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「ザ・リチュアル アメリカで最も恐れられた悪魔祓い」

No.1374

わたしは「儀式が登場する映画はすべて観てやろう!」と企んでいる者ですが、「ザ・リチュアル  アメリカで最も恐れられた悪魔祓い」という2025年のアメリカのオカルト・ホラー映画のDVDを鑑賞。実在の悪魔憑き事件をモデルにしたとされるエクソシスト神父と少女の悪魔祓いの儀式を描いた作品です。「悪魔」と「グリーフ」が同時に描かれていて、興味深かったです。本作は、日本ではWOWOWで放送されましたが、劇場公開はされませんでした。アマゾンプライムやU-NEXTでも視聴できますが、有料です。

WOWOWの「解説」には、「名優アル・パチーノが主演した、実話に基づくオカルトホラー。1928年の米国。ある少女の“悪魔払い”をすることになった教会。だがそこで次々と恐ろしい出来事が起きる。1973年の『エクソシスト』で知られるカトリック教会のエクソシスム(悪魔祓い)だが、本作は実在したテオフィリス・リージンガー神父らの驚くべき体験を再現。少女に取り憑いた悪魔との戦い、少女の体に起きる異常事態など、『エクソシスト』と共通する展開も多いが、本作は特殊メイクや特撮に頼らないでリアルに描いていて怖い。名優パチーノはここでも熱演。共演はドラマ『ダウントン・アビー』のダン・スティーヴンス、『トワイライト』シリーズでアリス役を演じたアシュリー・グリーン。WOWOWの放送が日本初公開」と書かれています。

WOWOWの「あらすじ」は、以下の通りです。
「1928年、アイオワ州。教会の主任司祭スタイガー神父は悪魔払い師でもあるリージンガー神父と、少女エマの悪魔払いをすることに。当初スタイガー神父は悪魔憑きは心の病だと信じていたが、儀式を始めてからエマが男の声で話したり自分自身を傷つけるのを見るうち、本当に彼女に悪魔が憑いたと考えをあらためていく。だが教会の修道院の院長は教会関係者や住民が動揺していると知って、エマを地下室に閉じ込めると言い始め・・・・・・」

本作では、2つの死別のグリーフが交錯します。1週間前に兄を自死で亡くしたスタイガー神父(ダン・スティーヴンス)のグリーフと、母親を亡くした悪魔憑きの女性・エマのグリーフです。わたしは上智大学グリーフケア研究所の客員教授を務めましたが、上智といえば日本におけるカトリックの総本山です。それで神父や修道女の方々にも知り合いが増えたのですが、カトリックの文化の中でもエクソシズム(悪魔祓い)に強い関心を抱いています。なぜなら、エクソシズムとグリーフケアの間には多くの共通点があると考えているからです。エクソシズムは憑依された人間から「魔」を除去することですが、グリーフケアは悲嘆の淵にある人間から「悲」を除去することです。つまり、両者とも非常に似た構造を持つ儀式であると言えるわけです。

「魔」も「悲」も放置しておくと、死に至るので危険ですね。しかしながら、「魔」や「悲」には対立すべきものがあります。「悪魔」に対立するものは「天使」であり、さらには「神」です。そして、「悲嘆」に対立するものは「感謝」ではないかと思います。神の御名のもとに悪魔が退散するように、死別の悲嘆の中にある人は故人への感謝の念を思い起こせば、少しは心が安らぐのではないでしょうか。そのような意味で、ブログ「グリーフケアの時代に」で紹介した、わたしも出演したドキュメンタリー映画と、一条真也の映画館「エクソシスト 信じる者」で紹介したオカルト・ホラー映画の金字塔「エクソシスト」製作50周年記念作品が共に2023年12月1日に同日公開されたことに深い意味を感じました。

「エクソシスト」という言葉を多くの日本人が知ったのは、1973年12月26日にアメリカで、1974年7月13日に日本で公開された映画「エクソシスト」によってです。このホラー映画の歴史に燦然と輝く作品は、少女に憑依した悪魔と神父の戦いを描いたオカルト映画の代表作であり、その後さまざまな派生作品が制作されました。2023年は「エクソシスト」製作50周年記念作品が数本作られましたが、その真打ちともいうべき映画が「エクソシスト 信じる者」でした。なにしろ、50年前の「エクソシスト」の主役だった母娘が登場するのですから。「エクソシスト 信じる者」においても、愛する家族(娘)が突然の異常事態や喪失の危機にさらされる親たちの姿を通し、「グリーフ」や救済のテーマを見ることができました。

