No.359


 24日から公開の日本映画「検察側の罪人」をレイトショーで観ました。キムタクとニノの初共演という話題作ですが、面白かったです。

 ヤフー映画の「解説」には、以下のように書かれています。

「『クローズド・ノート』『犯人に告ぐ』などの原作で知られる雫井脩介のミステリー小説を、木村拓哉と二宮和也の初共演で映画化。東京地方検察庁を舞台に、人望の厚いエリート検事と彼に心酔する新米検事がある殺人事件の捜査をめぐってすれ違い、やがて二人の正義がぶつかり合うさまが映し出される。『突入せよ!「あさま山荘」事件』などの原田眞人監督が、正義の意味を問うドラマを骨太に描き出す。木村と二宮の演技対決に注目」

 また、ヤフー映画の「あらすじ」には以下のように書かれています。


「東京地方検察庁刑事部に配属された検事の沖野啓一郎(二宮和也)は、有能で人望もある憧れのエリート検事・最上毅(木村拓哉)と同じ部署になり、懸命に仕事に取り組んでいた。あるとき、二人が担当することになった殺人事件の容疑者に、すでに時効が成立した事件の重要参考人・松倉重生が浮上する。その被害者を知っていた最上は、松倉に法の裁きを受けさせるべく執拗に追及するが、沖野は最上のやり方に疑問を抱き始め......」


 観賞前は、キムタクとニノの初共演という話題性から「ザッツ・ジャニーズ」みたいな派手な作品をイメージしていたのですが、いやはや硬派で見応えのある映画でした。
 ニノのキレた演技は最高でしたし、それに動揺する吉高由里子の表情も良かったです。予想以上に、演技で魅せる映画でした。ちょっと太平洋戦争のインパール作戦のエピソードが唐突な印象がありましたし、ネオナチまで持ち出して、日本が右傾化しているのを強調しすぎのきらいがあることも気になりました。オーナーが右翼というビジネスホテルチェーンなど、モデルが一発でわかってしまうのも興醒めでしたね。

 あと、葬儀でヘンテコリンなパフォーマンスを披露する集団も不気味でしたし、キムタク演じる最上が他人の誕生日をすべて記憶する特殊能力の持ち主という設定にも違和感をおぼえました。このへんは原作の内容に沿ったのでしょうが、意味のない無駄なエピソードのように感じました。さらには、殺人事件の容疑者である松倉の容姿の描き方も不愉快でした。
 まあ、「検察側の罪人」では検察の内部は詳しく描かれていますので、法曹界を目指す学生などには参考になるのではないでしょうか。現在、東京にある大学の法学部法律学科に通っている次女も観るといいかも?

 この映画には「正義とは何か」といったテーマがあるのでしょうが、反戦とか反原発とか基地反対とか唱えている人々は、自分たちは「正義」のために戦っていると信じていますね。しかし、100人いれば100の正義があるわけで、そんなものは所詮、主観に過ぎないという見方もできます。
「正義」について考えた人物に孔子がいます。『論語』の「為政」篇には、「義を見てせざるは勇なきなり」という言葉が出てきます。ここで、孔子は「勇」を「正義を実行すること」の意味で使っています。

 2008年6月、東京で「秋葉原事件」が発生し、7人が死亡、10人が重軽傷を負いました。多くの人々が事件発生時に被害者の救助に協力し、警視庁は72人に感謝状を贈ったといいます。救護中に容疑者に刺されて負傷した3人には、警視総監から感謝状が贈られた。私は感謝状を贈られた方々を心から尊敬し、同じ日本人として誇りに思います。中には、被害者の救護中に刺されたため命を落とした方もいました。痛ましい限りですが、この方々は本当の意味で、正義を実行した「勇気」のあった人々です。

 また、「悪」を憎む心が「正義」であるとも考えられます。麻原彰晃率いるオウム真理教が起こした一連の犯罪は明らかな「悪」として、日本中の人々が憎みました。反戦とか反原発とか基地反対を唱える人々には死刑反対論者も多いように思えますが、麻原をはじめとしたオウム幹部の死刑執行の前には反対の声は小さかったように思いました。オウムはそれほど巨大な「悪」だったのかもしれません。ネタバレにならないように注意して書きますが、この映画に登場する松倉という男の最期を知って、「天罰が当たった!」とカタルシスをおぼえた人もいたはずです。

 わたしの父は、「正義」よりも「美」を重視しています。父は、礼法を学び、おじぎを極め、会社を興しましたが、すべてが「美」を追い求めてきた気がするそうです。父は著書『わが人生の「八美道」』(現代書林)の「まえがき」に「『正しいか、正しくないか』―私にはわかりません。『美しいか、美しくないか』―これはわかります。『美』を唯一無二の基準にして、生きてきたような気が致します。自然の美しさに学び、心の美しさに涙し、無理のない美しい流れを大切にしながら生きてきました。ささやかではありますが、その行いのすべてが、今日ある私の姿です。良し悪しは他人様に評価して頂きたいと存じます」と書いています。わたしも、「正しさ」よりも「美しさ」を目指して生きたほうが道を踏み外さないように思います。

「検察側の罪人」の話に戻ります。
 検事役のキムタクとニノは、どちらも素晴らしい演技でした。
 2人もスーツ姿もよく似合っていました。思ったのですが、検事役も悪くなかったですが、彼らには刑事役をやらせてみたいです。TOKIOの長瀬智也とか松岡昌宏なども刑事役が意外にハマるように思います。かつて、石原プロが「太陽にほえろ!」や「西部警察」で一世を風靡したように、ジャニーズ事務所も自ら刑事ドラマを制作してみてはどうでしょうか?

 石原裕次郎のようなボス役は、やっぱり「マッチ」こと近藤真彦でしょうか。ナンバー2に「ヒガシ」こと東山紀之、ナンバー3が木村拓哉で、武闘派の長瀬智也&松岡昌宏、そして岡田准一、二宮和弘、山下智久、錦戸亮、横山裕あたりの演技派をズラリと並べれば、堂々のチームが結成できるのではないでしょうか。まあ、マッチとヒガシの演技力は「?」ですが、彼らは上席に座っているだけでいいのです。

 SMAPの解散を見てもわかるように、いつまでもタレントをアイドルとして歌わせているわけにもいかないのですから、ジャニーズは刑事ドラマ進出を真剣に考えてみるといいと思います。それにしても、映画ポスターのキムタクとニノの顔がネットにもUPされているのを見て、「ああ、ジャニーズも少しは変わってきているんだなあ...」としみじみと思いました。
 同じ事務所に所属しているにもかかわらず、SMAPと嵐のマネジメント側が対立して、結果、SMAPは不本意な解散を強いられました。そのとき大いに悲しみ嘆いたファンたちは、この映画をどんな思いで観るのでしょうか?
わたしは、「ある意味で、この映画を観ることは、SMAP解散の悲嘆を癒すグリーフケアになるのではないか」と思いました。