映画「スリー・ビルボード」を観ました。娘を殺害された母親が警察を批判する看板を設置したことから、予期せぬ事件が起こるクライムサスペンスです。ベネチア国際映画祭で脚本賞、トロント国際映画祭で観客賞、そしてゴールデングローブ賞では最多4冠に輝きました。次回のアカデミー賞においても作品賞などの最有力候補作です。なんともヘヴィーな映画でした。

 ヤフー映画の「解説」には、以下のように書かれています。

「娘を殺害された母親が警察を批判する看板を設置したことから、予期せぬ事件が起こるクライムサスペンス。本作はベネチア国際映画祭で脚本賞、トロント国際映画祭で観客賞に輝いた。娘を失った母をオスカー女優のフランシス・マクドーマンドが演じ、『メッセンジャー』などのウディ・ハレルソン、『コンフェッション』などのサム・ロックウェルらが共演。ウディやサムも出演した『セブン・サイコパス』などのマーティン・マクドナーがメガホンを取る」

 ヤフー映画の「あらすじ」には以下のように書かれています。

「ミズーリ州の田舎町。7か月ほど前に娘を殺されたミルドレッド(フランシス・マクドーマンド)は、犯人を逮捕できない警察に苛立ち、警察を批判する3枚の広告看板を設置する。彼女は、警察署長(ウディ・ハレルソン)を尊敬する彼の部下や町の人々に脅されても、決して屈しなかった。やがて事態は思わぬ方へ動き始め......」

 最近、面白くないことが多いです。今月に入ってからも、日本相撲協会の一連の暴挙をはじめ、世の中のさまざまな出来事を前にして「理不尽だ」「正論が通らない」と腹の立つことばかりでした。それは、わが私生活や会社や業界においてもしかりで、「まったく、どいつもこいつも」と1人で怒り狂っていました。そんなときに「スリー・ビルボード」を観たのですが、これがもう理不尽のオンパレード映画で、変な意味でカタルシスを感じました。そして、「人生とはもともと理不尽なものなのだ」と悟りのようなものも得ました。

 この映画はネタバレ厳禁度が高いので、気をつけて書きますが、イラクと思しき砂漠の地に駐留していたアメリカ兵が帰国後に卑劣な事件を起こします。そこから、わたしは2008年に製作された映画「ハート・ロッカー」を連想しました。イラクに駐留するアメリカ軍の中でも、最大の危険を伴う爆発物処理班の兵士を描いた戦争アクションです。命知らずの兵士と仲間との確執と友情を軸に、緊張感溢れる爆発物処理の現場をリアルに映し出す。監督は「ハートブルー」などのキャスリン・ビグローで、「28週後」のジェレミー・レナーが任務に命を懸け、その後はトラウマに悩まされるる主人公を熱演しました。「スリー・ビルボード」の卑劣なレイプ犯も戦争の犠牲者なのでしょうか。

 また、同じく2008年に製作された映画「グラン・トリノ」も連想しました。これは「ミリオンダラー・ベイビー」以来、4年ぶりにクリント・イーストウッドが監督・主演を務めた人間ドラマです。朝鮮戦争従軍経験を持つ気難しい主人公が、近所に引っ越してきたアジア系移民一家との交流を通して、自身の偏見に直面し葛藤する姿を描きます。アメリカに暮らす少数民族を温かなまなざしで見つめる主人公の元軍人ウォルトは最後にきわめて大胆な行動に出ます。その行動が、「スリー・ビルボード」の主人公ミルドレッドに見事に重なります。

 世の理不尽に対しては「キレたもん勝ち」という感じもしますが、じつは「スリー・ビルボード」という映画は「キレる」という行為を諌めるメッセージ映画となっています。詳しく書くとネタバレになるので控えますが、この映画には1人のキレやすい青年が登場しますが、彼はある人物が自死の直前に自分宛に書いた手紙の中の「キレるのではなく、愛を持て」と言葉を読んで生まれ変わります。たしかに愛こそは最大の武器でしょうが、死者からのメッセージというのは相手への伝達力がハンパないと思いました。
「遺言力」とでも言いましょうか......。