日本映画「青天の霹靂」を観ました。
 劇団ひとりが自著を映画化して監督デビューを果たした作品です。

 ここ最近、話題の映画が次から次へと波状攻撃にようにわがハートを襲ってきます。わたしの身中の「映画男」が完全に覚醒して、時間を見つけては映画を観まくっています。それらの映画の感想については、わたしのブログ記事「呪怨―終わりの始まり―」ブログ「私の男」ブログ「グランド・ブタペスト・ホテル」ブログ「オール・ユー・ニード・イズ・キル」ブログ「トランセンデンス」ブログ「マレフィセント」ブログ「渇き。」をご覧下さい。

 これらの映画ブログを書いていくうちで、読者の方から「一条さん、『青天の霹靂』をぜひ観て下さい」とのメールを頂戴しました。わたし好みの最高にハートフルな映画だというのです。ネットで調べてみると、非常に評価も高いです。本当は東京で観ようかと思ったのですが、公開から時間が経過したせいか意外と上映館が少なく、上映時間も限られていたので断念。
 すると、わが社からすぐ近くのシネプレックス小倉で上映しているではないですか(なんと、単館系と思っていた「グランド・ブタペスト・ホテル」も上映されていました)! 車だと自宅から5分、会社から3分の場所にこんな映画館があるなんて本当に便利です。しかも最近はネット予約が簡単にできるので、自宅を出てから10分後にはもう映画鑑賞しているという夢のような生活を満喫しています。わたしのブログ記事「映画都市の楽しみ」に書いたように、北九州市は日本一の映画環境を誇る街ですが、「ああ、北九州に住んでて良かった」と思う今日この頃です。いや、ほんとに。

 そんな恵まれた環境の中、12日の土曜日に「青天の霹靂」を鑑賞。
 ヤフー映画の「解説」には、以下のように書かれています。


「作家や俳優としても活躍する人気お笑い芸人の劇団ひとりが書き下ろした小説を、自らメガホンを取って実写化したヒューマンドラマ。40年前にタイムスリップした売れないマジシャンが、同じマジシャンであった若き日の父とコンビを組み、自身の出生をはじめとする家族の秘密を知る。『探偵はBARにいる』シリーズなどの大泉洋が不思議な体験をする主人公を快演し、その両親にふんする劇団ひとり、『GO』などの柴咲コウが物語を盛り上げる。涙と笑いに満ちた物語に加え、4か月の練習を経て臨んだ大泉洋のマジックシーンにも目を見張る」

 またヤフー映画の「あらすじ」には、以下のように書かれています。


「場末のマジックバーで働く、さえないマジシャンの轟晴夫(大泉洋)。ある日、彼は10年以上も関係を絶っていた父親・正太郎(劇団ひとり)がホームレスになった果てに死んだのを知る。父が住んでいたダンボールハウスを訪れ、惨めな日々を生きる自分との姿を重ね合わせて涙する晴夫。すると、突如として青空を割って光る稲妻が彼を直撃する。目を覚ますや、40年前にタイムスリップしたことにがくぜんとする晴夫。さまよった果てに足を踏み入れた浅草ホールで、マジシャンだった父と助手を務める母(柴咲コウ)と出会い・・・・・」

 感想ですが、あまりにも予想通りのストーリーだったので、少し拍子抜けしました。ラストで主人公の晴夫が口にするセリフも予想的中でした。
 たしかにハートフルな物語なのですが、いわゆる予定調和の物語でもあります。事前に知った「あらすじ」から、わたしの脳裏には過去の日本映画が次々に浮かんできました。まず、浅草を舞台にしているところや若き日の両親に会う設定は名画「異人たちとの夏」(1998年)を思い出させます。そういえば、「異人たちとの夏」に主演した風間杜夫が浅草の劇場の支配人役で「青天の霹靂」に出ています。ということは、この映画は最初から「異人たちとの夏」へのオマージュなのかもしれませんね。

 また、タイムスリップして自分の両親に会うという設定は、誰もが「地下鉄(メトロ)に乗って」(2006年)を連想するのではないでしょうか。多くの人が「劇団ひとりは天才だ!」とコメントしているようですが、わたしには「異人たちとの夏」や「地下鉄に乗って」の物語、山田太一や浅田次郎の紡ぐ物語のほうが深みがあって心に響きました。「青天の霹靂」は、どうしてもこの2作の焼き直しといった印象があります。

