No.0107
日本映画「俺はまだ本気出してないだけ」を観ました。
なかなか笑えて、ちょっとイライラして、最後はホロリとくるコメディ映画でした。
「コドモ警察」シリーズなどの福田雄一が監督を務めており、とにかくダメな主人公を堤真一が演じます。共演は、主人公の一人娘を橋本愛が演じるほか、石橋蓮司、生瀬勝久、山田孝之といった実力派俳優が名を連ねています。
原作は、小学館「月刊IKKI」で連載されていた青野春秋の人気漫画です。
映画の公式HPの「イントロダクション」には「42歳、バイト暮らし。『めざせ、漫画家デビュー!』・・・。と、明日から心を入れかえます」というタイトルに続いて、次のように書かれています。
「大黒シズオ、42歳。バツイチで子持ち。『本当の自分を探す』と勢いで会社を辞めるも朝からゲームばかり。父親には毎日怒鳴られ、高校生の娘に借金し、バイト先ではミス連発。そんなある日、突然『俺、マンガ家になるわ』と宣言。根拠のない自信をもとに出版社に持ち込みを続け、編集者に励まされつつ雑誌掲載を目指す日々。描くことがな~いと悩み、父とケンカして(この歳で)家出。幼馴染やバイト先の友人も巻き込みながら、ボツばかりなのは『運がないから』とペンネームを変える始末。こんなシズオにデビューの日は訪れるのか・・・!?」
「映画史上、最強にダメダメな主人公を、人気と実力を兼ね備えた日本を代表する俳優の一人である堤真一が演じるという『驚異のキャスティング』ですでに話題沸騰。原作は『このマンガがすごい!2009』にランキングされ、映像化には20社以上が殺到した人気作であり、青野春秋のデビュー作。雑誌『IKKI』連載中から、ルックスも中味もイケてない中年のオヤジが不器用に奮闘する姿は若者を中心に幅広い読者に受け入れられ、一足早く連載は完結。『苦笑い哀愁ドラマの傑作』『笑いながらじんわり来てラストは泣ける』と高い評価を受けている」
この「イントロダクション」には「驚異のキャスティング」と書かれていますが、たしかに、「ダメ中年」を絵に描いたような主人公をあの堤真一が演じたというのは驚きでした。彼はまったく違和感がないほど、大黒シズオを見事に演じきっています。「姑獲鳥の夏」、「魍魎の匣」「ALWAYS 3丁目の夕日」シリーズ、「ローレライ」、「地下鉄(メトロ)に乗って」「舞妓 Haaaan!!!」などで渋い演技を見せてくれた、あの堤真一がです。特に「ALWAYS 3丁目の夕日」と「俺はまだ本気出してないだけ」ではともに父親役を演じていますが、そのキャラは正反対でした。この映画では変な顔も含めた表情のバリエーションもハンパではなかったです。改めて、堤真一という俳優は「名優」であり「怪優」だなと感じました。
堤真一は1964年生まれだそうなので、わたしより2歳下です。
ということは現在48歳なわけですが、映画では42歳の役でしたね。
同じく、シズオの同級生であるサラリーマンの宮田修を演じた生瀬勝久は52歳ですが、彼は10歳も若い役を演じたことになります。しかし、この生瀬勝久の演技が良かった! 特に、ショボイ居酒屋で旨くもなさそうな惣菜をパクパク食べる場面に中年の悲哀、それもバツイチ男の悲哀がよく表れていました。
生瀬勝久といえば、ドラマと映画で高い人気を誇った「TRICK」シリーズに登場するヅラの警部補・矢部謙三役が真っ先に思い浮かびます。
わたしのブログ記事「TRICK劇場版3 霊能者バトルロイヤル」にも書いたように、わたしはこのシリーズが大好きで、TVドラマも劇場版もすべてDVDを買いました。
「スポーツ報知」7月3日号を開いたところ、映画「TRICK劇場版 ラストステージ」が来年公開され、シリーズが完結するという記事が出ていました。そして、同シリーズのスピンオフドラマとして、「警部補 矢部謙三2」がテレビ朝日系で今月5日からスタートするそうです。楽しみですね!
原作のコンビニマンガも読みました
この映画、とにかく中年の悲哀がプンプン漂っています。
特にシズオが朝っぱらからサッカー・ゲームに興じたり、娘に借金を申し込んだりする場面には本気で腹が立ちました。
映画を観る前に事前に原作のコンビニマンガを読んでいたのですが、表紙には「中年の80%は失敗で出来てます」とのコピーが踊っています。しかし、42歳になったばかりの奴が中年を気取るなど、50歳になったわたしからすれば「ふざけるな、このハナタレ小僧が!!」と言いたくなりますね。
原作漫画もそうですが、この映画、最も素晴らしいのはタイトルだと思います。
「俺はまだ本気出してないだけ」とは、なんと人々の心の琴線に触れるフレーズでしょうか! 「一条真也の読書館」で紹介した『群れない力』で「なにが『いいね!』だ!」にも通じる爽快感があります。そう、スカッとさわやかになる言葉ですね。
また、吉本新喜劇で池乃めだかが喧嘩でボコボコにやられてしまった後で言う「よっしゃ、今日はこれぐらいにしといたるわ」にも通じる気がします。
まあ、ユーモアのある「負け犬の遠吠え」といったところでしょうか。(苦笑)
人生、嫌なことはいくらでもある。ましてや、中年になれば嫌なことは多くなる。
家族から冷たくされたり、仕事がうまくいかなかったり、果ては離婚や失業といった過酷な運命さえ待っているかもしれない・・・・・。
でも、みんな、うつになったり自殺を考えたりするくらいなら、どんな悲惨な状況にあっても「俺はまだ本気出してないだけ」とつぶやけばいいんです。
そして、根拠のない自信を持って生きていけばいいんです。
その意味で、「俺はまだ本気出してないだけ」は生きるための魔法の呪文。
そして、この映画はこれからも生きていく中年たちへのエールなのです。
実際、このわたしも、この映画を観る直前に仕事がらみで残念な結果に終わったことがあり、少しだけ落ち込んでいたのです。しかし、映画を観た後は元気が湧いてきました。そして、弟からのアドバイスもあって10年後にある大きな勝負をかけることにしました。わたしは、見えない相手に向かって「おい、10年後を見とけよ!」とつぶやいてやりました。ふふふ。本当に、見とけって!
最後に、この作品で主人公のシズオは「人生300年。」というタイトルのふざけたマンガを描くのですが、たしかに何事も長生きした方が勝ちかもしれません。
あの家康だって、長生きしたからこそ天下を取ったわけですから・・・・・。