TOHOシネマズシャンテで映画「手紙は憶えている」を鑑賞。
 東京に来ているときは、なるべく東京でしかできない体験をするように心がけています。この映画も、北九州では観れない作品です。

 ヤフー映画の「解説」には以下のように書かれています。

「『スウィート ヒアアフター』などのアトム・エゴヤンが監督を務め、ナチスに家族を奪われた男の復讐(ふくしゅう)劇に迫るサスペンス。戦時中、互いに収容所から何とか生き延びた友人との約束で、かつての虐殺者を捜して敵討ちの旅に出る老人の姿を描く。主人公を『人生はビギナーズ』などの名優クリストファー・プラマーが熱演。さまざまな試練に直面しながらも、懸命に家族の無念を晴らそうとする男の悲壮な姿に心打たれる」

 また、ヤフー映画の「あらすじ」には以下のように書かれています。

「90歳のゼヴ(クリストファー・プラマー)は、妻を亡くしたことさえ忘れるほど物忘れが進んでいた。ある日、彼に友人マックス(マーティン・ランドー)が1通の手紙を託し、家族を殺したドイツ人兵士への復讐(ふくしゅう)を依頼する。自分と同じくアウシュビッツ収容所の生き残りで体が不自由な友人のために、ゼヴは単身でリベンジを果たそうとするが・・・・・・」

 この映画、久々にラストで度胆を抜かれました。見事なドンデン返しです。
 この映画についての前宣伝などは何も知らず、ただ「認知症のユダヤ人の老人がナチに復讐をする話」ぐらいにしか思っていなかったので、本当に驚きました。これほどのラストシーンの衝撃は、「猿の惑星」、「シックスセンス」、「アザーズ」以来でしょうか。それだけに、非常に重苦しいテーマではありましたが、ある意味で映画の面白さを堪能することができました。

 この日のTOHOシネマズシャンテは満席で、ほとんどが高齢者でした。
 この映画館、単館系の作品をよく上映するのですが、なんとなくナチス関連の映画が多いような気がします。ブログ「ヒトラー暗殺、13分の誤算」もここで上映されました。もちろんハリウッドがユダヤ資本ということもあるでしょうが、今でもナチスはアメリカ人の関心を集めるテーマなのでしょう。戦後70年以上が経過した今でも、その関心の高さには驚くばかりです。

 日本でも最近、ナチスに関連するニュースが世を騒がせました。
 人気アイドルグループ「欅坂46」がコンサートで着た衣装が、ナチス・ドイツの軍服に似ているとして米国のユダヤ系団体が抗議したのです。その結果、所属レコード会社のソニー・ミュージックエンタテインメントとプロデューサーの秋元康氏は謝罪コメントを発表しました。

 わたしも知らなかったのですが、ドイツ刑法には「ドイツ国内では、ナチスを想起させる旗やバッジ、マークを使用することやナチスのスローガンを掲げたりその敬礼をした者は最大3年、または罰金の実刑が科される。」という条文があるそうです。20世紀最大の悪役とされたヒトラーの亡霊はまだ彷徨っているのですね。

 この映画を観て、まず感じるのは認知症の現実です。自分の名前や配偶者の死も忘れてしまうゼヴの姿を見て、「自分もああなるのではないか」と不安に思った観客は多いでしょう。配偶者の死というのはこの世で最も辛い出来事の1つですから、それを忘れるのは「恵み」のようにも思えます。でも、認知症の老人が銃を持って人を殺そうと行動することを想像すれば、怖いですね。この映画には、そんな恐怖が描かれています。簡単に認知症の老人に銃を売ってしまうアメリカの「銃社会」の現実にも戦慄します。

 最近、ある人から「なぜ、ガンの特効薬が発明されないのか」という話を聞いて、考えさせられました。じつは、現在の医学ではガンの特効薬を開発することも不可能ではないそうです。日本では2人に1人はガンで亡くなりますが、もしガンが完治されるとしたら、寿命はさらに延ばされ、日本は認知症の老人だらけになってしまうからだというのです。そうすると、社会が立ち行かなくなってしまいます。「ガンの特効薬が発明されない本当の理由はここにある」というのですが、与太話やトンデモ話のようで笑えないのは、「世の中が認知症の老人だらけになる」というイメージの怖さからです。
 怖いといえば、ゼヴがマックスの言いなりになって、復讐のために人を殺しに行くこと自体が恐怖でした。

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「記憶と人生」について語り合った『永遠の知的生活


 記憶がなくなれば、人は自分ではなくなるのです。これはもはや「実存的恐怖」であると思います。『永遠の知的生活』(実業之日本社)で対談させていただいた上智大学名誉教授の渡部昇一先生は「記憶こそ人生」と述べられました。対談で、わたしは拙著『思い出ノート』(現代書林)をお見せしながら、人生を記録し、さらにそれを暗記することを提案しました。

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自分の人生を記憶する『思い出ノート

 
 渡部先生は、非常に興味深そうに聴いて下さいました。最後は、先生が記憶されている軍歌「戦友」をなんと14番まで歌っていただきました。わたしは、直立不動で拝聴しました。やはり「記憶しよう」という強い意志があれば、ある程度、認知症の進行は防げるように思えてなりません。わたしは「人生を修める」ためには、つねに学び続ける姿勢、すなわち「永遠の知的生活」が必要ではないかと思います。もうすぐ、わたしは『思い出ノート』 をさらに進化させた『人生の修活ノート』(現代書林)を上梓する予定です。究極の「自分史」にして「エンディングノート」になるものと確信しています。

  • 販売元:ポニーキャニオン
  • 発売日:2017/05/03
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