2015年のアメリカ映画「ザ・ギフト」をDVDで観ました。約10年前に購入して書斎の隅でホコリを被っていたDVDです。最近読んだホラー映画の本に傑作として紹介されていたので鑑賞した次第ですが、ホラーというよりスリラー、サスペンスですね。正直、あまり怖くはなかったです。
ヤフーの「解説」には、こう書かれています。
「『パラノーマル・アクティビティ』シリーズなどのヒットメーカー、ジェイソン・ブラム製作のもと、俳優のジョエル・エドガートンが監督を務めたサイコスリラー。幸せに暮らす夫婦が、ある男から執拗にプレゼントを贈り続けられる恐怖を描く。不気味なギフトに翻弄される夫婦に『ディス/コネクト』などのジェイソン・ベイトマンと、『それでも恋するバルセロナ』などのレベッカ・ホールがふんし、彼らを恐怖に陥れる男をジョエルが演じる」
ヤフーの「あらすじ」は、以下の通りです。
「転居先で幸せな生活を送っている夫婦サイモン(ジェイソン・ベイトマン)とロビン(レベッカ・ホール)の前に、サイモンの高校時代の同級生だというゴード(ジョエル・エドガートン)が現れる。再会を祝いゴードは1本のワインをプレゼントし、その後もたびたび二人を訪ねては贈り物をし続ける。次第にその内容がエスカレートしていき、二人が違和感を抱くようになると、周囲で異変が生じ・・・・・・」
この映画、本当は一条真也の映画館「ザ・ゲスト」で紹介した2014年のアメリカ映画の鑑賞後に続けて観たかった(両作品のタイトルが似ていることと、訪問者の恐怖を描いているという内容の共通点から)のですが、理由あって遅れてしまいました。ネットで配信を調べたら、NETFLIXとアマゾンプライムで配信中とあったので観ようと思ったら、両方とも現在は配信されていませんでした。情報源は「映画.com」でしたが、こういう情報は正確を期してほしいですね。それで、書斎にあるDVDの山をかき分けて、ようやく探し出して鑑賞できた次第です。
もう1点、この「ザ・ゲスト」を観たいと思った理由がありました。一条真也の映画館「イット・カムズ・アット・ナイト」で紹介した2017年のアメリカ映画で主演したジョエル・エドガートンが本作でも主演だったからです。「イット・カムズ・アット・ナイト」では、森の中の一軒家に住むポール(ジョエル・エドガートン)一家のもとに、ウィル(クリストファー・アボット)と名乗る男とその家族が、正体不明の“それ”から逃げようと助けを求めてきます。ポールは、“それ”が侵入しないように『夜は入口の赤いドアを常に施錠する』というルールに従うことを条件に、彼らを受け入れました。ところがある日の夜、赤いドアが開いていたことがわかります。この作品もまた、訪問者=侵入者の恐怖を描いていました。
そして、本作「ザ・ギフト」です。情報セキュリティ会社に勤めるサイモンは、妻ロビンとともに新しい街に引っ越してきました。仕事は順調で、2人は豪華な自宅を購入し、順風満帆の人生に思えました。そんなある日、学生時代の同級生ゴードン・モズリーに出会います。そして後日、ゴードンから引越祝いとして豪華なワインが届けられました。ロビンはワインの返礼として、彼を自宅の夕食に招きます。食事の間、ゴードンはまるで親友だったかのように語り、実は高校時代彼とはあまり親しくなかったサイモンは不快感をおぼえるのでした。後日、二人が仕事仲間のパーティーから帰ると、ゴードンから「ギフト」として、庭の池に鯉が泳いでいた。また、サイモンの留守中にロビンに家に入れてもらいテレビの設定を手伝うなどしていた事で、サイモンは不快感を友人たちに語り始めるのでした。
そんな中、ゴードンは二人を自宅の豪邸で開かれたホームパーティに招待します。サイモンはあえてそれに参加し、そこでゴードンに「今後は付きまとうな」と伝えて去ります。その後、鯉が一晩で全滅したり、飼い犬が行方不明になったり、奇妙なことが続いて起こります。夫婦はゴードンを恐れますが、じつは高校時代にサイモンはゴードンの心に深い傷を残す行為をしていたのでした。そこから、サイモンの異常性が次第に明らかになり、物語は意外な展開へと向かいます。でも、あくまで想定内のサスペンスであって、ホラーの域までは達していないと思いました。ラストもイマイチでしたね。サイモン夫婦には子どもが授からなかったので、「ゴードンがいろいろ贈り物をするのは、赤ちゃんという最高のギフトが授からないからなのかな?」と思いましたが、結局、夫婦は赤ちゃんを授かるのです。

『龍馬とカエサル』(三五館)
ここで映画からは離れて「贈り物」の話をしたいと思います。拙著『龍馬とカエサル』(三五館)にも書きましたが、異性・同性にかかわらず多くの人の心をつかむ者には、いわゆるプレゼント魔が多いようです。よく知られているのは、かのユリウス・カエサルです。古代ローマの政治家であり軍人ですが、一般には紀元前100年頃に生まれ、紀元前44年に死去した人物として知られています。日本語ではジュリアス・シーザーとも呼ばれます。彼には多くの愛人がいましたが、借金をしてまで、自ら選んだ高価な品を彼女たちに贈るので、評判でした。
名家出身という肩書きも、輝かしいキャリアも、特別な美貌もなかった若き日のカエサルですが、すらりと背は高く均整のとれた肉体と、生き生きとした黒い眼と、立居振舞いの争えない品位は、彼を、同年輩の若者たちの中でもひときわ目立つ存在にしたでしょう。それに加えて、アイロニーとユーモアをふくんでの彼の会話も愉しいものでした。高価な物など贈らなくても、女たちにモテたでしょう。しかし、贈物をもらえば、女性は嬉しく思います。カエサルは、モテるために贈物をしたのではなく、純粋に喜んでもらいたいがために贈ったのです。 作家の塩野七生氏は、著書『ローマ人の物語 ユリウス・カエサル』に、「女とはモテたいがために贈物をする男と、喜んでもらいたいたい一念で贈物をする男のちがいを、敏感に察するものである」と書いています。
日本人に絶大な人気を持つ坂本龍馬も、贈物をするのが好きだったようです。彼はいつもよれよれの紋服を着て、鼻水、鼻くそを袖にこびりつけても平気だった男でしたが、旅が好きで全国各地に赴き、郷里の姉をはじめとした家族や周囲の人々にさまざまな品を送っています。ときには、京で大変高価な品を求め、女性たちにプレゼントしたようです。また贈物ではありませんが、龍馬は旅館や料理屋などで働く下働きの人々にもよくチップを渡しました。これは龍馬と並ぶ維新の人気者・西郷隆盛も同様で、チップをくれるから料理屋などでも大人気で、道行く小さな子どもの手にも小遣いを握らせたといいます。わたしは、贈物やチップなどは心のあらわれですから、高価なものでなくとも良いし、低額でも構わないから、なるべく心がけるようにしています。