日本映画「ちょっと今から仕事やめてくる」を観ました。
 わたしは会社を経営していますが、「観て良かった」と思いました。

 ヤフー映画の「解説」には以下のように書かれています。

「第21回電撃小説大賞メディアワークス文庫賞を受賞した北川恵海の小説を、『イン・ザ・ヒーロー』などの福士蒼汰を主演に迎えて映画化。ノルマが厳しい企業に勤め心身共に疲弊した青年が、幼なじみを名乗る人物との交流を通じ生き方を模索するさまを描く。メガホンを取るのは、『八日目の蝉』や『ソロモンの偽証』シリーズなどの成島出。福士演じる謎の男に救われる青年に、『夏美のホタル』などの工藤阿須加がふんするほか、黒木華、小池栄子、吉田鋼太郎らが共演」

 また、ヤフー映画の「あらすじ」には以下のように書かれています。

「激務により心も体も疲れ果ててしまった青山隆(工藤阿須加)は、意識を失い電車にはねられそうになったところをヤマモト(福士蒼汰)と名乗る男に助けられる。幼なじみだという彼に心当たりのない隆だが、ヤマモトに出会ってから仕事は順調にいき明るさも戻ってきた。ある日隆は、ヤマモトが3年前に自殺していたことを知り・・・・・・」

 この映画、当初はあまり観たいとは思っていませんでした。
 しかし、ネットでの評価が非常に高いこと、予告編で死者が生者を救うジェントル・ゴースト・ストーリーであると推測されたこと、そして福士蒼汰が主演であることから観たいと思いました。ブログ「無限の住人」で紹介した映画に出演していた福士蒼汰には、主演の木村拓哉に負けないほどの俳優としてのオーラが漂っていました。

 「ちょっと今から仕事やめてくる」の予告編を観て、わたしは「人生に疲れ果てた男性が自らの命を絶とうとするところを、かつて同じ理由で自死した幽霊が助けるという泣ける話」とばかり思っていました。
 ところが、物語は意外な方向に進んで行きます。
 ネタバレになるので詳しくは書きませんが、単なるジェントル・ゴースト・ストーリーを超えて、「ひとひねりしてあるな」と思いました。いつもいつも優しい幽霊が登場する話ばかりでは、マンネリになりますからね。

 主人公の青山隆(工藤阿須加)が勤務する会社は、いわゆる「ブラック企業」です。「ブラック企業ランキング」というサイトには、ブラック企業がどういうものかという定義が紹介されています。まず、「違法行為や離職者が多い」として、「ブラック企業の定義としては、暴力団などの反社会的団体と関わりを持つなど、違法行為を行っていることが挙げられます。狭義では、若手を大量に採用し、過重労働や違法労働をさせて離職者が後を絶たない会社を指すのでしょう。おそらく最近では、後者の意味で使うことの方が多いと考えられます。」と書かれています。

 また、「違法なまでの過剰労働」として、「年間を通して休日が極端に少ない、サービス残業が常態化しているなども、定義といえるでしょう。職業や業種によっては毎年休日の日数に変動があるなど、仕方のない面もあります。しかし、労働時間の多さや給料面に関して、法律に違反もしくは抵触するような場合は間違いなくブラック企業でしょう。仕事がキツイだけではブラック企業にならない」と書かれています。

 現在では「ブラック企業」という名前ばかりが先行して、正確なその意味を知らずに「ここはブラック企業だ」と決め付ける人がいます。しかし、同サイトによれば、それは違います。ブラック企業とされる要因は「法律違反」と「労働環境の過酷さ」の両方を伴っているのが条件だといいます。ただ単に仕事が辛いというだけでは、ブラック企業とは言えないのです。同サイトには、「定義こそ曖昧とされていますが、常識的に考えておかしいと思う場合は、ブラック企業といえるでしょう」とも書かれています。

 隆が務める会社は広告関係のようですが、つい最近も広告最大手の電通で、新入社員が過剰労働による自死を遂げて大きな社会問題となりました。隆の会社には、「営業十則」というものがあり、毎朝、全員でそれを唱和します。これも電通の「鬼十則」をモデルとしていることは明らかです。でも、わたしの小倉高校の先輩で、「広告の鬼」と呼ばれた吉田秀雄氏が作った「鬼十則」には現在でも仕事に活かせる部分が多いですが、この映画の「営業十則」はムチャクチャです。なにしろ、「上司は神だ」とか「心は捨てろ。折れる心は邪魔になる」とか「有給はいらない。体がなまる」などのメッセージが並んでいるのです。

