No.0045
DVDで映画「アイズ」を観ました。
2008年のアメリカ映画で、原題は「THE EYES」です。
盲目の女性ヴァイオリニストが主人公です
目は見えなくても物事の本質はわかる
ブログ『選択の科学』で紹介した同書の著者シーナ・アイエンガーが全盲であると知り、わたしは目の不自由な人の精神世界というものに関心を抱きました。
ブログ「生きるって人とつながることだ!』で紹介した全盲の東大教授・福島智氏の存在を知ったときも同じでした。
というのも、読者や映画鑑賞をこよなく愛するわたしは過剰なほどの視覚型人間だと自分でも思っています。ですから、「もし、自分が失明したら?」と想像すると、命を失うこと以上に大きな不安を感じるのです。
それで、買い置きしていたこのDVDを観ようと思い立ったのでした。
ジェシカ・アルバ演じるシドニーは、幼い頃に視力を失った盲目のヴァイオリニストです。 彼女は姉の勧めで角膜移植手術を受けることになり、手術は成功します。
しかし、次第に視力が回復していくにつれ、シドニーの目には「見えないはずのもの」が見えてきます。それは死者たちの姿と未来の惨劇の光景でした。
あまり書くとネタバレになってしまいますが、真相をさぐるシドニーは角膜を提供した女性の哀しくも衝撃的な過去を知ります。そして、悲劇のドナーから「目」を受け継いだシドニーは、自分に課せられたあるミッションを果たします。
オリジナルはパン兄弟による香港映画「the EYE」ですが、ジェシカ・アルバ主演でハリウッドでリメイクされた作品です。ドナーの衝撃的な過去を追体験する部分はスリリングで、非常に質の高いスピリチュアル・スリラーでした。
とにかく怖いのですが、最後は一転してハートフルなエンディングが待っています。
デビュー作「シン・シティ」以来注目していたジェシカ・アルバの演技力を見直しましたし、この作品の背景にある「目は見えなくても物事の本質はわかる」というメッセージはアイエンガーや福島智にも通じていると思いました。
また、この映画には多くの死者が登場するのですが、主人公は彼らを最初は怖がるものの、次第に彼らの声に耳を傾け、彼らの「こころ」と共感していきます。
このあたりは、死霊を一方的に排除すべき対象として「悪魔祓い」することしか考えないキリスト教的世界観とは異なり、死者をいかに成仏させてやるかを考える仏教的世界観が描かれているように思いました。
かつて大ヒットしたホラー映画「シックス・センス」と同じ世界観だと言えるでしょう。
この映画には、未来を予知する能力を持った女性が迷信深い人々に「魔女」と決めつけられてリンチに遭う場面も登場しますが、一貫してキリスト教的な価値観に対する疑問のようなものを強く感じました。
ブログ「こわい映画を求めて」にも書いたように、わたしはホラー映画というものに目がありません。
そのわたしが観ても、本作「アイズ」は名作だと思いました。
レンタルショップなどで見かけられたら、ぜひ借りて御覧下さい。
絶対に後悔しないことをお約束します。