わたしは、「少年チャンピオン」に連載されていた藤子不二雄Aの「魔太郎がくる」の中で初めて「エクソシスト」という映画の存在を知りました。公開時は確か小学5年生のときだったと思いますが、ドキドキしながら映画館に向かいました。最初に観たときは何が起こっているのかもよくわからず大変な恐怖を感じましたね。アメリカはプロテスタントの国ですが、プロテスタントの祖であるルターは悪魔の存在を信じていたことで知られています。バチカンにはエクソシストの養成所がありますし、悪魔の存在を認めているという点では、カトリックもプロテスタントも共通しています。わたしは、エクソシストを「バチカン公認の正式な職業・超一流のセラピスト」と位置づけ、現代人の心の闇やグローバリズムの恐怖に対峙する存在として認めています。

本作のタイトル「ザ・リチュアル」でネット検索すると、上位には一条真也の映画館「ザ・リチュアル いけにえの儀式」で紹介した2017年のイギリス映画が出てきます。アダム・ネヴィルが2011年に上梓した小説『The Ritual』が原作で、監督はデヴィッド・ブルックナーです。ロンドンのパブで酒を酌み交わしながら、旅の行き先について話し合うルーク、ロバート、フィル、ハッチ、ドムら5人の友人たち。しかしその帰り道でルークとロバートが強盗に遭遇し、ロバートだけが殺されてしまいます。事件から半年後、4人は最後の晩にロバートが行きたいと話していたスウェーデンへハイキングにやって来ます。道中でトラブルに見舞われ森の奥深くへと迷い込んだ一行は、不気味な廃屋で一夜を明かすことになるのでした。

「RITUAL(リチュアル)」とは儀式という意味の英語です。他に、儀式を意味する英語には「RITE(ライト)」があります。rite(ライト)は宗教や社会の厳粛な公式行事(単発の式典)を指し、ritual(リチュアル)は決まった一連の動作そのものや、日常の決まりきった習慣も広く含みます。ライトは宗教や伝統の、かしこまった公式の儀式です。社会的な区切りや節目で行われる一回完結のイベントも指します。例えば、「funeral rite(葬儀)」とか「rite of passage(通過儀礼)」などの使い方をします。一方のリチュアルは決まった順序で行う一連の動作や作法です。宗教的な儀式のほか、毎朝コーヒーを飲むような個人的な「決まりきった習慣」にも使われます。詳しくは、一条真也の読書館『RITUAL』 に書きましたので、お読み下さい。

一方の「ライト」をタイトルに冠した映画には、一条真也の映画館「ザ・ライト エクソシストの真実」で紹介した2011年のアメリカ映画があります。アメリカ人神学生マイケル(コリン・オドナヒュー)は、恩師の勧めでバチカンのエクソシスト養成講座を受け始める。やがて彼は、異端だが一流のエクソシストと称されるルーカス神父(アンソニー・ホプキンス)の悪魔ばらいを手伝うことに。ある少女の儀式に立ち会うも悪魔の存在を疑うマイケルだったが、そんな思いを完全に打ち砕くような出来事の数々に遭遇する。異端だが一流のエクソシストである神父を、オスカー俳優アンソニー・ホプキンスが怪演しました。

本作「ザ・リチュアル アメリカで最も恐れられた悪魔祓い」で取り上げられたエマ・シュミットの悪魔祓いは、1928年にアメリカで起きた、同国史上最も詳細に記録された実際の憑依・悪魔祓い事件です。映画「エクソシスト」にも大きな影響を与えたとされています。数十年にわたり心身の不調や不可解な現象に悩まされていた女性エマ・シュミットはあらゆる医学的・科学的治療や精神医学的なアプローチを試みたものの改善せず、教会へ救いを求めました。聖ヨセフ教会の主任司祭であるスタイガー神父や、専門の悪魔祓い師であるテオフィルス神父らが、教会の正式な認可を受けて儀式を執り行いました。儀式の間、エマに見られた異常な行動や言動、周囲で起きた不可解な現象が克明に文書として記録されました。当初は「心の病(精神疾患)」ではないかと疑っていた司祭たちも、常軌を逸した現場証拠や現象を目の当たりにし、壮絶な戦いを繰り広げたと伝えられています。

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