No.0274


 この日公開された新作映画を観ました。
 「キングコング:髑髏島の巨神」です。テレビCMでの「怪獣がいっぱいでビビりました」というGACKTのコメントを聞いて、観たくなりました。

 ヤフー映画の「解説」には、以下のように書かれています。

「キングコングを神話上の謎の島に君臨する巨大な神として描いたアドベンチャー大作。島に潜入した調査隊が正体不明の巨大生物と遭遇し、壮絶な死闘を繰り広げる。監督は、主にテレビシリーズに携ってきたジョーダン・ヴォート=ロバーツ。調査遠征隊のリーダーを『マイティ・ソー』シリーズなどのトム・ヒドルストンが演じるほか、『ルーム』などのブリー・ラーソン、サミュエル・L・ジャクソンらが共演。巨大な体でリアルな造形のキングコングの迫力に圧倒される」

 また、ヤフー映画の「あらすじ」には、以下のように書かれています。

「コンラッド(トム・ヒドルストン)率いる調査遠征隊が、未知の生物を探すべく、神話上の存在とされてきた謎の島に潜入する。しかし、その島は人間が足を踏み入れるべきではない"髑髏島"だった。島には骸骨が散乱しており、さらに岩壁には巨大な手の形をした血の跡を目撃する。そして彼らの前に、神なる存在であるキングコングが出現。人間は、凶暴なキングコングに立ち向かうすべがなく・・・・・・」

 怪獣映画の名作のリメイクということで、ブログ「シン・ゴジラ」で紹介した映画を観たときのように深読みしたくなりますが、この「キングコング:髑髏島の巨神」は小難しいことを考えなくても楽しめる、すべての男の子のための痛快怪獣映画でした。髑髏島も怪奇幻想ムードに満ちていて、「秘境ロマン」としても完成度が高いと思いました。理屈抜きに面白かったです!

 なによりも、主役のキングコング以外にもたくさん怪獣が登場するところが「お得感」があって、たまりません。これでもかと次々に怪獣が出現するところは、コナン・ドイル原作の「ロスト・ワールド」や「ジュラシック・パーク」シリーズを連想してしまいます。これまでの「キングコング」映画では、島の原住民による儀式によって巨神であるキングコングが登場するのですが、「キングコング:髑髏島の巨神」ではもったいぶらずに、さっさとスクリーンに姿を現わしてくれます。

 さて、この映画には何度も「神話」という言葉が出てきました。
 キングキングが棲息する髑髏島とは神話的な世界であるというのです。
 『キング・コング入門』神武団四郎他著(洋泉社)の第1章「『キング・コング』(33年)Vol.1」では、映画評論家の高橋ヨシキ氏が述べています。

「キング・コングは映画史上最も愛された、最も重要で、最もアイコニックなモンスターである。このことは、コングがキャラクターとして完全である、というおそるべき事実と密接に結びついている。 コングが人々の心をとらえて離さない理由のひとつは、『キング・コング』の物語が神話として機能しており、コングのうちに我々が自分たちの見たいものを見出すからだ。コングは人間存在の写し鏡であり、またすべてを内包する神話的なキャラクターであるがゆえに、時代や場所を問わず、その物語に触れた人々を圧倒し魅了する」

 わたしも、キングコング映画とはまさに神話そのものだと思っています。
 これはわが持論なのですが、人間は神話を必要とする動物です。神話とは宇宙の中に人間を位置づけることであり、世界中の民族や国家は自らのアイデンティティーを確立するために神話を持っています。

 『死を乗り越える映画ガイド』(現代書林)にも書きましたが、一般に、アメリカ合衆国には神話が存在しないといわれます。建国200年あまりで巨大化した神話なき国・アメリカは、さまざまな人種からなる他民族国家であり、統一国家としてのアイデンティー獲得のためにも、どうしても神話の代用品が必要でした。それが、映画です。映画はもともと19世紀末にフランスのリュミエール兄弟が発明しましたが、他のどこよりもアメリカにおいて映画はメディアとして、また産業として飛躍的に発展しました。映画とは、神話なき国の神話の代用品だったのです。

 それは、グリフィスの「國民の創生」や「イントレランス」といった映画創生期の大作に露骨に現れていますが、「風と共に去りぬ」にしろ「駅馬車」にしろ「ゴッドファーザー」にしろ、すべてはアメリカ神話の断片であると言えます。それは過去のみならず、「2001年宇宙の旅」「ブレードランナー」「マトリックス」のように未来の神話までをも描き出します。

 また、フランケンシュタインのモンスターやドラキュラ、スーパーマン、バッドマン、スパイダーマンなどは、すべて原作小説やコミックに登場するキャラクターにすぎませんでしたが、映画によって神話的存在となりました。
 そして、神話としてのアメリカ映画における最大の神こそはキングコングであったのではないでしょうか。その神話ははるかスコットランドにまで波及し、ネス湖の怪獣、すなわちネッシーの神話まで生み出しました。

 1933年に公開された「キングコング」では、強大な猿であるコングとティラノサウルスのような恐竜が闘い合うシーンが全世界を震撼させました。映画の公開直後、ネス湖に恐竜の生き残りがいるのではないかという噂が広まりました。この噂に貢献したのが、他ならぬ映画「キングコング」でした。
 「この世界のどこかには、古代の生き物や未知の怪物が棲息しているかもしれない」というアイデアを大衆に提供したのです。
 ブログ『未確認動物UMAを科学する』で紹介した本では、「キングコング」が公開された当時、大恐慌とナチス台頭の時期であり、大衆は夢のあるミステリーを待ち望んでいたと述べられています。そんな大衆にとって、映画「キングコング」はネス湖の怪獣の直接の引き金になったというのです。

