No.0293


 16日、小倉祇園の太鼓競演大会に沸く北九州は猛暑でした。
外はあまりにも暑いので、わたしはシネコンに飛び込みました。
ここのところ、ずっと日本映画ばかり観てきましたが、久々にハリウッド映画の新作を観ました。SFホラー映画の「ライフ」です。涼しくなりました。

 ヤフー映画の「解説」には以下のように書かれています。

「『デンジャラス・ラン』などのダニエル・エスピノーサがメガホンを取ったSFスリラー。国際宇宙ステーションを舞台に、火星で発見された生命体の脅威にさらされた宇宙飛行士たちの運命を追う。『ナイトクローラー』などのジェイク・ギレンホール、エスピノーサ監督作『デンジャラス・ラン』にも出演したライアン・レイノルズ、『ミッション:インポッシブル/ローグ・ネイション』などのレベッカ・ファーガソンらが出演。宇宙船内での手に汗握る展開に息をのむ」

 また、ヤフー映画の「あらすじ」には以下のように書かれています。

「世界各国から6人の宇宙飛行士が国際宇宙ステーションに集結し、火星で採取された地球外生命体の細胞を極秘調査することに。まさに神秘としかいいようのない地球外生命体の生態に驚がくする彼らだったが、細胞は次第に進化と成長を遂げ高い知能を誇るようになる。やがて地球外生命体に翻弄され、宇宙飛行士たちの関係が揺らぎ始め、ついには命を落とす者も出る。助けを呼べない宇宙で追い詰められた彼らは・・・・・・」

 「ライフ」を観ながら、わたしは過去のさまざまなSF映画を連想していました。まず、ブログ「ゼロ・グラビティ」で紹介した映画を思い出しました。酸素のない宇宙空間が「死」の世界であること、その中で必死の作業をする人間の孤独が両作品で描かれています。また、ブログ「オデッセイ」で紹介した映画のように火星と地球人類の関わりを描いた物語でもあります。さらには、ネタバレになるので詳しくは書けませんが、「アルマゲドン」のラストを飾ったような自己犠牲のシーンも出てきます。

 この映画には、人類が初めて遭遇する地球外生命体が登場します。 その生命体は火星で発見されたのですが、アメリカの小学生によって「カルビン」と名付けられます。国際宇宙ステーションのクルーたちは、最初は細胞の状態だったカルビンが、次第に巨大化・凶暴化していく姿に戦慄し、生命を失う脅威を感じるのでした。

 ブログ「メッセージ」で紹介した映画では、地球外生命体との平和なコミュニケーションが描かれましたが、一転して「ライフ」では、ひたすら人類に襲いかかる恐怖のモンスターとして「カルビン」を描きます。そう、この映画は基本的に「エイリアン」のアップデート版と呼んでも良いSFホラーなのです。

 次第に進化していくカルビンの姿は、ブログ「シン・ゴジラ」で紹介した映画に登場するゴジラを連想させました。自衛隊の攻撃にもまったくダメージを受けない強靭さは、まさに「完全なる生物」であり、神の化身としての「神(シン)ゴジラ」でした。わたしは、そのゴジラをとにかく駆除しようとする人間側の理論にも違和感を覚えました。

 拙著『慈経 自由訳』(三五館)には、ブッダによる「慈しみ」の心が述べられています。「ブッダの慈しみは、愛をも超える」と言った人がいましたが、仏教における「慈」の心は人間のみならず、あらゆる生きとし生けるものへと注がれます。「どうして、ゴジラと人間は共生できないのか」と思いましたが、「ライフ」の場合は「カルビンと共生できないか」などとはまったく思いませんでしたね。あれは、もう駆除するしかありません!

 それにしても、「ライフ」すなわち「生命」とは何でしょうか。 一般的に広く認められている「生命の定義」は、以下の3つで
1.外界と自己を隔てる膜を有している
2.自己と遺伝的に類似した子孫を残せる(=自己複製能力を有する) 3.代謝による生命維持機能を有する
以上の3点は、ほぼ異論なく認められる定義です。

 生命には情報が込められています。そして、DNAという細長い分子が生命の情報を伝えています。親から子に生命の情報が伝えられることを「遺伝」と呼びます。DNAについては、情報をダビングできるカセットテープのようなものをイメージすると、わかりやすいでしょう。
 約40億年前の地球。海の中には熱湯が噴出しており、いろいろな原子がくっついて分子になりました。その中から偶然に遺伝情報を担う分子が出現したとされています。それは、短いテープのようなものだったでしょう。しかし、このテープはある性質をもっていました。自ら長くなることができたのです。また、そのテープに記録されている情報を新しいテープにダビングすることもできました。その結果、自分と同じ情報をもったテープを増やすことができたのです。

 ひとたび出現した生命体は、本能によって生き延びようとします。 「ライフ」のカルビンも、ただただ生き延びようとしただけで、別に「人類を滅ぼしてやろう」などの悪意は存在しません。それが人類の存続を脅かすのであれば、人類はカルビンと戦い、これを駆除するしかありません。
 ラストシーンはショッキングでしたが、ある意味で、これから新しい物語が始まることを示唆しています。「ライフ」は、大先達の「エイリアン」のようにシリーズ化されるのでしょうか。

 その「エイリアン」シリーズですが、原点となる物語が新作「エイリアン:コヴェナント」として9月に日本公開されます。巨匠リドリー・スコット監督がメガホンを取った話題作ですが、植民地を求めて宇宙船コヴェナント号で旅立ったクルーたちが、ある惑星で遭遇した出来事を描写します。この映画にはアンドロイドも登場するそうですが、アンドロイドといえば、SF映画史上に残る名作「ブレードランナー」が有名です。

 なにしろ、「ブレードランナー」の原作は、SF小説の巨匠であるフィリップ・K・ディックの『アンドロイドは電気羊の夢を見るか』でした。それを映画化した伝説の名作「ブレードランナー」も、新作「ブレードランナー 2049」としてアップデートされました。前作の主人公を演じたハリソン・フォードが再び出演し、ライアン・ゴズリングが新人のブレードランナーを演じます。監督は「メッセージ」のドゥニ・ヴィルヌーヴです。10月27日公開の予定だそうですが、「エイリアン:コヴェナント」といい、「ブレードランナー 2049」といい、SF映画に目のないわたしは、もう楽しみで仕方がありません!