No.0105
TOHOシネマズ日比谷シャンテで、映画「イノセント・ガーデン」を観ました。
「オールド・ボーイ」でカンヌ映画祭の審査員特別賞を受けた韓国の鬼才パク・チャヌク監督と、「ブラック・スワン」のスタッフによる一種のスリラー映画です。パク監督にとって、ハリウッド・デビュー作となります。
映画の公式サイトにある「ストーリー」を開いてみると、「少女が18歳になった日、謎めいた鍵が届き、最愛の父親が死んだ。突然現れた行方不明の叔父、連続する奇妙な事件。すべてをひとつにつなぐ、ある目的とは―?」というリードに続いて以下のように書かれています。
「インディア・ストーカー(ミア・ワシコウスカ)は、丘の上の邸の広大な庭で、探し物をしていた。その日は、彼女の18歳の誕生日。毎年どこかにプレゼントの〈靴〉が隠されているのだが、樹の上で見つけた今年の箱には、謎めいた鍵だけが入っていた。そして突然、贈り主のはずの父リチャード(ダーモット・マローニー)が、不審な死を遂げる。『あの事故、絶対に変よね』『車で橋から落ちる?』『何をしに2州先まで行ったの?』父の死について、ひそひそと交わされる会話が鮮明に聞こえるインディア。繊細で五感が鋭すぎる彼女は、家でも学校でも孤立していた。母のエヴィ(ニコール・キッドマン)とも心は通わず、ただ一人の理解者だった父を失ってしまったのだ。
葬儀の日、長年行方不明だった叔父のチャーリー(マシュー・グード)が現れ、インディアと参列者を驚かせる。そのまま彼は、しばらくストーカー家に泊まることになる。翌日、家政婦のマクガーリック夫人が、チャーリーを責める場面を目撃するインディア。夫人はその日のうちに姿を消した。
夫との仲が冷えていたエヴィは、悲しみにくれることもなく、チャーリーと楽しげに買い物へ出かける。その間にインディアがチャーリーのバッグを探ると、なぜかプレゼントと同じ箱が入っていた。
ガーデニングや料理もこなし、ワイン通でフランス語に堪能、テニスも得意―何もかも完璧なチャーリーに「何が望みなの?」と問うインディア。
彼の答えは『友達になりたい』だった。
ある日、遠方から訪ねてきた大叔母のジン(ジャッキー・ウィーヴァー)が、チャーリーを見て動揺する。エヴィに何かを話そうとするが相手にされず、ホテルへ向かった後に姿を消す。自分と同じように鋭敏な感性を持つチャーリーに次第に共鳴していくインディア。だが、それと同時に彼の過去に疑問も抱き始める。
父の死の真相は? プレゼントの贈り主は?
姿を消した人たちは何を知っていたのか?
そしてチャーリーの本当の目的は?
すべての謎を、あの鍵が、開こうとしていた―。」
広大な屋敷で暮らす母娘のもとへ、長期間にわたって消息を絶っていた叔父が現れたのを機に、次々と起こる不気味な出来事と、その裏に隠された驚愕の真相を息詰まるタッチで追いかけていく物語は、いわゆるゴシック・ホラーそのものです。しかし、この物語の時代背景は現代なのですね。
主人公の少女インディアを演じるのはわたしのブログ記事「アリス・イン・ワンダーランド」で紹介した映画で主演したミア・ワシコウスカです。
主人公の母親をオスカー女優のニコール・キッドマンが演じていますが、あまりにも妖艶でした。彼女が出演しただけで映画そのものもグレードアップしたような気がしますね。
この映画でのニコールの妖艶さは、ホラー映画の名作「アザーズ」での演技を彷彿とさせました。また、この映画は、わたしのブログ記事「ヒッチコック」で紹介した映画にも通じる部分が大でした。ヒッチコックはグレース・ケリーからイングリッド・バーグマン、ティッピー・ヘドレン、キム・ノヴァク、 ジャネット・リーといったブロンド女優をこよなく愛しましたが、もしニコール・キッドマンと出会っていたら、絶対に彼女を気に入って主演作品を作ったと思います。
それほど、ニコールは一連のクール・ビューティー、そしてヒッチコック・ブロンドの流れを汲む女優なのです。この映画の中でインディアが母親の髪を梳くシーンがあるのですが、大写しになったニコールのブロンド・ヘアにヒッチコック的な嗜好を感じたのは、わたしだけではありますまい。
わたしのブログ記事「オブリビオン」で紹介した映画に主演したトム・クルーズとニコール・キッドマンが夫婦だった頃に撮影された映画「アイズ・ワイド・シャット」も連想しました。あの映画でのニコールは、本当に魅力的でしたね。もう人間離れしているほど、全身から妖しい魅力を放っていました。
それにしても、あの2人が夫婦だったなんて、今では夢のようですね。
そして、この「イノセント・ガーデン」という映画自体が非常にヒッチコック的な作品であると思います。不条理な物語の中に強烈な個性を持った人物が登場するという点は、かの名作「サイコ」にも通じますね。
この映画のプロローグで、インディアは18歳の誕生日を迎え、スクリーンには「花は自分の色を選べない」という言葉が出てきます。この言葉が、映画のラストシーンで生きてきます。というのも、プロローグで登場した白い花がエピローグでは他の色に染まるのです。それにしても意表をつかれるというか、まことに大胆な展開でした。これ以上はネタバレになるので触れません。何はともあれ、非常に不気味な雰囲気を醸し出すことに成功した新しいスリラー映画の誕生を喜びたいと思います。