 「キングコング:髑髏島の巨神」は、「モンスター・バトル」という1933年の「キングコング」の原点に戻りました。しかし、1933年版に始まる大いなる伝統からは外れています。それは、南の島からニューヨークに連れてこられた巨大なコングがエンパイア・ステート・ビルに登るという映画史に残るクライマックス・シーンです。ところが、「キングコング:髑髏島の巨神」では、コングはニューヨークに行くどころか髑髏島から一歩も外に出ていません。

 「キングコング:髑髏島の巨神」は満足の高いエンターテイメントでしたが、あえて違和感を覚えた点をあげると、ベトナム戦争終結時という時代背景でした。第二次世界大戦とベトナム戦争という2つの戦争の終わりを描くことによって、世界最強の米軍を強調したかったのかもしれませんが、これは現代でも良かったのではないかと思いました。トルーマン大統領やニクソン大統領なども登場しますが、やはりトランプ大統領が見たかったです。そして、ニューヨークにやってきたコングがエンパイア・ステート・ビルディングではなく、トランプ・タワーに登る場面も見たかったですね。

 「キングコング:髑髏島の巨神」は続編が予定されています。2020年には、キングコングはゴジラと対決するそうです。キングコングが米国最大の神的存在なら、ゴジラは日本最大の神的存在です。でも、これからキングコングと戦うゴジラは「シン・ゴジラ」に登場した放射能怪獣ではなく、ブログ「GODZILLA ゴジラ」で紹介したハリウッド産のゴジラです。

 2014年7月25日に公開された「GODZILLA ゴジラ」は、二度目となるアメリカ版ゴジラ映画です。当時、3・11のトラウマで日本では都市が破壊される映画は作りにくいとされていましたが、「GODZILLA ゴジラ」はハリウッドが総力を挙げて作った作品でした。核兵器の脅威が怪獣という異形となって人間の世界を脅かす「ゴジラ」の本質に最新技術で迫りました。

 この映画でのゴジラは「自然のバランスを保つために出現した」存在、まるで「エコロジーのシンボル」のような存在になっています。その意味では、「キングコング:髑髏島の巨神」の出てくるキングコングも「自然のメタファー」のような存在として描かれています。一方で、「GODZILLA ゴジラ」には放射能を食料として生きる「MUTO(ムトー)」という怪獣が登場します。この映画では、放射能を必要とするムトーの雄・雌2匹と、自然のバランスを保とうとするゴジラが戦うという構図になっているのです。

 このムトー、じつに気持ちの悪いデザインです。
 強いて表現するならば、「デビルマン」に出てくるデーモンのような不快指数の高い生き物です。そして、「キングコング:髑髏島の巨神」に出てくるスカル・クローラーもデーモンそのものような醜悪な造形でした。スカル・クローラーは、怪物だらけの髑髏島でも最悪の怪物です。地底に潜った恐竜が独自に進化し、巨大なものになると全長29メートルにまで育つといいます。コングの両親を殺した極悪非道な化物という設定になっています。しかし、こんな気持ちの悪いデザインをよく思いついたものです。わたしは、SF映画「エイリアン」で有名なH・R・ギーガーの芸術を連想してしまいました。

 それにしても、2020年版「Godzilla vs. Kong」が公開されるのが今から楽しみです。1962年8月11日に公開された日本映画「キングコング対ゴジラ」は、ゴジラシリーズの第3作で、アメリカRKO社とのライセンス提携作品でした。製作、配給は東宝で、東宝創立30周年記念作品でした。

 東宝映画「キングコング対ゴジラ」では、アメリカが産んだ怪獣王キングコングをゲストに迎え、ゴジラが7年ぶりに復活しました。「怪獣同士の対決」という日本の怪獣映画の流れを決定づけた作品であり、初回興行時の観客動員数は、じつに1120万人を記録しています。これは、ゴジラシリーズ中では歴代最高です。ハリウッド版「Godzilla vs. Kong」では、醜悪怪物の共演としてムトーとスカル・クローラーも登場させてほしいものです。

 キングコング映画といえば、1976年にジョン・ギラーミン監督がリメイクしています。この映画、キングコングと他の怪獣とのバトルが少なくて物足りませんでした。しかし、主演女優のジェシカ・ラングが非常にセクシーでした。当時わたしは中学1年生だったと思いますが、スクリーンの中のジェシカ・ラングの妖艶な姿に心をときめかせた思い出があります。

 その意味で、「キングコング:髑髏島の巨神」の主演女優にはちょっと不満が残りました。戦場写真家という設定なのですが、ジェシカ・ラングのような美女ではないのです。でも、だんだん物語が進行していくにつれて、彼女は汗まみれ、泥まみれになっていきます。すると、最初は美女には見えなかった彼女がだんだん美しく見えてくるから不思議なものですね。キングコングと絡むシーンなどは、大変セクシーでした。セクシーな美女といえば、「キングコング:髑髏島の巨神」の上映前に「ワンダーウーマン」の予告編が流れ、主演のガル・ガドットが最高に魅力的でした。これは観なければ!