シネプレックス小倉で日本映画「嘘を愛する女」を観ました。今年になってまだ2本目の映画鑑賞です。例年に比べてペースが遅いですが、多忙なのと、なかなか観たい映画がないのが理由です。

 ヤフー映画の「解説」には、以下のように書かれています。

「第1回『TSUTAYA CREATORS' PROGRAM』でグランプリに輝いた企画を映画化したラブストーリー。昏睡状態に陥った恋人の名前や職業などが全てうそだと知った女性が、彼の正体を探ろうとするさまを描く。メガホンを取るのは、CMを中心に活躍し本作で長編映画デビューを飾る中江和仁。『散歩する侵略者』などの長澤まさみ、『blank13』などの高橋一生、テレビドラマ『東京センチメンタル』などの吉田鋼太郎らが共演している」

 ヤフー映画の「あらすじ」には、以下のように書かれています。

「世話好きな研究医の恋人・小出桔平(高橋一生)と5年にわたって同居している食品メーカー勤務の川原由加利(長澤まさみ)。ある日、桔平がくも膜下出血で倒れて寝たきりになってしまう。さらに彼の運転免許証、医師免許証が偽造されたもので、名前も職業もうそだったことが判明。彼女は探偵の海原匠(吉田鋼太郎)と助手キム(DAIGO)に桔平の素性調査を依頼する。そして桔平が執筆中だった小説が見つかり、そこから瀬戸内のどこかに桔平の故郷があることを知る由加利だったが......」

 この映画、けっして観終わった後にカタルシスを得るような内容ではありません。どちらかというと重いです。長澤まさみ演じる由加利は自らが開発した新商品を大ヒットさせ、「ウーマン・オブ・ザ・イヤー」に輝くようなキャリア・ウーマンですが、1人の女性として幸福な結婚にも憧れています。その相手となるはずであった高橋一生演じる桔平の名前や職業がすべて嘘だったとわかって、ショックを受けます。 この映画は、1991年に「朝日新聞」で報じられた、夫の経歴がすべて嘘だったという驚きの実話に基づいているそうです。

 嶋田久作演じる刑事が呆然とする由加利に対して、「結婚した後とかじゃなくて良かったね」と言うシーンがあります。由加利はムッとするのですが、その通りだと思いました。過去の辛い出来事を隠したい気持ちもわかりますが、すべてを偽って5年間も同棲していた男の罪は大きいと思います。そもそも、なぜ隠す必要があったのでしょうか?
 桔平は運転免許証だけでなく、医師の免許まで偽造していました。桔平を医師だと信じ込んだ由加利はそれなりにバラ色の未来を夢見て彼にヒモ生活をさせていたわけで、桔平の嘘は罪深いです。

 わたしは2人の娘の父親なので、こういう嘘をつく男に娘が関わりを持たないようにと願わずにはいられません。そして、世の中には嘘をついたまま結婚するような夫婦もいるのかもしれませんが、そういったことを防止し、お互いの背景をすべて明るみにする文化装置として結婚披露宴というものがあるように思いました。もし、結婚相手が披露宴を挙げたがらないとしたら、嘘をついていないかどうか疑ってみたほうがいいと思います。

 結婚といえば、合コンを繰り返す由加利の親友は、探偵である叔父に依頼して相手の身上調査をしたところ、「バツイチで、子どもの養育費を払っている」ことが判明しました。それで、彼女は「とんだ事故物件だったわ!」と言い放つのですが、離婚歴がある相手のことを「事故物件」と呼ぶとはあまりにも酷いですね。わたしの知人に40代の女性経営者がいるのですが、2年半ほど前に離婚歴のある男性と結婚しました。その男性には前妻との間に子がいたそうですが、わたしは前向きに新しい人生に踏み出そうとする彼女の姿に感銘をおぼえ、心からのエールを送ったものでした。

 人は、みな、それぞれ事情があります。ゲス不倫で離婚する人もいるでしょうが、そうでなくとも、どうしようもない家庭の事情とか、どうしても性格が合わなかったとか、さまざまな理由で離婚します。それを他人が「事故物件」などと言うべきではありません。離婚を経験した人の中には、わたしが知る限り、真面目な性格の人も多いです。真面目といえば、この映画には真面目すぎて育児ノイローゼに陥る若い母親の悲劇が描かれています。くだんの女性経営者も40歳を過ぎて第一子を授かり、現在は育児奮闘中だそうですが、彼女も生真面目な性格なので、くれぐれも育児ノイローゼなどにならないことを願っています。

 ネタバレになるので、詳しいストーリーに言及することは控えますが、由加利の自己中なキャラにかなり不快感をおぼえました。というより、わたしはこういう勘違い系のキャリア・ウーマンが苦手なのだと思います。何より、彼女は他人に謝罪したり、感謝の言葉を述べることができません。男女に限らず、いくら仕事ができても、「ごめんなさい」や「ありがとう」が言えない人間はクズだと思います。長澤まさみの「演じた役は今の自分に近い等身大の女性。そういう役と出合えて本当に良かった」というコメントが気になりますが......。

 でも、ラストシーンでは、由加利が明らかに変わったことがわかります。彼女は、もう、「ごめんなさい」や「ありがとう」を自然に言える女性になったことがわかりました。そんな彼女と行動を共にした探偵・海原役の吉田鋼太郎がすごく良かったです。こんなにも存在感のある役者さんだということを初めて知りました。海原の助手のキムを演じたDAIGOも良かったです。ロン毛姿が市川実日子にあまりにもそっくりなので笑ってしまいましたが。あと、川栄李奈が演じたココアという女の子は余分なキャラだったと思います。川栄李奈に恨みはありませんが、脚本の失敗ではないでしょうか。

 じつは、この映画、わたしは高橋一生の演技を一番楽しみにしていました。昨年の今頃スタートしたTBS系のドラマ「カルテット」を観て、彼の魅力に気づいたのです。昨年末に彼が審査員を務めたNHK紅白歌合戦でも、不思議なオーラを放っていました。しかし、「嘘を愛する女」での高橋一生は正直言って、魅力を感じませんでした。彼の持つ色気がまったく表現されていなかったように思います。「カルテット」には松田龍平も出演していましたが、彼は「散歩する侵略者」で長澤まさみの夫役でしたね。さらに「カルテット」には松たか子も出演していましたが、「嘘を愛する女」の主題歌「つなぐもの」を彼女が歌っています。エンドロールで流れましたが、しみじみと心に沁みる名曲だと思いました。