No.0198
日本映画「イニシエーション・ラブ」をシネプレックス小倉で観ました。
ブログ「アリスのままで」で紹介した映画に続けての鑑賞です。「アリス」は高齢者の観客ばかりでしたが、こちらは若い人だらけ、それも中学生ぐらいの女子が多かったですね。80年代の男女の恋愛を描いた物語でしたが、イマドキの子たちは楽しめたのかなあ? ちょっと気になります。
もともと、わたしはこの映画のタイトルを勘違いしていました。
ずっと、「イミテーション・ラブ」だと思い込んでいたのです!
それが本当は「イミテーション(偽物)」ではなく、「イニシエーション(通過儀礼)」が正しいのだと知ったのは劇中での登場人物のセリフからでした。この映画、「観客がまんまと騙される」ことをウリにしていますが、なんと、わたしはタイトルの段階ですでに騙されていたのです。いや、わたしの勝手な勘違いなので、「騙された」とは言わないか(苦笑)?
ヤフー映画の「解説」には以下のように書かれています。
「ベストセラーを記録した乾くるみの小説を実写化した、異色のラブストーリー。恋愛下手の大学生と歯科助手の出会いを描く『Side-A』、遠距離恋愛を経て彼らの関係が終わるさまを追う『Side-B』の2部構成でつづられる。監督は、『20世紀少年』シリーズなどの堤幸彦。主人公の男女を、『ライアーゲーム』シリーズなどの松田翔太と『もらとりあむタマ子』などの前田敦子が快演。ラスト5分でラブロマンスからミステリーに転じる作風に意表を突かれる」
またヤフー映画の「あらすじ」には以下のように書かれています。
「バブル真っただ中の、1980年代後半の静岡。友人から合コンに誘われ、乗り気ではなかったが参加することにした大学生の鈴木(松田翔太)は、そこで歯科助手として働くマユ(前田敦子)と出会う。華やかな彼女にふさわしい男になろうと、髪型や服装に気を使って鈴木は自分を磨く。二人で過ごす毎日を送ってきた鈴木だったが、就職して東京本社への転勤が決まってしまう。週末に東京と静岡を往復する遠距離恋愛を続けるが、同じ職場の美弥子(木村文乃)と出会い、心がぐらつくようになる」
観終わった正直な感想は、「うーん、これがトリックなの?」でした。
けっこう「ショボイ」感じがしたのです。映画「TRICK」シリーズの堤幸彦監督の度肝を抜く仕掛けに期待していただけに、ちょっと肩すかしを喰った印象です。まあ、ルビーの指輪とかナイキシューズとか、謎解きにつながる伏線はいくつか張られていましたし、冒頭から恋愛下手の太った鈴木君(某国民的アイドルグループのファンを代表するイメージと言っては怒られる?)に対して前田敦子演じるマユがぶりっ子で「たっく~ん♡」と甘える姿に「ああ、これは何か裏があるな・・・」と長年オトコをやっている経験からすぐわかりました。それにしても、前田敦子の演技は良かったです。マユのキャラにも合っていて適役でしたね。ブログ「さよなら歌舞伎町」で紹介した映画でも存在感がありましたし、良い女優さんになりましたね。
「女は怖い」と感想を述べるのは簡単ですが、「女は強い」とも言えますね。
しかしながら、これぐらいの強さは、マユだけでなく、多くの女性が持っているはずです。そして、この映画の舞台となっている80年代に比べ、「男女雇用機会均等法」などの影響もあってか、さらに今の女性は強くなりました。 物語の時代背景が80年代のバブル時代というので、まさにその時代に学生時代を謳歌したわたしとしては楽しみにしていたのですが、これは期待外れでした。バブル期の描き方がメチャクチャ地味なのです。広末涼子が主演した映画「バブルへGO!!タイムマシンはドラム式」ではありませんが、あの頃の浮かれぶりを描くにはやはり六本木が登場しないと!
しかし、80年代を描くことに対するこだわりはあったようで、作品中に明石家さんまと大竹しのぶが共演した「男女7人夏物語」のエピソードが出てきますが、ドラマに出演していた片岡鶴太郎と手塚里美がこの映画では夫婦役として登場しています。これには堤監督のこだわりを感じました。
また、映画のエンドロール上で「カセットテープ」とか「ソバージュ」とか「DCブランド」とか、当時のアイテムを紹介していました。しかし、「黒電話」はちょっと古すぎるだろう! 当時すでにプッシュホン・ダイヤルでしたよ。
電話といえば、「公衆電話」や「テレホンカード」が完全に過去の遺物になっていることに改めて気づきました。自身の主義から絶対にケータイを持たず、今でも公衆電話から電話をかけている「バク転神道ソングライター」こと鎌田東二先生の心中を察した次第です。
あと、「イニシエーション・ラブ」では80年代の歌謡曲(J―POPではありません)がたくさん流れていました。ブログ「3Women's Party」で紹介した森川由加里サンの「SHOW ME」がいきなり映画の冒頭で流れたのをはじめ、多くの懐かしいナンバーがスクリーンによみがえりました。
しかしながら、「Side-A」でのBGMははっきりいって邪魔でしたね。やはり歌詞を日本語で歌われると気が散って映画のストーリーを追う妨げになり、セリフも聞き取りにくいです。特に、太田裕美の「木綿のハンカチーフ」は耳障りでしかなく、せっかくの名曲に対して失礼な使い方だと思いました。
それでも「Side-A」では、わたしもカラオケでときどき歌う松崎しげる「愛のメモリー」はBGMとして成功していましたね。また、「Side-B」の寺尾聡「ルビーの指輪」は場面と歌詞がバッチリ合っていました。なんでも、80年代で最もヒットした曲は「ルビーの指輪」だそうですね。
「イニシエーション・ラブ」は、遠距離恋愛の物語です。鈴木たっくんは、週末のたびに東京から車を飛ばして静岡のマユに会いに行きますが、東京~静岡間ならJR東海の「シンデレラエクスプレス」を登場させてほしかったと思うのはわたしだけではありますまい。だって、「シンデレラエクスプレス」は80年代の恋愛の1つのシンボルだったからです。
クリスマス・イブの夜に、そして互いの誕生日に恋人たちはデートしてプレゼントを贈り合います。この映画を観ながら、そんな青春の日々を思い出しました。そういえば、26日が妻の誕生日だったのですが、わたしは東京出張中で何もお祝いができませんでした。仕事とはいえ「悪いことをしたなあ」と思っています。帰ってから、ささやかな贈り物を渡しました。ごめん。