No.386


 日本映画「雪の華」を観ました。絵に描いたようなメロドラマで、涙腺の緩いわたしのハンカチはビショビショになりました。なんか隣りの席の人もずっとハンカチを目に当てていましたが...。しっかり泣きたい人に、おススメです。

 ヤフー映画の「解説」には、こう書かれています。
「中島美嘉の代表曲の一つ『雪の華』からインスパイアされたラブロマンス。東京とフィンランドを舞台に、余命わずかの女性と青年の恋が描かれる。メガホンを取るのは『羊と鋼の森』などの橋本光二郎。『HiGH&LOW』シリーズなどの登坂広臣、『ニセコイ』などの中条あやみが出演するほか、『モンスター』などの高岡早紀、『ディアスポリス-DIRTY YELLOW BOYS-』などの浜野謙太、『ハッピーフライト』などの田辺誠一らが共演した」

ヤフー映画の「あらすじ」は、以下の通りです。
「幼少期から病気を抱え、余命を宣告された美雪(中条あやみ)は、幸せになれないと考えていたが、最期の日が来る前にフィンランドでオーロラを見るという目標を持っていた。ある日、ひったくりに遭って動けなくなってしまった彼女にガラス工芸家を目指す青年・悠輔(登坂広臣)が声を掛けてくる。それを機に彼との交流が始まり、真っすぐな性格に心惹かれていく美雪。やがて悠輔の働く店が経営難に陥っているのを知った美雪は、100万円の援助と引き換えに1か月だけ交際してほしいと彼に持ち掛ける」

 久々に「これぞ恋愛映画!」という感じの作品を観ました。もうすぐ命が消えてしまう薄幸の美女が主人公の恋愛物語といえば、これはもうメロドラマの王道中の王道です。「雪の華」のヒロイン・美雪は、古くは田中絹代に始まって、原節子、高峰秀子、岸恵子、吉永小百合といった日本映画のレジェンド女優たちが演じるようなキャラでした。それを21歳の中条あやみが見事に演じ切りました。彼女の主演作というと、これまで「覆面系ノイズ」とか「3D彼女 リアルガール」「ニセコイ」などのキワモノ的な話が多かったですが、今回の「雪の華」では素晴らしい悲劇のヒロインぶりを見せてくれました。彼女には、こういう正統派の役の方が似合います。ハーゲンダッツのCMで初めて中条あやみを知ったのですが、とにかく可愛らしい女の子ですね。モデルだけあって、スタイルも抜群です。

 悠輔を演じた登坂広臣も悪くありませんでした。三代目 J SOUL BROTHERS from EXILE TRIBEのボーカルだそうです。わたしはこれまでずっとEXILEグループの連中が苦手、というか嫌いでしたが、一条真也の映画館「去年の冬、きみと別れ」で紹介した映画に主演した岩田剛典、一条真也の映画館「この道」で紹介した映画に主演したAKIRAなどの演技をスクリーンで観て、彼らに対する見方が変わりました。歌、ダンス、そして演技と、トータルに活躍するエンターテインメントのプロフェッショナルであると思います。「雪の華」に出演した登坂の場合は岩田やAKIRAに比べて目つきが悪く、とてもイケメンとは思えませんが、それでも物語の中の恋愛が進行するにつれ、次第に王子様のように見えてくるから不思議ですね。その登坂くん、この映画ではとにかく走りまくっていました。走る姿が非常に絵になる人ですね。

 映画「雪の華」の舞台は日本とフィンランドが半々ですが、スクリーンに広がるフィンランドの光景がとても美しかったです。ネタバレになるので詳しくは書けませんが、オーロラの描き方も感動的でした。わたしはフィンランドには行ったことがありませんが、いつか訪れて、冥途の土産にオーロラを見てみたいです。極寒の中で重病の人間がひたすら夜空にオーロラが出るのを待つ場面はちょっとリアリティに欠けると思いましたが、この映画そのものが「おとぎ話」のようなものですから、まあ、そこは許せますね。 あと難を言うなら、スクリーンに霧がかかったように画面が不鮮明で、美雪が手帳に書いた文字とかメモなどが観客には読みにくかったです。そこに書かれてある内容が物語の重要な役割を果たすので、残念でした。画面の色調は演出の上で必要だったかもしれませんが、せめて文字が映る場面だけでも明るく鮮明な画面にしてほしかったですね。

 この映画は、2003年10月1日に発売された中島美嘉の10枚目のシングル「雪の華」にインスパイアされて製作されています。中島自身が出演した明治製菓「boda」「galbo」のCMソングであり、第45回日本レコード大賞金賞および作詩賞を受賞しています。
「NHK紅白歌合戦」では、2003年第54回、2005年第56回と2回歌われています。第56回紅白出場者選考の参考アンケートとしてNHKが実施した「スキウタ〜紅白みんなでアンケート〜」では紅組9位にランクインしています。さらには、毎年「冬うた名曲ランキング」など各冬うたランキングに選ばれる曲となりました。 「雪の華」のプロモーションビデオは、中島美嘉のリクエストによって摂氏0度以下のスタジオで撮影されました。Wikipedia「雪の華」の「概要」には、「韓国では、多くのアーティストがカバーするために中島側に許可を求めたが、本人が直接聴いた結果、シンガーソングライターのパク・ヒョシンに決定。そして、KBS第2テレビのドラマ『ごめん、愛してる』の主題歌として披露され、大ヒットを記録した。また、2008年10月29日に発売されたコンピレーション・アルバム『LOVE』にも収録されている。他にも徳永英明や森山良子、Boyz Ⅱ Menなど多くの歌手がカバー版を発表している。2015年のFNS歌謡祭にて、河村隆一とともにこの曲を披露している」とあります。

