No.0075


 映画「ファミリー・ツリー」を観ました。
 本年度のアカデミー賞で5部門にノミネートされ、「脚色賞」を受賞した作品です。
 「サイドウェイ」や「アバウト・シュミット」のアレクサンダー・ペイが監督を務め、「オーシャンズ」シリーズのジョージ・クルーニーが主演した感動作です。

 タイトルからもわかるように、この映画のテーマは「家族」です。
 家族崩壊の危機に直面したある一家の再生のドラマが、ハワイを舞台に繰り広げられます。単なる「楽園」としてのハワイではなく、人々が生活する場所としてのハワイが魅力的に描かれています。そのハワイの独特の文化を背景に、さまざまな人々の「こころ」が交錯して、深みのあるドラマが展開していきます。
 ジョージ・クルーニー演じる主人公のマットは、先祖からの広大な不動産を相続し、ハワイで弁護士として活躍しています。彼は妻と2人の娘と共にハワイで暮らしていましたが、ある日、妻がボートの事故に遭います。彼女はそのまま昏睡状態となってしまい、それをきっかけに、マットは妻が不倫をしていたという衝撃の事実を知ります。 彼女は彼と離婚するつもりだったのです。そのことを長女や友人たちも知っていたことが判明し、マットは大きなショックを受けます。

 不倫をしていた妻の意識が戻らないという設定は、ぺ・ヨンジュンが主演した韓国映画「四月の雪」を連想しました。でも、この「ファミリー・ツリー」は重いテーマを扱いながらも、所々にユーモアが散りばめられています。
 クルーニーが父親役で新境地を開拓していますが、彼の2人の娘を演じたシャイリーン・ウッドリーとアマラ・ミラーという期待の若手女優たちも存在感がありましたね。
 わたしにも娘が2人いるので、主人公のマットには感情移入してしまいました。

 この映画に関するレビューを見ると、ハワイの自然の美しさや独特の文化の素晴らしさを賞賛する声が大きいようです。しかし、そのハワイを舞台に描かれる物語は、不倫や家族との死別といった非常に深刻な問題が登場します。
 このへんは、映画の宣伝用コピーである「ハワイなら、最悪な出来事も、最高の人生に変えられる。きっと――。」に集約されるのでしょう。
 わたしが最も興味の抱いたのは、ラスト近くに出て来る海洋葬のシーンです。ハワイの青い海に故人の遺灰が静かに撒かれる場面が美しく、荘厳に描かれていました。
 わが社では、一般に「散骨」と呼ばれる海洋葬のお世話もしています。
 現在は、ハワイやオーストラリア、そして日本国内の海での海洋葬を紹介させていただいています。
 海洋葬は樹木葬と並んで、「自然葬」とも呼ばれます。
 ブログ「樹木葬」に書いたように、わが社は樹木葬の紹介もしています。
 また、墓の代用としての樹木だけではなく、新婚のカップルに桜の苗木をプレゼントして植えていただくというサービスも現在計画しています。結婚の記念に新郎新婦が桜の苗木を植え、「○○家の樹」というプレートをかけるというものです。それを毎年、春になると訪れるのですが、だんだん子どもができて、家族で花見をするわけです。
 公園の桜ではなく、自分たちの家族の樹に咲いた桜を花見する。
 このロマンティックな計画を、現在進めていますので、お楽しみに!
 もともと「ファミリー・ツリー(family tree)」とは、大地に根を張り、受け継がれる家族の系譜という意味です。ならば、この映画のように海洋葬もいいですが、樹木葬もまた似合うかもしれませんね。

 それにしても、「家族」をテーマにしつつ、最後に葬送のシーンを描く映画が多くなってきました。ブログ「わが母の記」で紹介した日本映画も、納棺された遺体の顔のアップで映画が終わりました。これは、どういうことを意味しているでしょうか?
 わたしは、つまるところ、「家族の絆は別れ際にあり!」ということが示されていると思います。正確に言えば、家族の絆は「看取り」と「葬儀」にあるということでしょう。
 ブログ「曹洞宗講演」に書いた講演会でも、わたしは「人間関係の醍醐味は、葬儀という別れにあります」と述べました。この「ファミリー・ツリー」は、単なる綺麗事だけではなく、「家族とは何か」を深く考えさせてくれる映画でした。
 この映画は『死を乗り越える映画ガイド』(現代書林)で取り上げました。

  • 販売元:20世紀フォックス・ホーム・エンターテイメント・ジャパン
  • 発売日:2013/06/05
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