 このムチャクチャな「営業十則」を唱和させる悪魔のような部長を吉田鋼太郎が怪演していますが、もう、「世の中に、これ以上に嫌な奴はいない」と思わせるような最凶キャラです。この部長、部下を叩いたり蹴ったりしているのですが、これはもうパワハラなどといったレベルを通り越して、完全に傷害罪です。コンプライアンスとかなんとかいう以前に犯罪行為なわけですから、隆は警察に通報しても良かったと思います。でも、彼にはそれができません。会社を辞めることもできません。なぜなら、彼は「正社員でいたい」とか「東京の会社で働きたい」といった執着があるからです。そんなものに固執して命を捨てることはありません。

 いま、くだんの電通の不幸な出来事もあり、世間はブラック企業に対して厳しい目を向けています。好業績を誇るコンビニや衣料チェーンや家電チェーンなどにも「ブラック企業」と呼ばれる会社は多いです。
 でも、わたしは一介の経営者として思うのです。世の中、正しいことをしなければ損をする、と。それから、ブラック企業の経営者は商売人のようでいて、本当は商売が下手なのではないか、と。


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龍馬とカエサル』(三五館)


 拙著『龍馬とカエサル』にも書きましたが、わたしは、マネジメントの核心とは、いかに人生を心ゆたかに過ごすかということと密接に関わっていると思っています。そして、それにはいかに仕事を愉しむかが大事なポイントになります。あなたが1日何時間ぐらい職場にいるか、人生の時間のうちでどれくらい仕事に費やしているかを考えれば、仕事を愉しまなかったら、これは明らかに不幸ですよね。

 よく会社や仕事に対してグチばかり言う人がいますが、こういう人は例外なく仕事ができません。なぜなら、「成功した人間」にグチが多い人は1人としていないからです。グチが多いのは、成功していない、評価されていないことへの不満が表われているだけなのです。堀場製作所の堀場雅夫氏は、「グチをこぼすような人間は絶対に評価されない」と言います。堀場氏によれば、そのような人はグチをこぼすことが「趣味」になってしまっているというのです。

 上司に見る目がないとグチり、給料が安いとグチり、夏の暑さをグチり、冬の寒さをグチる。現実を甘受する謙虚さもなければ、建設的な反省もない。これでは仕事ができるわけがないというわけです。
 たしかにストレスの影響は大きいでしょう。
 では、なぜストレスがたまるのでしょうか。
 ストレス解消法という対症療法ではなく、ストレスがたまる根本原因を考える必要があります。そのヒントは、人間は遊びではストレスはたまらないということにあります。ゴルフにしろ、釣りにしろ、旅行にしろ、遊びでやっていることにストレスは無縁です。自分の意思で、自分が好きでやっているからです。

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世界一わかりやすい「論語」の授業』(PHP文庫)


 ならば、仕事も好きになれば、ストレスはたまらないことになります。
 そして、『論語』に「之(これ)を知る者は之を好む者に如かず。之を好む者は之を楽しむ者に如かず」とあるように、仕事を愉しむことができれば、ストレスがたまらないどころか、愉しいから仕事のレベルもアップして、人生そのものがバラ色になるのである。こんなうまい話を逃す手はないではありません。堀場氏は、「人間死ぬときにダイヤモンドやお札をたくさん棺桶に入れていっても、何もいいことないやないか」と語り、「おもしろおかしく」をテーマにしておられます。ソニーの井深大氏は「愉快なる工場」をめざすと言いました。ともに日本が戦争に負けて、食べるものもない時代に起こした会社です。人の心も荒んでいたはずですが、そこには爽快なポジティブ・シンキングがありました。

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孔子とドラッカー新装版』(三五館)


 拙著『孔子とドラッカー新装版』にも書きましたが、人は必ず「心」で動きます。日本では、まだまだ「人生意気に感ずるビジネスマン」が多いとされます。仕事と同時に「あの人の下で仕事をしてみたい」と思うビジネスマンが多く存在するのです。そして、そう思わせるのは、やはり経営者や上司の人徳であり、人望であり、人間的魅力です。会社にしろ、学校にしろ、病院にしろ、NPOにしろ、すべての組織とは、結局、人間の集まりにほかなりません。人を動かすことが、経営の本質なのです。

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人間関係を良くする17の魔法』(致知出版社)


 さて、この映画に登場する会社の朝礼では、地獄のような「営業十則」の唱和の他に、体操もありました。いわば、体操を「ブラック企業」のシンボルのように映画いているのですが、これには異を唱えたいです。
 というのも、拙著『人間関係を良くする17の魔法』にも書いたように、体操には職場の人間関係を良くする大きな力があるからです。
 わたしは、毎朝、会社に出ると体を動かします。具体的には、1日おきに朝礼でラジオ体操と気功を交互にやるのです。それぞれ、だいたい5分ちょっとですが、真剣にやると、冬でも汗ばみます。

