No.384


 有楽町の角川シネマで映画「天才作家の妻」を観ました。

 ヤフー映画の「解説」には、こう書かれています。
「ノーベル賞に輝いた作家とその妻の秘密にまつわる心理サスペンス。メガホンを取るのは、ビョルン・ルンゲ。『アルバート氏の人生』などのグレン・クローズと『キャリントン』などのジョナサン・プライスが夫婦を演じ、ドラマシリーズ『MR.ROBOT/ミスター・ロボット』などのクリスチャン・スレイターらが共演する」

 ヤフー映画の「あらすじ」は、こうです。
「現代文学の重鎮ジョゼフ(ジョナサン・プライス)と妻のジョーン(グレン・クローズ)はノーベル文学賞受賞の知らせを受ける。息子を連れて授賞式が開かれるストックホルムに行くが、そこで記者のナサニエル(クリスチャン・スレイター)からジョセフの経歴に関わる夫婦の秘密について聞かれる。類いまれな文才に恵まれたジョーンは、ある出来事を契機に作家の夢を断念し、夫の影となって彼を支え続けていた」

 文学を題材とした映画といえば、一条真也の映画館「響 -HIBIKI-」で紹介した作品が思い浮かびます。でも、あの映画の主人公は芥川賞および直木賞を受賞するというストーリーでしたが、この映画の主人公はノーベル文学賞を受賞するのですから、スケールの大きさが違います。わたしもノーベル賞の授賞式のリハーサル風景など初めて観ましたが、非常に興味深かったです。

 この映画には、あるセレモニー・テロリストが登場して、大切な式典後の晩餐会をブチ壊しにしてしまいます。考えてみれば、高名な作家には文学賞の授賞式が付き物です。受賞するにしても、賞を授与するにしても、です。

 しかし、よく考えてみれば、作家などという存在は社会的にはアウトロー的な側面がありますので、最も式典には似合わない存在であると言えるでしょう。その意味で、天下のノーベル文学賞を受賞しても完全無視を決め込んだボブ・ディランはきわめて全うな人間なのかもしれません。

 それにしても、かつて映画「危険な情事」の鬼気迫る演技でわたしを振るえ上がらせてくれたグレン・クローズが、物語の終盤でまたしても危険で恐ろしい女性に豹変したので、大いにビビりました。彼女は、女性に生まれたことの理不尽さや悲しみを見事に表現していました。71歳になる彼女は、この映画の演技でゴールデン・グローブ賞主演女優賞を受賞しましたし、 本年度オスカー候補の呼び声も高いです。
 それにしても、この映画を「ガラスの天井」を破ることができなかったヒラリー・クリントンが観たら何と言うでしょうか。わたしにも2人の娘がいるので、女性が一切のストレスを感じないで済む社会の実現を切に望みます。

 この映画は文学映画であると同時に夫婦映画でもありますが、「夫婦」という摩訶不思議なモノの正体をしっかりと示していると思いました。では、夫婦の正体とは何か。一条真也の読書館『困難な結婚』で紹介した内田樹氏の著書には、「結婚しておいてよかったとしみじみ思うのは『病めるとき』と『貧しきとき』です。結婚というのは、そういう人生の危機を生き延びるための安全保障なんです。結婚は『病気ベース・貧乏ベース』で考えるものです」とあります。わたしは「安全保障」よりも「相互扶助」と呼びたいです。そう、夫婦とは「世界で一番小さな互助会」ではないでしょうか。この映画では作家とその妻は互いに助け合って「共同作業」を行うのでした。

 この映画の夫婦のみならず、この世界のどんな夫婦にだって「秘密」を抱えているように思います。わたしも小説は書いていませんが、作家として90冊以上の本を世に送り出してきました。もちろん、わたしの妻は著作活動には無縁です。でも、わたしは早稲田大学第一文学部英文科出身である妻がなかなかの名文家であることを知っています。わたしが学生時代に編集長を務めていた「はあとぴあ」という雑誌では、当時交際していた妻に「ディズニーランドは夢の国」というエッセイを書いてもらったことがあります。(笑)
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今年で結婚30年目を迎える妻と


 ブログ「孔子文化賞受賞祝賀会」ブログ「サンレーグループ創立50周年記念祝賀会(業界)」ブログ「サンレーグループ創立50周年記念祝賀会(一般)」で紹介した行事では、妻は着物姿でわたしと一緒に出席してくれました。それは、わが人生の中でも最も良き思い出の1つであり、そのとき、それまでの日々を思い起こし、妻に深い感謝の念を抱いたものです。この映画に登場する夫婦は結婚40年目とのことですが、わたしたち夫婦は今年の5月20日で結婚30年目を迎えます。何か記念のプレゼントやイベントを考えなければ!