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 27日の日曜日、映画「ワンダーウーマン」を観ました。パティ・ジェンキンス監督の作品ですが、オープニング興行収入で首位となり、初週末の興行収入は女性監督作品としての史上最高記録となったそうです。女性の監督が、最強の女性が活躍する映画を撮るというのが粋ですね!

 ヤフー映画の「解説」には以下のように書かれています。

 「『バットマン vs スーパーマン ジャスティスの誕生』にも登場した人気キャラクターで、美女戦士ワンダーウーマンを主人公にしたアクション。女性だけの一族出身で男性を見たこともないプリンセスがたどる運命を描く。ワンダーウーマンを演じるのは『ワイルド・スピード』シリーズなどのガル・ガドット。『スター・トレック』シリーズなどのクリス・パインらが共演し、監督は『モンスター』などのパティ・ジェンキンスが務める。イスラエルでの兵役経験もあるガルの本格的なアクションに期待」

 また、ヤフー映画の「あらすじ」には以下のように書かれています。

 「人間社会から孤立した女性のみの一族のプリンセスとして生まれたワンダーウーマン(ガル・ガドット)は、自分が育ってきた世界以外の環境を知らず、さらに男性を見たこともなかった。ある日、彼女は浜辺に不時着したパイロットと遭遇。彼を救出したことをきっかけに、ワンダーウーマンは身分を隠して人間社会で生活していくことにする」

 じつは、この映画、公開前からすごく楽しみにしていました。 なぜなら、わたしはワンダーウーマンを演じたガル・ガドットの大ファンだからです。ブログ「バットマンvsスーパーマン ジャスティスの誕生」で紹介した映画で生まれて初めてワンダーウーマンの存在を知ったわたしですが、何よりもガドットの美しさに魅了されました。そして、ワンダーウーマンがわたしが最も好きなアメコミのキャラクターとなったのです。

 ガドットはブログ「世界で最も美しい顔」で紹介したアメリカの映画サイト「TC Candler」が発表する「世界で最も美しい顔100人」ランキングの2015年度版で2位に輝いた美貌の持ち主ですが、出身地はイスラエルです。2004年度のミス・イスラエルに選ばれています。まったく、「こんなベッピン見たことない!」と思ってしまうような美女ですね。

 そんな美しきガドットですが、2007年にテレビドラマ「Bubot」で女優デビュー、09年公開の「ワイルド・スピード MAX」で映画デビューしました。なお、同作の撮影中の08年9月にボーイフレンドと結婚。そして、16年の「バットマンvsスーパーマン~ジャスティスの誕生」のワンダーウーマン役でガドットは一気に注目されました。

 それほど、楽しみにしていた「ワンダーウーマン」ですが、実際に観てみると、画面は暗いし、ストーリーもなんだか中だるみ気味で、ちょっと眠くなってしまいました。例のセクシー・コスチューム姿のまま、第一次世界大戦でドイツ軍とガチで戦うという設定にも違和感を感じました。それでも、ガドットは最高に美しかったですが・・・。それと、彼女のアクションシーンの素晴らしさに目を奪われました。まるでカンフー映画のヒロインのような動きをしていましたね。

 イスラエルには兵役義務があるため、彼女が18歳の時から2年間、イスラエル国防軍で戦闘トレーナーの職務に就いていたと知って、納得しました。ガドットは、「バットマンvsスーパーマン~ジャスティスの誕生」で、ワンダーウーマンを演じるにあたりトレーニングしていた際、「軍でトレーニングをしていた頃をすごく思い出したわ」と、兵役時代の経験が役作りの役に立ったと語っています。

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死を乗り越える映画ガイド』(現代書林)

 この映画を観て、わたしは「やはり、アメリカは神話のない国なんだな」と思いました。拙著『死を乗り越える映画ガイド』(現代書林)にも書きましたが、神話とは宇宙の中における人間の位置づけを行うことであり、世界中の民族や国家は自らのアイデンティティーを確立するために神話を持っています。日本も、中国も、インドも、アフリカやアラブやヨーロッパの諸国も、みんな民族の記憶として、または国家のレゾン・デトール存在理由として、神話を大事にしているのです。ところが、神話という基幹文化を持っていない国が存在し、それはアメリカ合衆国という世界一の超大国なのです。