 また、Wikipedia「雪の華」の「概要」には以下のように書かれています。
「2016 年、TVアニメ『ReLIFE』第8話のエンディングテーマに起用された。2016年10月度の日本レコード協会リリースにおいて、フル配信でのミリオン到達が認定された。本作の配信開始から13年0か月かかっており、中島みゆき『糸』(所要15年10ヶ月で到達)に抜かれるまでは史上最長記録であった」
「雪の華」のリリースから15周年を迎えた2018年10月1日より発売15周年記念した15の企画がスタートし、10月10日には12inchアナログ盤が数量限定で再リリース、11月7日には一発録りで再録したアコースティック版を収録したカバーアルバム「PORTRAIT〜Piano&Voice」が発売。2019年1月30日には15周年を記念した企画ベストアルバム『雪の華15周年記念ベスト盤「BIBLE」』が発売。そして、2月1日にはこの歌をモチーフとして製作され、そのまま主題歌となる映画「雪の華」が公開されました。映画音楽は、葉加瀬太郎が担当しています。

「雪の華」には多くの観客が感動の涙を流すと思います。なぜなら、この映画のテーマは「愛」と「死」だからです。これはメロドラマの定番でもありますが、小説にしろ演劇にしろ映画にしろ、大きな感動を提供する作品は、必ず「愛」と「死」という2つのテーマを持っています。
 古代のギリシャ悲劇からシェークスピアの『ロミオとジュリエット』、そして「タイタニック」まで、すべて「愛」と「死」をテーマにした作品であることに気づきます。「愛」は人間にとって最も価値のあるものです。しかし、「愛」をただ「愛」として語り、描くだけではその本来の姿は決して見えてきません。そこに登場するのが、人類最大のテーマである「死」です。「死」の存在があってはじめて、「愛」はその輪郭を明らかにし、強い輝きを放つのではないでしょうか。「死」があってこそ、「愛」が光るのです。そこに感動が生まれるのです。逆に、「愛」の存在があって、はじめて人間は自らの「死」を直視できるとも言えます。
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死ぬまでにやっておきたい50のこと』(イースト・プレス)


 わたしは、「今日は残りの人生の最初の1日」と毎日思っています。人生、悔いのないように生きたいものですね。映画「雪の華」で余命1年と宣告された美雪は、「死ぬまでにやっておきたいこと」を考えます。彼女が考えたことは、「フィンランドに行ってオーロラを見ること」、そして「恋をすること」の2つでした。わたしには『死ぬまでにやっておきたい50のこと』(イースト・プレス)という著書がありますが、同書で「満足のいく人生」を全うするために提案した50のことの中に「行きたい場所に行く」というものがありました。特に、「圧倒的な自然の絶景に触れる」ことを薦めています。わたしたちは自然の絶景に触れると、人間の存在が小さく見えてきて、死ぬことが怖くなくなってくると思います。「死とは自然に還ることにすぎない」と実感できるのではないでしょうか。ナイアガラの滝、グランドキャニオン、アンコールワット、ウユニ塩湖、オーロラ......世界には、想像を超えた絶景がたくさんありますが、少しずつでもいいから、ぜひ見てみたいものです。

 また、『死ぬまでにやっておきたい50のこと』では「恋をすること」も提案しています。現在は中高年者の未婚が増えています。女性未婚率が低いですが、夫に先立たれる人が多いので、結果独身になります。異性を意識することで、免疫力が上がるというのは、医学的も証明されています。わたしはそれをもう一歩、進めてみることを提案します。意識するだけではなく、実際に恋をしてみませんか。脳は筋肉と同じで、使わないと老化するそうです。あなたの恋愛脳を作動させましょう。「これから何をしたいか?」という質問に対して、高齢者には「恋をしたい」という希望があるそうです。また、「俺は今まで本当の恋をしたことがない」という声もあるとか。

 誰かに好かれたいというのは、じつはエネルギーを相当に使います。エネルギーがない人間は、やはり異性からモテません。クジャクという鳥は、オスが立派な羽を広げて、メスにアピールします。最近の研究で、じつは見かけだけでないことがわかってきました。羽飾りの魅力だけで、メスをゲットできているわけではないということです。モテるオスのクジャクというのは、メスを誘う鳴き声の回数も多かったという事実がわかってきました。つまり、オスのクジャクも努力をしているわけです。単なる見かけだけではメスにはモテないのです。これは人間も同じ。人気のホストに、モテる理由をインタビューしたテレビ番組を観たことがあります。彼いわく、「マメさです。相手に関心があることをアピールするんです」。これこそ、モテる極意、モテる真髄でしょう。

 最後に、この映画の主人公である美雪は「死」を覚悟して生きていますが、映画の中では「そのとき」は描かれませんでした。逆に、恋愛による免疫力の向上で希望の光さえ見えてくるようなエンドロールでした。幼少の頃から身体が弱かった彼女は、自らの不運な人生を嘆きます。しかし、絶望の底に落ちたまさにその瞬間、美雪は悠輔と出会ったのでした。
 病気だけでなく、人生にはいろんな苦難があります。悲しいこと、不幸な出来事もたくさんあるでしょう。ですが、正々堂々と真摯に生きている人には、必ずや楽しいこと、幸せな出来事も待っています。美輪明宏さんは「正負の法則」という人生法則を唱えておられますが、結局は、人生プラス・マイナス=ゼロではないでしょうか。これまで辛いことが多かった人ほど、これから喜びを感じることが多いのではないでしょうか。そして、その鍵は、その人の人生を左右する大切な人との出会いにかかっています。濡れたハンカチを握りしめながら、わたしはそのように思いました。