50歳の誕生日を迎えた5月10日、東京出張から北九州へ戻りました。 会社にも自宅にも、例年通りに、いや例年以上に多くの花やプレゼントやお祝いのメッセージが届いていました。みなさん、本当にありがとうございました。

 さて、誕生日の前日、ものすごく素晴らしい感動の映画を観ました。
 もう、これまでの50年間に観てきた映画の中でも5本の指に入る名作です。
 「シュガーマン 奇跡に愛された男」という映画で、本年度のアカデミー長編ドキュメンタリー賞を受賞しています。有楽町の「読売ホール」内にある「角川シネマ有楽町」で観ました。「ビックカメラ」の最上階と言ったほうがいいでしょうか。

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有楽町で観賞しました

 2012年のスウェーデン・イギリスのドキュメンタリー映画で、原題を"Searching for Sugar Man"といいます。1960年代後期にアメリカでデビューした歌手ロドリゲスの奇跡的な人生を描いた作品です。もう本当に「驚愕の事実」が描かれているのですが、それを書いてしまうとネタバレになってしまいます。
 ブログ『色彩のない多崎つくると、彼の巡礼の旅』で紹介した村上春樹氏の新作小説もネタバレにならないように書評を書くのに苦労しました。
 でも、この映画はそれ以上にネタバレ厳禁の内容と言えます。
 この映画の核心部分をブログやツイッターに書くような馬鹿は、馬に蹴られるか鹿の糞まみれになって、地獄に堕ちたほうがいいでしょう。ほんとに。

 この映画には、以下のような多くの絶賛の声が寄せられています。
 「衝撃的! 史上最も素晴らしく感動的なドキュメンタリー」(Q誌)
 「パワフル、希望にあふれ、忘れられない」(Dazed and Confused誌)
 「驚異的で、信じられないくらい素晴らしい!」
 マイケル・ムーア(アカデミー賞受賞ドキュメンタリー監督)
 「とにかく感動! 必見の映画」スーザン・サランドン(女優)
 「これは、素晴らしき旅」(Daily Mirror誌)

 また、アカデミー賞だけでなく、サンダンス映画祭、ロサンゼルス映画祭、トライベッカ映画祭、モスクワ映画祭、ターバン国際映画祭、メルボルン映画祭、キャンベラ映画祭、アテネ映画祭などの賞も軒並み受賞しています。 さらには、ナショナル・ボード・オブ・レビュー、セントルイス映画批評家協会賞、インディアナ映画批評家協会賞、フェニックス映画批評家協会賞、ダラスーフォートワース映画批評家協会賞、オクラホマ映画批評家賞などのドキュメンタリー映画賞をすべて受賞しているのです。

 ロドリゲスはその曲の雰囲気から、同時代に活躍したボブ・ディランとよく比較されました。しかし、発表した2枚のアルバムは商業的に失敗し、彼はアメリカの音楽シーンから姿を消してしまいます。その数年後、なぜか彼の音楽は地球の反対側にある南アフリカで大ブームとなります。エルビス・プレスリーやローリング・ストーンズよりも有名なミュージシャンとしてアルバムは爆発的なセールスを記録しました。彼のデビュー・アルバム「Cold Fact」は、ビートルズの「アビイ・ロード」やサイモン&ガーファンクルの「明日に架ける橋」と並ぶゴールド・ディスクとなったのでした。しかし、彼は南アから忽然と姿を消します。

 地元の新聞には、「スーパースター、自殺!」と大きく報じられました。
 ステージに火をつけて、銃を手に取って引き金を引いたというのです。
 それは、あまりにもショッキングな死の報道でした。
 90年代に入って、南アの熱狂的なロドリゲスのファン2人が、今は亡きスーパースターの足跡を辿るべく、調査を開始します。その情報収集のためのサイトを立ち上げたところ、彼らは驚くべき事実に直面するのでした。

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映画パンフレットとサウンドトラックCD

 この映画には、ロドリゲスの実際のナンバーがたくさん流れますが、わたしはそれらを聴いて感動しました。どれも、ものすごく名曲なのです。特にロドリゲスのニックネームにもなった「シュガーマン」という曲が最高に素晴らしい!
 もう最初の歌い出しから、なんだか涙が出てきます。
 一度聴いたら、鼓膜にこびりついてしまって、耳から離れません。
 ちなみに、「シュガーマン」というのは「麻薬売り」という意味のスラングですね。
 その仇名のせいで、彼は拳銃自殺で死んだのではなく、本当は麻薬漬けになって精神病院で死んだという噂も広まったそうです。
 映画館では、レコードジャケットを模したプログラムと映画のサウンドトラックCDが販売されていたので、迷わず購入しました。

 この作品には南アフリカ共和国の不気味さがよく描かれています。
 この国は、人種隔離政策の「アパルトヘイト」で世界中から批判を浴びていました。それゆえ、南アでは鎖国状態のような情報統制が行われていました。
 その度を越した異常さはこの映画からもよく伝わってきます。
 異常といえば、映画の中のコンサート場面で出てくる南アの若者たちは男女を問わず、みんな超美形なので驚きました。まるでヒトラーが愛してやまなかったアーリア人の理想を姿を見るような不思議な気がしました。
 そして、わたしは、27年間も投獄された反体制活動家のネルソン・マンデラを描いた2009年の映画「インビクタス/負けざる者たち」を思い出しました。
 あのクリント・イーストウッドが監督した作品にも、非常に感動しました。

 それにしても、50歳になる直前にこの映画を観ることができて、本当に良かったと思います。正直に告白すると、「知命」とか何とか言いながらも、とうとう大台に突入するということで少しションボリしていました。
 でも、この「シュガーマン 奇跡に愛された男」を観てから、気分が一変。 冗談抜きで、生きる勇気のようなものが湧いてきました。
 そのメッセージを集約すれば、「人生、何が起こるわからない」「人生、あきらめてはいけない」ということになるでしょうか。
 大袈裟と思われるのを承知で言いますが、この映画を観てから、わたしにとっての人間とは二種類しかいなくなりました。すなわち、「シュガーマン」を観た人と、「シュガーマン」をまだ観ていない人です。

 わたしが、1本の映画をここまで本気で薦めたことがありましたか?
 悪いことは言いませんから、ぜひとも、この映画を観て下さい。
 わたしは、感動のあまり、泣けて泣けて仕方がありませんでした。これほど多くのものを与えてくれて、人生を豊かにしてくれる映画はありません!
 「シュガーマン 奇跡に愛された男」がわたしに与えてくれたもの・・・・・。
 それは、50歳以後の人生を毅然と生きていく覚悟でした。
 この映画は『死を乗り越える映画ガイド』(現代書林)で取り上げました。

  • 販売元:KADOKAWA / 角川書店
  • 発売日:2016/11/25
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