 建国200年あまりで巨大化した神話なき国・アメリカは、さまざまな人種からなる他民族国家であり、統一国家としてのアイデンティー獲得のためにも、どうしても神話の代用品が必要でした。それが、映画です。

 映画はもともと19世紀末にフランスのリュミエール兄弟が発明しましたが、他のどこよりもアメリカにおいて映画はメディアとして、また産業として飛躍的に発展しました。アメリカにおける映画とは、神話なき国の神話の代用品だったのです。それは、グリフィスの「國民の創生」や「イントレランス」といった映画創生期の大作に露骨に現れていますが、「風と共に去りぬ」にしろ「駅馬車」にしろ「ゴッドファーザー」にしろ、すべてはアメリカ神話の断片であると言えます。それは過去のみならず、「2001年宇宙の旅」「ブレードランナー」「マトリックス」のように未来の神話までをも描き出します。

 そして、スーパーマン、バットマン、スパイダーマンなどのアメコミ出身のヒーローたちも、映画によって神話的存在、すなわち「神」になったと言えるでしょう。「バットマンvsスーパーマン ジャスティスの誕生」で暴れるスーパーマンは、まるで日本神話の「荒ぶる神」であるスサノヲのようでした。

 わたしは「アメリカにおいて、映画は神話の代用品」という考えを、これまで何度も述べてきました。「ワンダーウーマン」という映画が面白いのは、本物のギリシャ神話とアメコミの世界を結びつけたところでしょう。ワンダーウーマンことダイアナ・プリンスはギリシャ神話の最高神であるゼウスの娘ということになっているのです。また、物語には軍神アレスも登場します。

 そんなアメリカの神々たちが一堂に会するのが「ジャスティス・リーグ」です。これは、DCコミック(ディーシー コミックス、DC Comics)の刊行するアメリカン・コミックスに登場する架空のスーパーヒーローチームです。DCコミックスはアメリカの漫画出版社で、アイアンマンやスパイダーマンらが所属する「アベンジャーズ」のマーベル・コミックと並ぶ二大アメコミ出版社のひとつです。DCとマーベルは、まさに「アメリカの二大神話メーカー」と言えるでしょう。

 Wikipedia「ジャスティス・リーグ」の「概要」によれば、ジャスティス・リーグ創立メンバーは、以下の7人とされます。

●マーシャン・マンハンター
本名、ジョン・ジョーンズ。火星人で、怪力、飛行、透明化、すり抜け(壁などを貫通する)、テレパシー、変身など、多彩な能力を持つ。弱点は火。

●2代目フラッシュ
超高速で行動できる「スピードスター」と呼ばれるタイプのヒーロー。 本名、バリー・アレン。後に戦死。

●2代目グリーンランタン
パワーリングのエネルギーを自在に操るヒーロー。本名、ハル・ジョーダン。

●アクアマン
地上での名はアーサー・カリー、本名はオリン。海底国家アトランティスの王。水陸両棲の海底人で、地上人よりもタフでパワーもある。

●ワンダーウーマン
アマゾン族の王女、ダイアナ・プリンス。怪力・飛行などの能力を有する。

●スーパーマン
普段の姿は、新聞記者クラーク・ケント。クリプトン星の生まれで地球育ち。怪力、飛行能力、目から放つ熱線やX線が特徴で、DCコミック最強のヒーロー。弱点はクリプトナイト。

●バットマン
大富豪ブルース・ウェインの隠された姿。闇の騎士、世界最高の探偵などと呼ばれる。スーパーパワーは持っていないが、極限まで鍛え抜かれた体力・知力を武器とする。

 「ジャスティス・リーグ」の物語はこれから続々と映画化されます。 2013年のスーパーマン映画「マン・オブ・スティール」を始まりとして、16年の「バットマンvsスーパーマン~ジャスティスの誕生」、17年には「ワンダーウーマン」が、そしてヒーローが結集する「ジャスティス・リーグ」がついに公開されます。さらにその後2020年まで作品の予定は詰まっているといいますから、今後もスクリーンでガドット演じるワンダーウーマンの雄姿がたくさん拝めそうです。いやあ、楽しみですね!