Tジョイリバーウォーク北九州で日本映画「ボクの妻と結婚してください。」を観ました。
 
 ヤフー映画の「解説」には以下のように書かれています。

 「テレビ業界の第一線をひた走る放送作家が余命宣告を受け、家族に残す『人生最期の企画』のため奮闘するさまを描いた樋口卓治の人気小説を映画化。愛する妻子の幸せのために、残された時間を使って妻の最高の結婚相手探しに奔走する主人公・修治を織田裕二が熱演。彼の妻を吉田羊、修治が見初めた妻の結婚相手を原田泰造、結婚相談所を営む修治の元仕事仲間を高島礼子が演じる。監督は『県庁おもてなし課』などの三宅喜重、脚本を『電車男』などの金子ありさが手掛ける」

 また、ヤフー映画の「あらすじ」には以下のように書かれています。

 「バラエティー番組の放送作家・三村修治(織田裕二)は多忙な日々を送っていたある日、末期のすい臓がんで余命6か月と宣告されてしまう。ショックを受けながらも家族のため何ができるのか考えた彼は、自分の代わりに家族を支えてくれる人を見つけようとする。そこで、以前一緒に仕事をしたことがあり、今は結婚相談所の社長である知多かおり(高島礼子)に、自分がこの世を去った後の妻の結婚相手を探してほしいと頼み・・・・・・」

 ネットではあまり評価が高くないこの作品ですが、わたしは気持ち良く泣けました。まあ、映画というよりはテレビの2時間ドラマのような感じはしましたけど・・・・・・この映画は、「死ぬまでにやるべきことは何か」を真剣に考え、行動に移すという終活映画、いや、人生を修める「修活映画」です。

 最近の日本映画は、主要な登場人物がじつは死期が迫っていたというものが非常に多くなってきました。予告編を見ると、「彼には秘密があった」「彼女には秘密があった」というナレーションが頻出します。もちろん、秘密とは末期がんであり、不治の病です。

 「ボクの妻と結婚してください。」で織田裕二が演じる主人公・修治にも「秘密」がありました。こんなに次から次に末期がん患者が登場するのは、やはり時代を反映しているのでしょう。でも、あまりにも「死」をテーマにした映画ばかり作られてしまうと、インフレーションを起こしてしまい、このジャンルの作品がすべて安手のメロドラマと化す危険もあると思います。

 でも、さまざまな映画が示してくれる「さまざまな人生の修め方」は、これから死にゆく多くの人々にとって多くのヒントを与えてくれるのではないでしょうか。ブログ「バースデーカード」ブログ「湯を沸かすほど熱い愛」で紹介した映画、そして「ボクの妻と結婚してください。」・・・・・・最近の一連の修活映画には、それぞれの「人生の修め方」が描かれていました。

 この映画を観終わって、わたしは「放送作家らしい修活プランだな」と思いました。わたしも、かつて広告代理店で働いていたり、企画会社を経営してしたりしていたので、プランナー気質というのが身に沁みついています。そして、それゆえに「人を驚かせたい」「今のこの状況を企画に活かしたい」という想いがあります。この傾向は、作家やテレビ業界の人間も持っています。修治もそうです。「家族の幸せを考えた」結果の仰天プランの中には、「企画屋としての血が騒いだ」部分があったのでしょう。

 企画屋の人生は、人を驚かせもしますが、人を振り回しもします。
 正直言って、彼の思い描いたプランは周囲の人間を振り回しました。それは「迷惑」と言ってよい非常識な行為だと思いますが、周囲の人間の優しさによって、彼の願いは果たされたのです。この「面白い企画のためには、他人を巻き込んでも構わない」という考え方も、企画マン、特にテレビ業界の人間に特有のものです。ちなみに、わたしは昔からテレビ業界の人間が苦手なので、あえて付き合っていません。

 それでも、修治の「修活」は大成功したと思います。というのも、彼は「修活」の大きなテーマの1つである「死の恐怖を乗り越える」ことに成功したからです。ラ・ロシュフーコーは「太陽と死は直視できない」と言いました。
 たしかに、太陽と死は直接見ることができません。でも、間接的なら見ることはできます。そう、サングラスをかければ太陽を見れるのです。そして、死にもサングラスのような存在があります。「死」という直視できないものを見るためのサングラスこそ「愛」ではないでしょうか。

 「愛」の存在があって、はじめて人間は自らの「死」を直視できるとも言えます。誰だって死ぬのは怖いし、自分の死をストレートに考えることは困難です。しかし、愛する妻や夫、愛するわが子、愛するわが孫の存在があったとしたらどうでしょうか。人は心から愛するものがあってはじめて、自らの死を乗り越え、永遠の時間の中で生きることができるのです。修治の場合も、愛する妻と息子の将来をひたすら考え続けることによって、死の恐怖を乗り越えたと言えるでしょう。