 「青天の洋」さんという方が、この映画のレビューの冒頭に「ストーリーは予定調和と申しましょうか。そりゃさ、タイムスリップして、自分が産まれる直前の両親の姿を見れば、どんな人だって感慨にふけることになるだろうよ。みえみえの感動、出来すぎた設定というところが、ひねくれた私にはいまいち。いや、もちろん見たら見たでちゃんとホロリと涙も流れましたが」と書かれていますが、わたしも同感です。

 「青天の洋」さんは、さらに述べます。


「結局、あんなダメダメなお父さんのどこに、あそこまで母親が惹かれていたのか、とか、父親との葛藤の根本はなんだったのか、とか肝心なところは、描き方が薄っぺら。なのですが、その全てを丸くおさめてくれたのが、大泉洋の演技だったかと。芽のでないマジシャン人生。鬱屈としたやさぐれ感に、タイムスリップしたことを機にやり直そうとしたり、両親との出会いに葛藤したり。どの表情も、複雑な感情が絶妙に滲み出て魅力的で、完全に、大泉洋演じる晴夫に釘付けになりました」

 たしかに、大泉洋の演技は良かったですね。
 特に、マジックのシーンが見事でした。ずいぶん特訓を積んだようですが、最後に見せたマジックなどは「幻影師アイゼンハイム」を彷彿とさせました。わたしはマジックが登場する映画が大好きなのですが、「青天の霹靂」で見せた晴夫のマジックは素晴らしかったです。
 大泉洋が主演する最新作の「ぶどうのなみだ」が今年10月11日に公開されるそうですが、今から楽しみです。

 柴崎コウもなかなか良かったですが、ちょっと美人すぎて妊婦のイメージが湧きにくかったですね。ちなみに晴夫は5月10日にこの世に生を受けることになっていましたが、わたしの誕生日とまったく同じだったので、ちょっと驚きました。それにしても「青天の霹靂」を観て、出産という営みがいかに危険を伴い、人の生死を左右するかについて考えさせられました。

 じつは昨日、11月3日に開催予定のシンポジウムにゲスト・シンポジストとして出演してほしいとの依頼を受けました。この日は「文化の日」ですが、「いいお産の日」でもあります。それにちなんで、「新しい医療」や「新しい時代の誕生」を語り合うシンポジウムだそうです。「勇気の人」こと矢作直樹先生、「未来医師イナバ」こと稲葉俊郎先生との共演ということもあり、スケジュールを調整してぜひ出演したいと考えています。

 このシンポジウムでは、併せて「かみさまとのやくそく」という映画の上映会が行われます。池川明先生(産婦人科医)を始めとした、医療現場からのリアルなドキュメンタリーの映画です。いわゆる「胎内記憶」についての示唆に富む内容のようです。わたしは、『ママのおなかをえらんできたよ。』(リヨン社)や『子どもは親を選んで生まれてくる』(日本教文社)などの池川先生のご著書を読みましたが、非常に衝撃を受けました。「お産」についての真実を多くのひとが知れば、親殺し、子殺しといった愚行はなくなるのではないでしょうか。

 「青天の霹靂」を観た人は、誰でも自分が産んでくれた母親に対しての感謝の念が湧いてくるでしょう。出産のとき、ほとんどの母親は「自分の命と引きかえにしてでも、この子を無事に産んでやりたい」と思うもの。実際、母親の命と引きかえに多くの新しい命が生まれました。また、産後の肥立ちが悪くて命を落とした母親も数えきれません。まさに、母親とは命がけで自分を産み、無条件の愛で育ててくれた人なのです。

 ヒトの赤ちゃんというのは自然界で最も弱い存在です。すべてを母親がケアしてあげなければ死んでしまう。2年間もの世話を必要とするほどの生命力の弱い生き物は他に見当たりません。わたしは、ずっと不思議に思っていました。「なぜ、こんな弱い生命種が滅亡せずに、残ってきたのだろうか?」と。あるとき、その謎が解けました。それは、ヒトの母親が子どもを死なせないように必死になって育ててきたからです。ヒトの赤ちゃんが最も弱い存在なら、人の母親は最も強い存在かもしれませんね。「青天の霹靂」という映画は、胎児の見た夢のようなものではないかと思いました。

  • 販売元:東宝
  • 発売日:2014/12/10
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