日本映画「呪怨―ザ・ファイナル―」を観ました。ブログ「呪怨―終わりの始まり―」で紹介した映画の続編です。

 ヤフー映画の「解説」には以下のように書かれています。

「ハリウッドでもリメイクされた、大ヒットJホラー『呪怨』シリーズの完結編。
行方不明の妹を捜す女性が、すさまじいパワーを秘めた呪いと対峙(たいじ)する姿を追う。メガホンを取るのは、『感染』『学校の怪談 呪いの言霊』などの落合正幸。『摂氏100℃の微熱』などの平愛梨が怪奇現象に襲われるヒロインにふんし、絶叫演技を披露する。あの俊雄くんがどのような形で登場するかにも注目」

 また、ヤフー映画の「あらすじ」には以下のように書かれています。

「小学校で教師をしている妹の結衣が姿を消したと知らされた麻衣(平愛梨)。その行方を追ううちに、結衣が不登校を続けていた佐伯俊雄(小林颯)という生徒の家を頻繁に訪ねていたという情報をつかむ。結衣の情報を得るために佐伯家に向かうが、屋敷は解体されて更地になっていた。不動産業者から佐伯家の屋敷が呪いの家だと聞かされて困惑する中、麻衣の周囲で奇怪な現象が頻発する」

 「呪怨」は、もともと1999年に発売された清水崇監督・脚本によるホラーのビデオ作品です。それを原作とする劇場版「呪怨」が2003年1月に単館系で公開され、ホラー映画ファンたちから絶大な支持を得ました。同年8月には続編の「呪怨2」も公開されています。「呪怨」シリーズには、佐伯伽椰子という女性の霊やその子供である佐伯俊雄の霊が登場しますが、その姿は見るものに強烈なインパクトを残します。そのため、「リング」シリーズの山村貞子と並んでコントやパロディのキャラに使用されることもあります。

 タイトルである「呪怨」とは何か。 「"強い恨みを抱いて死んだモノの呪い。 それは、死んだモノが生前に接していた場所に蓄積され、『業』となる。 その呪いに触れたモノは命を失い、新たな呪いが生まれる。"」という意味であることが映画の冒頭で紹介されます。今や佐伯家は、日本映画を代表する幽霊屋敷となった観があります。

 「呪怨」シリーズは、ホラー映画にうるさいわたしの好みにも合う作品ではありましたが、前作の「呪怨―終わりの始まり―」を観たとき、「わかりやす過ぎるなあ」と感じ、少々不満でした。サービス過剰というか説明が行き届き過ぎていて、第1作、第2作のような不条理な怖さが薄れていたのが残念でした。そして、今回の「呪怨―ザ・ファイナル―」はそれがさらにエスカレートしていました。

 「四谷怪談」にしろ、「リング」にしろ、幽霊が出現する理由というものがあり、その背景には「因果応報」の論理があるわけですが、「呪怨」シリーズの場合はそれが希薄です。というか、親切心から接近してきた生者を片っ端から残酷な方法で殺しまくるわけですが、これは理不尽を通り越してもはや滑稽です。突然、俊雄や伽椰子がどアップで出てきて怖いのは怖いですが、この怖さは遊園地のお化け屋敷の怖さです。

 特に、無理矢理に人を怖がらせようとする強引な姿は、どことなく「オレたちひょうきん族」の最後のコーナーである「ひょうきん懺悔室」に登場するブッチー武者ふんする白塗りの神様に見えて仕方がありませんでした。ラストシーンもハリウッドの能天気なB級ホラーみたいで、違和感がありました。 Jホラーにはもっとジメーっとした怖さが似合います。

 『Jホラー、怖さの秘密』(メディアックス)という本の最後には落合正幸監督へのインタビューが掲載されており、そのコメントが紹介されています。

「今度の伽椰子は今までの伽椰子とはかなり違います。日本の幽霊はただそこに佇んでいるだけ、化けて出るだけってことが多いですけれども、この『呪怨』の伽椰子はすごく攻撃的なんです。心霊写真って、写真の奥の方にぼうっと写っているだけでも、日本人が見ると『怖い』って思うじゃないですか。だけど、アメリカ人なんかは動きもしない、奥の方に立っているだけの幽霊は、気の弱い幽霊だって言う。そういう意味では今回の伽椰子はアメリカ的というか、妬みとか恨みで攻撃的に絡んできます」

