No.880
ゴールデンウィークは対談の準備や読書に耽り、ずっと自宅にいました。本当は映画館に行きたかったのですが、観たい作品もなかったのです。しかし、GW最終日の6日、イオンシネマ戸畑で中国映画「無名」を観ました。上海が舞台のスパイ・ノワールで、とても面白かったです!
ヤフーの「解説」には、こう書かれています。
「第2次世界大戦下の上海を舞台に、中国共産党、国民党、日本軍の間で繰り広げられるスパイたちの攻防戦を描いたサスペンス。『インファナル・アフェア』シリーズなどのトニー・レオン、『熱烈』などのワン・イーボーが主演を務めたほか、ジョウ・シュン、ホアン・レイ、森博之、エリック・ワンらが共演。『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・上海』などのチェン・アーがメガホンを取り、第36回中国映画金鶏賞で最優秀監督賞、最優秀主演男優賞などに輝いた」
ヤフーの「あらすじ」は、以下の通りです。
「第2次世界大戦下、1940年代の中華民国・上海。政治保衛部のフー(トニー・レオン)は部下のイエ(ワン・イーボー)、彼の友人・ワン(エリック・ワン)らと諜活動に奔走していた。あるときフーは、任務に失敗した国民党のスパイを助けたことで、上海在住の日本人の要人リストを手に入れる。一方、イエはフーの部下でありながら、日本軍のスパイ・渡部(森博之)ともつながる二重スパイだった。それぞれに思惑を秘めた彼らが極秘の任務に当たる中、戦況が激化していく」
映画「無名」の冒頭には延々とクレジットが続きます。アメリカ映画や日本映画だとクレジットは最後に流れますが、この映画は最初に流れます。やっとクレジットが終了したかと思うと、椅子に座るトニー・レオンがスクリーンに登場し、続けて、カフェでジョウ・シュン演じる中国人美女が男性客からコーヒーを差し入れされるシーンが映ります。このシーン、映画のラストにも再現されるのですが、じつは1946年の香港の情景でした。じつは6月に業界の視察で香港に行く予定があるので、わたしの旅情は高まりました。あと、この映画、登場人物たちの帽子やスーツが100%わたしの好みで、カッコ良かったですね。
この映画、中国共産党と国民党の関係がわからないとチンプンカンプンです。できれば、鑑賞前にざっと予習しておくといいでしょう。まず、中国国民党は1919年10月10日に孫文が中華革命党を改組して結党。 第一次世界大戦後のパリ講和会議によってドイツから山東省権益が日本に譲渡されたのを受けて、中国全土で「反日愛国運動」が盛り上がりました。この運動は、孫文にも影響を与え、「連ソ容共・労農扶助」と方針を転換。しかし1921年に中国共産党が結成されると反共主義を取りました。 1945年まで続いた日中戦争の後、国共内戦が再開しますが、それに敗北して台湾島へと逃れ現在に至ります。日中戦争が終わると国共内戦に突入しましたが、中国共産党はソ連の援助を受けてこれに勝利し、1949年10月1日には中華人民共和国の建国を宣言したのです。
この中国共産党、国民党、そして日本軍との間で熾烈なスパイ合戦が繰り広げられますが、上海での日本料亭の様子など興味深かったです。日本酒はもちろん、ちゃんとした日本料理を提供し、芸者までいたのですね。日本の軍人を森博之が好演していましたが、この映画、登場人物たちがやたらと日本酒を飲み、煙草を吸うシーンが多かったです。考えてみれば、昔の男はよく煙草を吸いましたね。あんなに吸っては、「みんな肺がんになったのでは?」と思ってしまいます。そして、スパイ同士のバトルシーンがド迫力でした。トニー・レオンとワン・イーボーの格闘シーンもリアルで良かったのですが、身長171センチのトニー・レオンと182センチのワン・イーボーが互角に闘うのはちょっと無理がありましたね。
それにしても、ワン・イーボー(王一博)って初めて見ましたが、なかなかの美男子ですね。1997年生まれの26歳で、中国河南省洛陽市出身。男性アイドルグループ、UNIQのメンバーでメインダンサー、リードラッパー担当。2014年9月15日にUNIQのメンバーとしてデビュー後、2019年放送のドラマ「陳情令」 にて主演の1人を務めたことでブレイク。俳優、声優、歌手、ダンサー、司会者、オートバイレーサーとして活躍しています。主な愛称は「白牡丹」「王甜甜」「王杰」「酷盖」など。スクリーンで初めて彼の顔を見たとき、速水もこみちや工藤阿須加に似ていると思いました。日本人好みのイケメンだと言えるでしょう。映画「無名」の主題歌も歌っていますが、声もいいですね。
そして、国際的俳優として名高いトニー・レオンですね。1962年、香港生まれ。台湾のホウ・シャオシェン監督の映画「悲情城市」(1989年)、ジョン・ウー監督の「ハード・ボイルド 新・男たちの挽歌」(1992年)、ウォン・カーウァイ監督の「欲望の翼」(1990年)、「恋する惑星」(1994年)、「ブエノスアイレス」(1997年)など代表作は多いです。2000年には「花様年華」で香港人として初めてカンヌ国際映画祭で男優賞を受賞、国際的にも高い評価を獲得するに至っています。そんなトニーは現在61歳。あのトム・クルーズと同い年です。「無名」でのハードなアクション演技などを見ると、「香港のトム・クルーズ」と呼びたくなりますね。そういえば、トムの身長は170センチで、171センチのトニーとほぼ同じ。「いつか二人の共演を観たい!」と、あと3日で61歳になるわたしは思うのでした。