 幸いなことに、修治には息子がいました。
 小学生の息子に向かって「おまえと一緒に酒が飲みたかった!」と叫ぶシーンには胸を打つものがありましたが、息子の存在によって、どれほど修治の心が救われたことかと思います。拙著『唯葬論』(三五館)にも書きましたが、中国哲学者で儒教研究の第一人者である加地伸行氏によれば、「遺体」とは「死体」という意味ではありません。人間の死んだ体ではなく、文字通り「遺(のこ)した体」というのが、「遺体」の本当の意味です。

 遺体とは、自分がこの世に遺していった身体、すなわち「子」なのです。
 あなたは、あなたの祖先の遺体であり、ご両親の遺体なのです。
 あなたが、いま生きているということは、祖先やご両親の生命も一緒に生きているということです。つまり、修治は息子という「遺体」の存在によって、生き続けることができるわけです。

 そして、修治には最愛の妻がいました。
 なぜ、夫婦というものが生まれるのか?
 それは、縁というものがあるからです。
 それでは、縁とは何か。縁とは奇跡そのものです。

 現在、この地球上には60億人を超える人々が生きています。
 日本だけでも1億2000万人ですから、大変な数です。「浜の真砂」という言葉がありますが、まさにわたしたちは広大な浜辺の一粒の砂です。その一粒が、別のもう一粒と縁によって出会ったのです。数万、数十万、数百万人を超える結婚可能な異性の中からたった1人と結ばれるとは!
 わたしは、いつも「結婚というのは、なんという驚異だろうか」と思います。
 古代ギリシャの哲学者アリストテレスは「哲学は驚きから始まる」という言葉を残していますが、結婚ほど驚くべき出来事はありません。わたしは、結婚の不思議さ、素晴らしさについて、『結魂論~なぜ人は結婚するのか』(成甲書房)、『むすびびと~こころの仕事』(三五館)の2冊に書きました。

 『結魂論~なぜ人は結婚するのか』の最後には「宇宙の中心で、結婚をさけぶ――あとがきに代えて」という一文があります。
 そして、その最後には以下のように書かれています。

「私たちは、20世紀の半ばすぎに銀河系太陽系第三惑星の地球上の日本列島に、ミミズでもオケラでもアメンボでもなく人間として生まれてきて、出会い、結婚した。無限なる『時間』の縦糸と、無限なる『空間』の横糸が織りなす『縁』という摩訶不思議なタペストリーの上で、二人は出会って結婚した。この世に奇跡があるなら、これ以上の奇跡があるでしょうか。もちろん、私たち夫婦だけの話ではない。すべての結婚は奇跡なのです。
今の地球上に限定してみても、60億人のなかの1人と、別のもう1人が、はじめから2人しかいなかったかのように結ばれること。
この奇跡をそのまま驚き、素直に喜び、心から感謝する。そして奇跡を獲得し宇宙の中心に立つ2人は、手をつないでさけぶのです。
『私たちは出会った!』そして、『私たちは結婚した!』と」

 死にゆく人間が残していく配偶者に新しいパートナーを探すというストーリーは、2003年のカナダ・スペイン合作映画「死ぬまでにしたい10のこと」に登場することで有名です。修活映画の歴史に残る名作ですね。

 「死ぬまでにしたい10のこと」は、スペイン出身のイザベル・コイシェが監督・脚本を担当した作品で、ナンシー・キンケイドの短編を原作とします。舞台はカナダのバンクーバーで、幼い2人の娘と失業中の夫と共に暮らすアンは、ある日腹痛のために病院に運ばれ、検査を受けます。その結果、癌であることが分かり、23歳にして余命2ヶ月の宣告を受けるのでした。その事実を誰にも告げないことを決めたアンは、「死ぬまでにしたい10のこと」をノートに書き出し、1つずつ実行してゆくというストーリーです。その中に、「夫の新しいパートナーを見つける」というものがありました。

 「ボクの妻と結婚してください。」には、最新の結婚式場や婚活パーティーの様子なども描かれていて、仕事の上でも興味深く観ることができました。そして、ある冠婚葬祭ビジネスにおけるアイデアを得ました。企業秘密なのでここには書きませんが、ビジネスのアイデアまで提供してくれるのですから、映画鑑賞はやめられません。今日、家を出るときに「いつも映画ばかり観て・・・」と文句を言ったわが妻は何もわかっちゃいませんね。(苦笑)

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「あの人らしかったね」といわれる自分なりのお別れ』(扶桑社)


 最後に、この映画には非常に残念な点がありました。
 それは、修治の葬儀のシーンが登場しなかったことです。
 これだけは、きちんと描いてほしかったですね。
 企画屋としての「生」を貫いた彼の最大の「自己実現」であり、最高の「自己表現」の場は、彼自身の葬儀であったはずですから。修治のような企画魂を持っていると自負しているわたしは、「あの人らしかったね」といわれる自分なりのお別れをプランニングしたいと思っています。

  • 販売元:東宝
  • 発売日:2017/05/17
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