 これは、前作「呪怨―終わりの始まり―」についてのコメントですが、今回の「呪怨―ザ・ファイナル―」の場合も同様です。アメリカ的なモンスターとしての伽椰子が登場します。

 伽椰子にしろ、俊雄にしろ、どんどん「ゆるキャラ」化しています。
今回もこの2人が出てくると、なんとなく滑稽で笑い出したくなる雰囲気さえあります。あまりにも景気よくバンバン登場するので、「いつ出てくるか?」という緊張感がまったくありません。また、映画の完成披露会や各種イベントに俊雄と伽椰子が出演するのもよろしくない。客席からはパンツ一丁の俊雄に対して「かわいい~♡」という黄色い声が飛ぶ始末です。あれほど怖かった「呪怨」の堕落ぶりには悲しくなってきます。ホラーとしてはもはや「死んだ」と言えるでしょう。まことに残念ですね。

 じつは、わたしは今、「アメリカン・ホラー・ストーリー」という20世紀フォックスのTVシリーズにハマっています。「glee/グリー」のクリエイターが放つ禁断のエロティック・サイコ・スリラーですが、単なるお化け屋敷のような絶叫系のホラーとは一線を画し、卓越したストーリー構成とエレガントな映像美のスタイリッシュ・ホラーとして、絶大な評価を得ています。ホラーに限らず、数あるドラマの中でもひときわ異彩を放つエッジ―な作品として、業界内外から大きな注目が集まっています。

 現在、第1シーズンの「呪いの館」、第2シーズンの「精神病院」、第3シーズンの「魔女団」、第4シーズンの「怪奇劇場」と続いていますが、「アメリカン・ホラー・ストーリー」というタイトルはそのままに、シーズンごとに舞台や登場人物が一変します。「キングコング」(1976年)のジェシカ・ラングを中心に、過去シーズンに出演している俳優陣もまったく別の役柄で登場を果たしています。これが毎シーズン新鮮な驚きをもたらしてくれるのです。第1シーズンと第2シーズンのDVD-BOXが発売されており、一気に観ました。第1シーズンの「呪いの館」は、「呪怨」シリーズと同じく屋敷に取り憑いた幽霊の話ですが、はっきり言って、「呪怨―ザ・ファイナル―」の数十倍は怖いです。しっかりしろよ、Jホラー!

 「呪怨」の話に戻しましょう。ショボイながらも、「呪怨―ザ・ファイナル―」には、これまでのホラーの常識を打ち破る設定が2つありました。まず、「呪怨」シリーズは基本的に幽霊屋敷モノです。つまり、俊雄や伽椰子は「地縛霊」として家に取り憑いているはずなのですが、違う家にも出現するということ。次に、俊雄が生きているのに白塗りでパンツ一丁の俊雄霊が登場すること。つまり、パンツ一丁の俊雄は「死霊」ではなく「生霊」だったのです!

 映画では、意識を失って寝ている俊雄の横を白い俊雄霊が通り過ぎるシーンもあり、どうやら「幽体離脱」のような現象であるということが推察されます。「それにしても、なんでパンツ一丁?」という疑問は残りますが、とりあえず謎は解けました。わたしは、子どもの肉体から幽体が離脱するということで、「ウルトラQ」の「悪魔ッ子」という話を連想しました。魔術団の少女リリーが夜な夜な幽体離脱して次々に事件を引き起こすという話です。

 「呪怨」シリーズの魅力として、日本を代表する「旬の美女」が出演することがあります。第1作では奥菜恵と伊東美咲、第2作では酒井法子と新山千春が、第3作では佐々木希とトリンドル玲奈が、そして今回の第4作では平愛梨、おのののかが出演しました。彼女たちが恐怖で悲鳴をあげるシーンは堂に入っていましたが、いずれも表情が良かったです。

 その秘密は「目」にあります。ホラー映画の観客はみんな、主演女優の目を追います。だから、奥菜恵や佐々木希みたいに綺麗で大きな目をしている女性はホラー向きなのです。今回の平愛梨も目の大きな女優さんで、その意味では良かったです。でも、「20世紀少年」シリーズのカンナ役でキラキラ輝いていた彼女が今ひとつパッとしなかったのは、安易なシナリオと「ゆるキャラ」化した俊雄&伽椰子のせいだと思います。

  • 販売元:NBCユニバーサル・エンターテイメントジャパン
  • 発売日:2015/11/06
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