No.0012
華やかなファッションショーを観た後は、華やかな映画が観たくなりました。
そこで最高に華麗な映画と評判が高い「ナイン」を観ました。
ロブ・マーシャル監督が、「シカゴ」の次に選んだ傑作ミュージカルの映画化です。
これがまた、なんとも贅沢な映画なのです。
なにしろ、主役の映画監督役にはアカデミー賞主演男優賞に2度も輝いたダニエル・ディ=ルイス。その彼を取り巻く女たちに、二コール・キッドマン、ペネロペ・クルス、マリオン・コティヤール、ジュディ・デンチ、そしてソフィア・ローレンといった歴代オスカー受賞者の新旧名女優が勢揃い。さらには、「あの頃、ペニー・レインと」でアカデミー賞にノミネートされたケイト・ハドソンが「VOGUE」誌の女性記者を、音楽界のディーヴァとして知られるファーギーが娼婦を演じるのです。
さまざまな人々が演じる、さまざまな役柄。そして、さまざまなドラマ。
「ナイン」を観て、映画づくりも会社経営も本質は同じではないかと思いました。
会社というものは、さまざまな役割を果たす部門および社員から成り立っています。
日本電産社長の永守重信氏は、「会社とは終わりのないドラマ」だと言っています。
最初はまったくの白紙状態から、スタッフを集めてどんなドラマをつくるのかというイメージを描き、シナリオをつくってキャストを選んでいく。
映画なら本番が終わればそれですべてが終了しますが、会社の場合はエンドレスで、毎日がリハーサルと本番の繰り返しです。
各部門や社員一人ひとりには、映画と同じように役が与えられます。
その役を見事に演じ切った人は喜びや満足感も大きくなりますが、全員の心が一体化すれば、それよりもはるかに大きい感動があります。
しかし、中に一人でも「どうせ、つくりものだから」と手を抜いたり、照れながら演技する人間がいると、すべてはぶち壊しになってしまうのです。
では、映画の照明や音響などのスタッフに相当する会社における部門とは?
永守氏いわく、利益を生み出すのは製造部門、会社の将来をつくり出すのは技術開発部門、会社を成長させるのは営業部門、よい会社に導くのは間接支援部門、会社を強くするのは経営者だそうです。
なるほど、非常に説得力がありますね。
ならば、経営者とは誰よりも名演技のできる役者とならなければなりませんね。
部下から「社長も役者ですねえ!」と言われれば、しめたものです。
「ナイン」に話を戻しましょう。
この映画は、もともとミュージカルだということもありますが、あまり肩に力を入れて観る内容ではありません。
また、「愛とは何か」「人生とは何か」などと、深刻に考える内容でもありません。
とにかく楽しんで観れば、よろしい。
映画の中で脚本を欲しがる二コール・キッドマン扮する大女優に対して、主人公の監督が「誰もストーリーなんか望んじゃいない。みんな君の顔が見たいんだ」みたいなことを言うシーンがあります。
まさに、この映画も、「二コールって、やっぱキレイだなあ!コラーゲンでも打ってんのかな?」とか、「ペネロペも可愛いけど、けっこうトシは食ったよなあ」とか、「ケイト・ハドソン、ずいぶん太ったねえ」とか、「おいおい、ソフィア・ローレンって、いったい何歳よ?」とか、そういったことを無責任に考えながら観ればいいのです。
それにしても、二コールともペネロペとも愛し合ったトム・クルーズって、やっぱりすごいですねぇ。関係ないですけど、わたしより1歳年長なんですよ。
最後に、この主役の映画監督は明らかにフェデリコ・フェリー二がモデルです。
1963年にアカデミー賞を受賞したフェリーニの「8 1/2」を観た若いアメリカのアーティストたちが同作品のミュージカル版として「NINE」を企画したのだそうです。
フェリーニはわたしの大好きな監督で、名作「道」から「カビリアの夜」「アマルコルド」「甘い生活」「フェリーニのローマ」「フェリーニの道化師」など、もう何度繰り返して観たことかわかりません。
世界で最も祝祭的な映画監督だと思っています。
そんなフェリーニ映画の名場面が、「ナイン」にはたくさん出てきます。
たとえば、二コールが噴水のほとりで監督と語らうシーンなどは「甘い生活」ですね。
フェリーニの名作と見比べてみるのも、「ナイン」の楽しみ方かもしれません。
「ナイン」から、フェリーニを読む
亡くなられた水野晴朗氏じゃありませんが、いやあ、映画って本当にいいもんですね!
次は、話題の「シャッターアイランド」を観たいと思います。