日本映画「女が眠る時」を観ました。
  ビートたけしの12年ぶりの主演作ですが、この映画の初日舞台挨拶に登壇し、「最近の日本映画は、あまりにもエンターテインメント重視で、話題になるのはお客さんの数だけ。遊園地のような映画ばかりもてはやされる」と苦言を呈したと知りました。彼の発言にはまったく同感です。そこで、この映画の予告編を見たら、面白そうだったのでT・ジョイリバーウォーク北九州で鑑賞した次第です。今日の北九州は春のように暖かかった!

 ヤフー映画の「解説」には以下のように書かれています。

「『スモーク』などのウェイン・ワン監督がメガホンを取り、スペイン人作家ハビエル・マリアスの短編小説を映画化したミステリー。海辺のホテルを舞台に、偶然出会った男女の私生活をのぞかずにはいられない主人公の異様な心象風景を描写する。ビートたけしを筆頭に西島秀俊、忽那汐里といった豪華キャストが勢ぞろい。次第に狂気を宿していく主人公のカオスのような日々が目に焼き付く」

 また、ヤフー映画の「解説」には以下のように書かれています。

「作家の健二(西島秀俊)は妻の綾(小山田サユリ)を伴い、リゾートホテルで1週間の休暇を取ることに。処女作がヒットしたもののその後スランプに悩まされ、作家の道を断念して就職を決めた彼は妻との仲もぎくしゃくしていた。到着した日、彼はプールサイドにいた初老の男性(ビートたけし)と若く麗しい美樹(忽那汐里)のカップルに惹かれる」

 この映画を観終わった率直な感想は、「物語として、あまりにも完結していない」ということでした。もちろん、最後は観る側に想像させるというのはわかるのですが、それにしても制作側がストーリーを整理しきれていない印象がありました。実際、ウェイン・ワン監督は「明確な答えを用意していない」と発言しているそうです。「すべては夢だった」とも考えられるのですが、そういう夢オチは一番やってはいけないことのようにも思えます。なによりも、思わせぶり過ぎる演出にちょっと引きました。

 期待していたビートたけしですが、すっかり老け込んだというか、体型もずいぶん緩んでしまって、なんだか蛭子能収のように見えて仕方がありませんでした。「戦場のメリークリスマス」を観て以来の俳優たけしのファンでしたが、大変失礼ながら、もう役者は卒業して「監督・北野武」に専念したほうがいいように思いました。晩節を汚さないほうがいいです。

 それにしても、たけしが演じた初老の男は若い女の寝顔を延々と撮影するのですが、これはもう立派な変態です。そして、わたしは日本文学を代表する稀代の変態小説である川端康成の『眠れる美女』を連想しました。川端康成にしろ、谷崎潤一郎にしろ、「美意識の怪物」が行き過ぎれば単なる変態です。わたしは小説家という人種の多くは変態であると思っています。

 その小説家である健二を演じたのが西島秀俊です。
 処女作が名のある文学賞を受賞して、5~6年前に第2作目を発表、そして第3作目が書けなくて悩んでいる小説家を演じています。彼の妻である綾は編集者なのですが、売れっ子作家の担当であり、健二はその作家との仲を疑っています。小説家が書けなくてもがいている作家の苦しみがよく表現されていたと思います。

 しかし、リゾートホテルに1週間も滞在して小説を書くとは良い身分ですね。
 わたしは毎日バタバタしながら、全国を駆け巡りながら、慌ただしい中で必死に原稿を書いていますので、リゾートでじっくり原稿を書く生活など夢のまた夢であり、憧れてしまいます。わたしだって、1週間ホテルに籠れば、短編小説ぐらいは書けるような気がします。
 しかしながら、案外慌ただしいからこそ時間を工夫して、なんとか執筆活動ができているのかもしれません。1週間もホテルに籠ったら、かえって調子が狂って書けなくなるかもしれませんね。もっとも、わたしが書くエッセイやコラムと小説では違うでしょうけれども・・・・・・。

 たけしに比べて、西島秀俊の存在感はありました。ホテルを舞台とした彼の映画といえば、中山美穂と共演した「サヨナライツカ」を思い出します。あの映画は中山美穂の美しさが輝いていて魅力的でしたが、今回の「女が眠る時」は単なる怪作といった印象しかありません。プールサイドで裸になった西島秀俊の体は見事に引き締まっていて、ある意味でひとつの見所だったかもしれません。(微苦笑)

 謎めいたヒロインを演じた忽那汐里は頑張っていましたが、まだまだ色気に乏しかったですね。これが事務所の先輩である上戸彩が演じていたら、もっと妖艶な作品に仕上っていたのではないでしょうか。
 忽那汐里といえば、ブログ「海難1890」で紹介した大作映画での主演が記憶に新しいところです。彼女のキャラからいって、あのようなシリアスなドラマのほうが向いていると思いました。

 最後に、リリー・フランキーとか新井浩文とか、クセのある俳優たちが良い味を出していました。しかし、ムダに豪華なキャスティングというか、映画の中における彼らの役の意味というものがまったく理解できませんでした。どちらも日本映画界が誇る名優・怪優ですので、こういう意味不明のチョイ役で使うのはもったいないと思いました。とにかく、全体的にモヤモヤ感の残る作品でしたね。

  • 販売元:バンダイビジュアル
  • 発売日:2016/08/03
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