No.0116


 映画「パシフィック・リム」を観ました。いやあ、驚きましたね。
 いつの間にか、こんな面白い映画が作られていたなんて!
 ずばり、怪獣vs巨大ロボットのSFアクション映画ですが、男子(オッサン含む)にはたまらない魅力の作品でした。たいへんコーフンしました!

 監督は、ギレルモ・デル・トロ。「ヘルボーイ」シリーズなどで知られる鬼才です。
 彼は大の怪獣好き、ロボット好きだそうですが、その怪獣愛、ロボット愛がこの映画に炸裂しています。ちなみに、本作品は「ゴジラ」「地球防衛軍」「宇宙大戦争」「モスラ」「キングキング対ゴジラ」などの本多猪四郎、「原子怪獣現わる」「水爆と深海の怪物」「シンドバッド7回目の冒険」「アルゴ探検隊の大冒険」「タイタンの戦い」などのレイ・ハリーハウゼンに捧げられています。

 物語は2013年に始まります。突然、太平洋の深海から未知の巨大生命体が出現し、それは「KAIJU」(怪獣)と呼ばれます。異次元の裂け目から次々に現れるKAIJUは世界各国の都市を次々と破壊します。瞬く間に破滅寸前へと追い込まれた人類は、一致団結して科学や軍事のテクノロジーを結集します。そして、ついにKAIJUと戦闘可能な人型巨大兵器「イェーガー」の開発に成功するのでした。各国から選びぬかれた精鋭たちはパイロットとしてイェーガーに乗り込みます。彼らは勇猛果敢にKAIJUに立ち向かっていくのですが、次第に苦戦を強いられ、人類は絶滅の危機に陥るのでした。

 「パシフィック・リム」を観て、わたしは怪獣とは台風や地震や津波といった自然災害のメタファーであり、巨大ロボットは核兵器のメタファーであると思いました。
 そう、この映画では大災害と核兵器がガチンコで対決するのです。
 いわば、「自然」と「人工」の最終決戦を描いているのではないでしょうか。
 かつて、水爆実験の影響で太古の眠りから目を覚ましたゴジラが「核」のシンボルとされました。しかし、怪獣は核のような人間が創り出したものではなく、あくまで自然界が生んだ巨大生物です。「パシフィック・リム」では「自然」「人工」、「災害」「兵器」、「怪獣」「ロボット」の二項対立が見事に成立しています。

 世界中で暴れまくるKAIJUたちを倒すべく、人型巨大兵器イェーガーを操縦するパイロットたちは多士済々・・・・・「ザ・レッジ ~12時の死刑台~」のチャーリー・ハナム、「バベル」の菊地凛子、そして「ヘルボーイ」シリーズのロン・パールマンらが出演しています。さらに、今や日本を代表する子役となった芦田愛菜ちゃんがハリウッド作初出演を果たしています。
 菊地凛子の少女時代を愛菜ちゃんが演じるわけですが、正直、演技力では愛菜ちゃんの圧勝でした。というか、この子、演技力ありすぎでは?
 泣き叫ぶシーンとか、恐怖におののくシーンなどは絶品で、これからハリウッドのホラー映画などからバンバン出演依頼が来るのではないでしょうか。

 この映画、なんといっても最先端VFXを駆使した怪獣とロボットのバトル描写が見せ場です。細部まで作り込まれたイェーガーの設定も素晴らしいです。
 イェーガーからエヴァンゲリヲンを連想する人も多いようですが、エヴァよりも機動戦士ガンダム、いや、わたしの世代ならマジンガーZを思い出さずにはいられません。いや、明らかにデル・トロ監督は「マジンガーZ」を意識していたと思います。怪獣を倒す場面でも、ロケットパンチとか、プラズマ砲とか、マジンガーZのブレストファイヤーそのものでしたもの。いや、ほんとに。
 ただし、デル・トロ監督は「鉄人28号」のファンだったそうです。

 さて、怪獣(KAIJU)のほうですが、これはゴジラやガメラに代表される日本の怪獣で思い当たるものがありませんでした。「ウルトラマン」や「ウルトラセブン」に出てくる怪獣も思い浮かびません。怪獣の造形がハリウッド・デザインというか爬虫類っぽいというか、さらに言えばエイリアンの化物みたいな感じなのです。強いて言えば、「デビルマン」に登場する悪魔たちのイメージに重なりましたね。わたしが子どもの頃、「マジンガーZ対デビルマン」というアニメ映画が公開されたのですが、まさにそれの実写版のようでした。もっとも、「マジンガーZ対デビルマン」は永井豪センセイによって生まれた両雄が戦うのではなく、協力し合って悪魔どもを倒すという設定だったと記憶しています。

 でも、いくら造形がハリウッド的であっても、やはり怪獣の姿をスクリーンで観ると、わたしは子どもの頃に観た東宝系の怪獣映画を思い出してしまいます。
 小学校のときは、夏休みのたびに「東宝こども祭り」に必ず行きました。
 そして、ゴジラ・ラドン・モスラ・キングギドラなどの大暴れに胸を躍らせました。
 大映のガメラも大好きで、生まれて初めて観た映画が「ガメラ対ギャオス」です。
 (監督の湯浅憲明さんは、サンレー東京に勤務されていたことがあります)
 いつも、わたしの空想の中ではゴジラとガメラが闘っていました。ですから、YouTubeで「Gozilla vs. Gamera」の動画を発見したときは狂喜しましたね。
 それにしても、この動画を作った人は凄い! 天才じゃないかと思います。

 ところで、「パシフィック・リム」で使用されている音楽はどことなく日本の怪獣映画のムードを醸し出しており、郷愁のようなものが感じられました。
きっとデル・トロ監督は、本当に日本の怪獣が大好きなんでしょうね。
 だって、この映画に登場するKAIJUたちの名前も、なんと、「RAIJU」(雷獣)、「YAMAARASHI」(山嵐)、「ONIBABA」(鬼婆)なのですから!
 なんだか子ども時代に戻って、大好きなゴジラが活躍する映画を観たような気がします。今年の夏は異常な暑さで不快きわまりないですが、この映画のおかげで良い暑気払いが出来ました。とにかく、怪獣と巨大ロボットの好きなすべての男子(オッサン含む)に「パシフィック・リム」をおススメいたします。

 最後に一言。ネタバレにならないように書くならば、この作品のラストでは自らの生命を捨てて任務を全うする、いわゆる「特攻」が行われます。
 リドリー・スコット監督の「プロメテウス」(この映画、ネットでは酷評されていましたが、わたしは面白く鑑賞しました)の最後でも特攻シーンが登場しました。
 かつて日本のカミカゼ・アタックや9・11のイスラム自爆テロに恐怖をおぼえたアメリカ人が「特攻」に共感するというか、肯定的にとらえている点が意外でもあり、興味深く感じました。何か、彼らの意識が変化し始めているように思います。
 しかしながら、「パシフィック・リム」の最後で命を落した2名を含めて、全篇に死者への追慕というものが感じられませんでした。「死者への想い」をもっと描いていれば、さらに日本人の心の琴線に触れたのではないでしょうか。

  • 販売元:ワーナー・ブラザース・ホームエンターテイメント
  • 発売日:2014/09/03
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