No.683


 日本映画「湯道」を観ました。わが社は「日王の湯」という温浴施設を運営しています。何か経営や企画のヒントになればと同施設のスタッフ数名とシネプレックス小倉で鑑賞しました。正直ストーリーが薄っぺらく感じましたが、豪華キャストによる群像喜劇としては楽しめました。

 ヤフー映画の「解説」には、こう書かれています。
「『おくりびと』などの脚本を手掛けた小山薫堂が提唱する「湯道」をテーマに描くヒューマンドラマ。とある銭湯を舞台に、都会から実家に舞い戻った兄、彼と犬猿の仲の弟、そして彼らを取り巻く人々を映し出す。『HERO』シリーズなどの鈴木雅之がメガホンを取り、小山が企画などを手掛けている。『友罪』などの生田斗真と『偉大なる、しゅららぼん』などの濱田岳が兄弟を演じ、『バイオレンスアクション』などの橋本環奈、戸田恵子、寺島進らが出演している」

 ヤフー映画の「あらすじ」は、以下の通りです。
「建築家の三浦史朗(生田斗真)が、「『まるきん温泉』を営む実家にある日突然戻ってくる。彼は亡き父が遺した銭湯を切り盛りする弟の悟朗(濱田岳)に、古ぼけた銭湯をマンションに建て替えると伝えるために帰省したのだった。ある日、悟朗が入院することになり、銭湯で働く秋山いづみ(橋本環奈)の助言もあって、弟の代わりに史朗が店主を数日務めることになる」

 わたしは、つねづね、「産湯にはじまり湯灌に終わる。人の一生は湯とともにあります」と言っています。この映画の冒頭に産湯のシーンが登場したときは「おっ!」と思いましたが、最後は湯灌のシーンまで出てきました。ちょっと驚きましたが、さすがはブログ「おくりびと」で紹介した葬儀映画の名作をプロデュースした小山薫堂氏が深く関わっている作品だけありますね。小山氏は、お茶やお花が「茶道」や「華道」として親しまれているように、日本のお風呂文化も広めたいと、「湯道」を2015年から提唱されているそうです。小山氏は「湯道とは作法にあらず、湯に向かう姿勢なり」と語っています。

 映画「湯道」公式HP内にある「湯道とは」では、湯道初代家元としての小山氏は「現代に生きる日本人が日常の習慣として疑わない『入浴』という行為。しかし冷静に考えるならば、飲める水を沸かして湯にし、それに人が浸かる......世界196ケ国のうち、水道水を安全に飲める国は9ケ国しかないことを鑑みれば、これほど贅沢で感謝すべき行為はありません。しかも日本には、全国各地に温泉という素晴らしい入浴施設が多数存在します。まさに日本人にとっての入浴という行為は、世界でも類稀なる生活文化であり、その精神と様式を突き詰めてゆくことで一つの『道』になるという想いに至りました」と述べています。

 また、小山氏は「私たちはそれを『湯道』と名付け、『感謝の念を抱く』『慮る心を培う』『自己を磨く』という三つの精神を核としながら、日本の入浴文化を世界に発信します。そして、様々な伝統工芸を『道具』として使用することで、職人たちの技や伝統を保護継承します」と述べています。湯道はまだ、はじまったばかり。それが何たるか・・・その答えは、一人ひとりの中にあります。湯を愛する私たちの心が紡がれ、湯に浸かることが世の中の幸福量の最大化に貢献できた時、本物の湯道が完成するのです。それは長い道のりかもしれませんが、まずは今を生きている私たちが湯に浸かる喜びを世界中の人々と分かち合うことで、日本の文化や魅力を世界に発信できると信じています」とも述べるのでした。

 小山氏が「湯道」なら、わたしは「湯縁」を提唱しています。「無縁社会」などと呼ばれ、血縁と地縁の希薄化が目立つ昨今です。人間は1人では生きていけません。「無縁社会」を超えて「有縁社会」を再生させるためには、血縁や地縁以外のさまざまな縁を見つけ、育てていく必要があります。そこで注目されるのが趣味に基づく「好縁」というもの。この中には、同じ湯に入るという「湯縁」があります。この映画では、「まるきん温泉」という銭湯を舞台に、さまざまな人々の縁が生まれ、縁が繋がっていく様子が人情味豊かに描かれています。

 究極の人間関係としての「一期一会」を実現するものとして「茶の湯」という文化があります。わが社の活動でいえば、茶道の普及は「茶縁」を育て、温浴施設の運営は「湯縁」を育てることであります。そして、それらはともに「無縁社会」を乗り越え、「有縁社会」を再生する道となります。小山氏の提唱する「湯道」とは明らかに茶道を意識したものですが、映画を観る限りは「茶道のパロディ」としか思えませんでした。あと、角野卓造が演じる湯道の家元が亡くなる直前に「湯道とは、もっともらしいマヤカシよ」と言い放ったのは感心できませんね。仮にも「道」を提唱し、弟子を集めるのならば、本気でやらなければいけません。そう、やるなら死ぬまで本気でやれ!

 風呂は文化です。日本の風呂の歴史は、538年の仏教伝来とともにスタートしたといわれています。それまでにも、各地に温泉浴や蒸気浴の習慣はありましたが、湯を使っての沐浴は仏教伝来によって建立された寺院の浴堂が最初とされています。中でも、日本最古にして最大の浴場だったのが東大寺の「大湯屋」です。これはあくまで、体を清める、宗教的精神を養うことが目的で設置されたものです。純粋に「風呂屋」としての営業目的の大衆浴場がつくられたのは江戸時代で、1591年に銭湯がはじめて登場しました。江戸っ子たちは風呂を好み、熱い湯に我慢して入るのを美学としました。

 日本には数多くの温泉があり、各地の温泉めぐりを趣味にしている人がたくさんいます。最近、ショッキングなニュースが報道されました。福岡県にある老舗旅館で、昨年8月と11月に保健所が行った検査で、浴槽内から最大で基準値の3700倍のレジオネラ属菌が検出されました。公衆浴場法に基づいて福岡県が定める条例では、連日使用する循環浴槽において、週に1回以上お湯の入れ替えが義務付けられていますが、少なくとも2019年以降、年に2回しかお湯を入れ替えていなかったとされています。

 その旅館は一時、「管理は適正」と虚偽の報告も行っていたそうです。温泉旅館のみならず、温浴施設の信用も損なう残念な事件でした。映画「湯道」には、「源泉掛け流し至上主義」を標榜する辛口の温泉評論家の太田与一が登場しますが、彼なら「言語道断!」と怒り狂ったでしょうね。その太田与一を演じたのは吉田鋼太郎ですが、伊東園ホテルズのCMにお笑いコンビ「オズワルド」と一緒に出演し、気持ち良さそうに温泉に浸かっています。

 さて、銭湯といえば、エコーが利いているので歌を歌うと気持ちがいいですね。映画「湯道」では、湯に浸かりながら天童よしみやクリス・ハートがその美声を披露していました。特に「上を向いて歩こう」を2人でハモる場面は感動的でした。他にも「Only You」とか「You Are My Sunshine」なども流れました。「You」と「湯」をかけたダジャレですね。でも、わたしが好きな銭湯ソングは、乃木坂46の新曲「銭湯ラプソディー」です。実際の銭湯で歌い踊る乃木坂メンバーたちもキュート! ゴレンジャーみたいに色別になっていますが、わたしはレッドの山下美月ちゃんを推したい!(笑)