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同じ動きをすることで、全員の心が「同期」する


 社員と一緒に全身を使って同じ動きをしていると、なんだか心まで同じになっていくようです。まさに「同期」という魔法です。
 でも、それには上から下まで全員が参加する必要があります。
 会長も社長も役員も、そして新入社員も、みんなが同じ体操をして、同じ動きをしなければなりません。この映画に登場する会社では、部長だけは体操に参加せず、「もっと声を出せ!」とか「全力でやれ!」などと言うだけでした。これではダメです。礼をするにしても、部下だけでなく、上司も入った「一同礼」でないと意味がありません。

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最短で一流のビジネスマンになる! ドラッカー思考』(フォレスト出版)


 ブラック企業では、上司も部下も「仕事」というものの本質がわかっていません。拙著『最短で一流のビジネスマンになる! ドラッカー思考』にも書きましたが、人は仕事を持って社会と接します。そして、その仕事によって自分の存在を認めてもらう。さらには、仕事によって退屈にならずにすみ、人格も能力も鍛えられる。達成感や満足感も仕事が与えてくれるのです。会社が仕事の場であるなら、それは自己実現の場でもあります。

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この仕事に最高の誇りを!


 そして、仕事には貴賎はありません。もし貴賎があるとすれば、その仕事に従事するその人の心にあるのです。大事なことは、仕事というものは自分のためだけではなく、仲間のため、家族のため、そして社会のために役立つものでなければならないということです。わが社は「人間尊重」を大ミッションとし、「冠婚葬祭を通じて良い人間関係づくりのお手伝いをする」を小ミッションとしています。社長であるわたしをはじめ、多くの社員はこの仕事に大いなるプライドを抱いています。

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大盛り上がりの営業総合朝礼


 ブログ「営業推進部総合朝礼」で紹介したように、今月1日にサンレー北九州の営業の朝礼を行いました。わたしの社長訓話の後は、各営業所長およびブロック長による決意表明が行われました。北九州だけで3ブロック・13営業所あるのですが、それぞれに趣向を凝らした決意表明でした。営業所長の音頭に合わせて、営業員さんたちが声を揃えたり、拳を突き出したり、「完達」などと書かれた団扇を振ったりしました。なんと、太鼓を持ち出して所員を鼓舞する営業所長もいました。

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社長として講評を述べました


 すべての決意表明が終わった後、わたしは「素晴らしい決意表明でした。なによりも明るいのがいい。営業に限らず、仕事というのは『嫌だ』『面倒臭い』『やりたくない』などとネガティブに考えると、どんどん悪い方向に転がるものですが、何事も陽にとらえて、前向きに明るくしていれば必ず好転します。みなさんは明るくて素晴らしい! 必ず、やれます!」と講評を述べました。

 そう、仕事は楽しくやればやるほど、うまく行くのです!
 今月13日には、沖縄の那覇で全国営業責任者会議を開催します。
 営業のみなさんへの日頃の慰労の意味と、沖縄の太陽の下で少しでもリラックスして会議をしてほしいという願いを込めています。
 もちろん、わたしも参加します。会議の後は、懇親会でみんなと泡盛を飲んで、カチャーシーを踊ろうと思います。

 いずれにしても、ブラック企業は多くの人々を不幸にします。
 社員を不幸にし、その家族を不幸にし、最後は顧客をも不幸にします。
 すべての経営者には、自社をブラックにしないことができます。
 そう、社長には会社のカラーを変える力があるのです。
 「ちょっと今から仕事やめてくる」には、多くの会社員が共感して泣いたそうですが、本当は経営者こそが観るべき映画なのだと思いました。

 しかしながら、この映画にはどうしても納得できないシーンがあります。
 それは、ある人物の葬儀の場面なのですが、残された人が悲しみのあまりにセレモニーホールの鏡を椅子で叩き割るのです。いくら死別の悲嘆に暮れていても、この行為はいただけません。この後に、葬儀を行う人々はどうするのですか。こんなアンモラルな行為を許しては、観客が影響を受けて、「ああ、愛する人を亡くした人は、何をしてもいいのだ」と思ってしまうかもしれません。監督も、悲しみの深さを表現するために、このようなシーンを撮影したのだとしたら猛省していただきたいですね。

 最後に、今日は「君の膵臓をたべたい」の予告編を観ました。
 膵臓病を患う高校生と同級生の"僕"の交流を、現在と過去の時間軸を交差させて描いた作品だとか。舞台として図書館が登場し、さらには「死」がテーマです。「本」と「死」といえば、これはもう、わたし向きの映画ですね。  ここ最近、ヒットを連発して名優への道を着実に歩んでいる小栗旬も出演していますし、ぜひ観たい作品です。今から公開が待ち遠しい!