六本木ヒルズ内にある「TOHOシネマズ」で日本映画「トリック劇場版 ラストステージ」を観ました。わたしにとって、今年最初の映画館での映画鑑賞です。

 「トリック」といえば、仲間由紀恵演じる自称天才美人マジシャン・山田奈緒子と阿部寛演じる天才物理学者・上田次郎のコンビがさまざまなインチキ霊能者や超能力者のトリックを暴く人気テレビドラマシリーズです。この映画は、その劇場版でテレビ・映画を含めたシリーズ全体の最終編となっています。

 わたしのブログ記事「TRICK劇場版3 霊能力者バトルロイヤル」にも書きましたが、わたしは、このシリーズが大好きで、TVドラマも劇場版もすべてDVDを買いました。
 特に、ファースト・シリーズが怪しくて一番好きでした。
 でも、どれも、それなりにアクの強いエンターテインメントとして楽しめます。
 今回は物語の最後とあって、かなり以前から楽しみにしていました。

 「トリック劇場版 ラストステージ」では、次郎と奈緒子がレアアースが採掘できる南方の秘境に出掛けます。ここでレアアースの採掘権は獲得してあるものの、そこに住む部族が立ち退きを拒否しているのです。
 部族の人々は、ある女呪術師に絶大な信頼を寄せていました。
 奈緒子と次郎のコンビは、呪術師のトリックを解くべく、活躍を繰り広げます。
 今回の撮影では、マレーシアで初の海外ロケが行われています。

 主演の2人に生瀬勝久らレギュラー陣のほか、東山紀之、北村一輝、水原希子ら豪華キャストが共演しています。監督は、最初から「トリック」シリーズに携わってきた堤幸彦です。この最終編では、奈緒子の出生の秘密、奈緒子と次郎の切ない別れなど、シリーズのファンには見逃せない内容となっています。

 詳しい内容はネタバレになるので書けませんが、正直言ってちょっと肩透かしでした。じつはネットでの評価が高かったので期待していたのですが、この内容なら製作しないほうがよかったとさえ思いました。「トリック」の持ち味である小ネタのギャグもことごとく外しているというか、わたしは笑えませんでした。
 なんというかストーリーにしろギャグにしろ、力づくで無理があるのです。
 これまでの「トリック」の大ファンであったわたしには、残念な映画でした。

 まず、舞台が赤道直下の南方で、そこに謎の呪術師がいるという設定が気に入りませんでした。ちょうど、東京へ向かうスターフライヤーの機内で『知的創造の作法』阿刀田高著(新潮新書)を読みました。数々の恐怖短編小説を書いてきた阿刀田氏が自身の小説作法を示した本ですが、次のように述べています。


「特別な恐怖は求めない。特別というのは、たとえば異境へ旅する。麻薬の巣窟へ踏み込む。核爆発の現場へ行く、そこへ行けば必ず恐怖に遭うところへわざわざ訪ねるのは私の好みではない。行かなければ怖くないのだから、むしろ日常の中の恐怖、普通の生活を営んでいるのに、そこへ突然恐ろしいことが降ってくる、これが小説の読者に訴える本当の恐怖のように私には思えてならない」


 もちろん小説と映画は違いますが、この阿刀田氏の言葉は映画「トリック劇場版 ラストステージ」の弱点を見事に衝いていると思いました。
 とにかく、この映画、伏線の描写にリアリティがなさ過ぎるのです。

 映画の最後のほうで、奈緒子がシャーマン(呪術師)と呼ばれる者の真の役割を明らかにする場面があります。たしかに、歴史上のシャーマンにそのような役割があったことは否定できませんが、あまりに皮相的な見方というか、わたしにはシャーマンの一面しかとらえていないように思えました。
 冒頭で伝説の天才マジシャンであるハリー・フーディーニの逸話を紹介し、「死後の霊魂の不滅」すなわち「命には続きがある」ということをテーマにしたのは良かったのですが、ラストまでのシナリオがあまりもぎこちなく感じました。唐突な終わり方は一種の実験映画のようですが、けっして成功したとは思えません。

 実際、わたしが観賞した映画館では、映画の終了後に館内が明るくなると、多くの観客が「えっ、これで終わりなの?」「本当に終わっちゃったの?」という声を発しながら、狐につままれたような表情をしていました。
 東京は六本木ヒルズの映画館でさえそうなのですから、地方の劇場ではなおさら観客は呆然としたことと思います。

 ずっと14年間愛してきた「トリック」が中途半端な終わり方をして、わたしも悲しかったです。ポスターには「本当に最後です!」と書かれていますが、もう1作作ってくれないと納得できません。でも、最後に主題歌の鬼塚ひちろ「月光」が流れたのは良かったです。大好きなファースト・シリーズを思い出しました。

  • 販売元:東宝
  • 発売日:2014/07/16
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