No.0011
「涙そうそう」で妻夫木聡が泣くシーンを観ていたら、以前にも彼は映画「ジョゼと虎と魚たち」で素晴らしい男泣きを見せてくれたことを思い出しました。
田辺聖子の原作で、犬童一心が監督した2003年の作品です。
足の悪い不思議な少女ジョゼと大学生の恒夫のはかないラブストーリーです。
恒夫がジョゼの手料理をおいしそうに食べるシーンとか、「おさかなの館」という名の水族館みたいなラブホテルで二人が愛し合うシーンとか、本当に素晴らしい!
何度も観たくなる名作です。
さて、恒夫とジョゼは、あることをきっかけに別れてしまいます。
別れのとき、恒夫は淡々とジョゼの部屋を出て行きます。
その後、道を歩いていると突然、どうしようもないほど大きな悲しみに襲われます。
そして、恒夫は道にうずくまって泣きじゃくるのです。本当の悲しみとは、このように遅れてやってくるものなのだということを教えてくれたシーンでした。
この「ジョゼと虎と魚たち」といい、「涙そうそう」といい、妻夫木聡が別れの場面で泣く演技は最高です。もしかすると、「ジョゼ虎」の泣き場面が注目されて、「涙そうそう」に起用されたのかもしれません。韓国の葬儀では「泣き女」という職業があるそうですが、妻夫木聡こそは日本一の「泣き男」だと思います。
今度、川本三郎の小説『マイ・バック・ページ』が映画化されることになり、妻夫木聡が主演を務めるそうです。じつは、そのロケ地として、北九州の小倉にあるわが社の松柏園ホテルに打診があり、わたしは了承しました。
日本一の「泣き男」が松柏園に来てくれるというので楽しみにしていたのですが、先日、撮影予算の関係で北九州ロケがなくなったとの知らせがありました。残念です!
忘れたい、いとおしい、忘れられない。