品の技術や心理誘導を使って再現するエンターテインメントです。歴史的にも多くのマジシャンが降霊会での霊媒師のトリックを暴き、舞台芸術へと高めてきました。
主な心霊現象マジックの種類としては、ポルターガイスト(物体移動・静止物体の動揺)を演出する内容のものもあります。たとえば、触れていない物が勝手に動く、落ちる、浮くなどの現象です。特殊な糸(インビジブル・スレッド)や磁石、隠しギミックを使用します。ポルターガイスト現象の裏にあるトリックや正体は、巧妙ないたずら、無意識の心理的行動、そして物理的な環境要因が原因であることも多いようです。超自然的な現象ではなく、科学的や心理学的な理由で説明されることがほとんどです。
ポルターガイストの主な原因とトリックとしては、まず、人間のいたずらが挙げられます。家族や子供が周囲の注目を集めるために、隠れて物を投げたり音を鳴らしたりする。次に、自然の物理現象が挙げられます。家の傾き、微弱な地震、床下換気の風圧、水道管の水撃(ウォーターハンマー)などが原因で、勝手に物が動いたり音や振動が発生するわけです。一方で、ポルターガイストの原因を、無意識の心理的ストレスに求める見方もあります。思春期の子供などが抱える強いストレスや怒りが、無意識のうちに物を動かすような超常現象へつながるという考え方です。
しかし、本作「三茶のポルターガイスト」では、あくまでもポルターガイスト現象の原因を幽霊に求めていました。興味深かったのは、角由紀子がガチで「コックリさん」をやっていたことです。コックリさんは、19世紀末から日本で流行している、硬貨と文字盤を用いた降霊術・占いの一種です。鳥居、数字、五十音などを書いた紙の上に10円玉などの硬貨を置き、参加者全員が人差し指を添えて「コックリさん、コックリさん、おいでください」と唱えると、硬貨が自動的に動き出して質問に答えるとされています。本作では、コックリさんを始めた瞬間、ものすごいことが起こります。

本作の舞台である東京の三軒茶屋は都内有数の人気スポットですが、こんな場所に心霊スポットがあることに驚いた人も多いでしょう。しかし、わたしはかつて自分が経営していた企画会社「ハートピア計画」が入っていた高輪のビルのことを思い出しました。そのビルはUFOのような形をしていたのですが、泉岳寺のすぐ右横に位置していました。このビルに入居したときから良くない気を感じていたのですが、じつはさまざまな怪現象に見舞われました。ポルターがスト現象のように、天井が揺れたりすることもよくありました。
ハートピア計画の社長室は2階にあり、わたしはそこに常駐していましたが、誰もいないはずなのに人の気配がすることがよくありました。ビルの3階は居住スペースとなっており、大瀬戸という社員が寝泊まりしていたのですが、彼はいつも泉岳寺方面から飛んでくる生首の悪夢にうなされていました。よく知られているように、泉岳寺は「忠臣蔵」の赤穂浪士事件で切腹した四十七義士の墓がある場所です。大瀬戸社員は、「赤穂浪士の首が飛んでくる」と本気で怖がっていました。あるとき、風邪で寝込んでいる彼を見舞ったところ、彼の顔が落武者のように見えたこともありました。

このビルで一度、「超能力」をテーマに鼎談をしたことがあります。メンバーは、超能力者の清田益明氏、超能力研究家の秋山眞人氏、そして小生でした。清田氏と秋山氏は森達也著『オカルト』にも登場するその世界のレジェンドですが、2人ともビルに足を踏み入れたとたん、「これはヤバい場所ですね。こんな危険な所にいて、一条さん大丈夫ですか?」と心配された記憶があります。そんな東京の心霊スポットで、わたしは、「三茶のポルターガイスト」ならぬ「高輪のポルターガイスト」を経験したのかもしれません。