No.0187
「百円の恋」を「小倉昭和館」で日本映画を観ました。
映画公式HPの「INTORODUCTION」には、「第一回『松田優作賞』グランプリ脚本、堂々の映画化!」として、以下のように書かれています。
「故・松田優作氏の出身地である山口県周南映画祭で、優作氏の志を受け継ぐクリエイターを発掘すべく、2012年に新設された脚本賞、第一回『松田優作賞』グランプリ作品 『百円の恋』(作:足立紳)。
国内外からの応募総数151の脚本より、松田美由紀(女優、 写真家)、黒澤満(映画プロデューサー)、丸山昇一(脚本家)らの厳正なる選考により、女と男の挫折と再生という普遍的なテーマに挑みながらも、人間の弱さと強さを真っ向から描ききった骨太な本作を、『イン・ザ・ヒーロー』の武正晴監督が待望の映画化。 優作氏の故郷・山口県でも一部撮影を行いつつ、志を受け継ぐ役者たちが繰り広げる、魂と肉体を張った名作が誕生した」
また公式HPの「STORY」には、以下のように書かれています。
「32歳の一子(安藤サクラ)は実家にひきこもり、自堕落な日々を送っていた。 ある日離婚し、子連れで実家に帰ってきた妹の二三子と同居をはじめるが折り合いが悪くなり、しょうがなく家を出て一人暮らしを始める。夜な夜な買い食いしていた百円ショップで深夜労働にありつくが、そこは底辺の人間たちの巣窟だった。 心に問題を抱えた店員たちとの生活を送る一子は、帰り道にあるボクシングジムで、一人でストイックに練習するボクサー・狩野(新井浩文)を覗き見することが唯一の楽しみとなっていた。
ある夜、そのボクサー・狩野が百円ショップに客としてやってくる。狩野がバナナを忘れていったことをきっかけに2人の距離は縮めていく。なんとなく一緒に住み始め、体を重ねるうちに、一子の中で何かが変わり始める―――」
この映画は「さよなら歌舞伎町」と同じく、わたしのアンテナにまったく引っ掛かってこなかった作品でした。小倉昭和館の二本立てでなければ絶対に観なかったと思います。これもまた素晴らしい映画で、わたしはかなり感動しました。内容も「さよなら歌舞伎町」と似ていて、社会の底辺の人々が登場し、悲惨な出来事が次々に起こります。とにかく「現実は甘くない」「生きることは苦しい」といったメッセージに満ちているのですが、最後の最後に希望(のようなもの)を感じさせてくれるので、観客は救われます。
それにしても、主演の安藤サクラの演技力はハンパではありません。 彼女の演技を初めて観たのは、ブログ「園子音の世界」で紹介した長編映画「愛のむきだし」でした。この作品で、安藤サクラはオウム真理教を彷彿とさせる謎のカルト教団の女幹部を演じているのですが、もう観ていてブッ飛ぶほどの怪演でした。この映画でも、自堕落な女を演じるためにわざと激太りした後、一気に10キロも減量したそうで、まさに鬼気迫る演技でした。というか、「あんたはロバート・デ・ニーロかい?!」と突っ込みたくなる。
ボクシング・シーンも迫力満点で、最後の試合など、「世紀の一戦」と呼ばれたメイウェザーvsバッキャオ戦よりもずっと緊迫感がありました。
気になったのは、主人公の一子が働く百円ショップの店員たちのやる気のなさです。百円ショップといっても「ダイソー」のような大型店ではなく、街のコンビニのような店で、「お客様も、お店も、やればできる百円生活!!」といった垂れ幕が入口にかかっています。 ここで働く人々が仕事の価値も意味も見出していないのです。
ブログ「さよなら歌舞伎町」では、ラブホテルについて書きましたが、反社会的な仕事でない限りは、どんな仕事にだって意味や価値があります。それを見つけてやるのが経営者であり、マネージャーではないでしょうか。嫌々働く百円ショップのスタッフたちの姿を見ながら、わたしは「自分が百円ショップやコンビニの社長だったら、どのようにスタッフに仕事の価値を説くか?」といったことを考えてしまいました。