No.413
7月7日は七夕ですね。5日から公開されている日本映画「Diner ダイナー」を観ました。主演の藤原竜也が好きなので観たのですが、彼の演技は満足でしたが、映画そのものには欲求不満が残りました。キャラクターはみんな個性的なのですが、ストーリーにヒネリがないというか、ひと味足りなかったです。
ヤフー映画の「解説」には、こう書かれています。
「『さくらん』『ヘルタースケルター』などの蜷川実花がメガホンを取り、藤原竜也が元殺し屋の天才シェフを演じるサスペンス。ある女性がウエイトレスとして身売りされた殺し屋専用のダイナーを舞台に、店主と店を訪れる凶悪な殺し屋たちの異様な世界を描き出す。原作は『「超」怖い話』シリーズなどが映画化されたホラー作家で、監督としても活動している平山夢明の第13回大藪春彦賞受賞作」
ヤフー映画の「あらすじ」は以下の通りです。 「孤独な女性オオバカナコは、怪しいサイトのアルバイトに手を染めたことでどん底に陥り、とあるダイナーにウエイトレスとして売られてしまう。重い鉄の扉を開けると強烈な色彩が広がるその店の店主は、以前は殺し屋だった天才シェフのボンベロ(藤原竜也)。そこは、凶悪な殺し屋たちが次から次へと現れる、殺し屋専用のダイナーだった」
この映画の原作は、平山夢明氏の小説です。平山氏は1961年、神奈川県川崎市生まれ。自動販売機の営業、コンビニ店長、週刊誌のライター、映画・ビデオの企画・製作と様々な職歴を経て作家となります。2006年には短篇「独白するユニバーサル横メルカトル」で日本推理作家協会賞を受賞。2007年、同タイトルを冠した短編集が「このミステリーがすごい!」第1位に選ばれました。
2009年に刊行された『ダイナー』は第28回日本冒険小説協会大賞と、第13回大藪春彦賞をダブル受賞しています。わたしはもともと怪奇小説が好きなので、平山氏が新進気鋭のホラー作家として有名になり出した頃に作品は買い込んでいたのですが、未だに1冊も読んでいませんでした。もちろん、『ダイナー』も未読ですが、文庫本で533ページもあるのですね。
まず、なんといってもヒロイン役の玉城ティナがとにかく可愛いです。映画の冒頭で、彼女が演じる大場加奈子(オオバカナコ)の不幸な生い立ちが紹介されるのですが、これだけのルックスがあれば不幸になどなりようがないというほどの可愛さです。ウエイトレス姿も、じつに良く似合う。「大馬鹿な子」という意味にも取れるトリッキーな本名などまったく感じさせない天使のような輝きを放っていました。
原作の大場加奈子は玉城ティナのイメージではなく、普通のOLのようですが、蜷川実花監督がどうしてもヒロイン役に玉城ティナを起用したかったそうです。蜷川監督といえば、独特のカラフルな色使いで知られていますが、この映画でもそのセンスは存分に発揮されていました。ただ、レストランの中に桜が咲き乱れているのは違和感がありましたが......。
「Diner ダイナー」では多くの役者たちが熱演というより怪演を繰り広げていましたが、特に素晴らしかったのが元殺し屋で天才シェフのボンベロを演じた藤原竜也です。彼は、1997年に蜷川実花監督の父親である蜷川幸雄演出の舞台「身毒丸」主役オーディションでグランプリを獲得し、俳優デビューしました。バービカン・センター(ロンドン)での公演にて、「15歳で初舞台とは思えぬ存在感で天才新人現る」と絶賛され、翌年の凱旋公演も行われたほどの華麗なデビューでしたが、亡き恩師の愛娘である実花監督との初タッグはさぞ感無量であったと思います。映画の中でボンベロが「俺はここの王だ!」とか「やるのか、やらないのか!」と叫ぶシーンがあるのですが、まるで蜷川幸雄の舞台のワンシーンのようでした。
藤原竜也が演じたボンベロの他にも、窪田正孝が演じたスフレをはじめ、この映画には個性的な殺し屋たちがたくさん登場します。武田真司が演じたマッチョの殺し屋はいまいちインパクトがありませんでしたが、本郷泰多が演じた子どもの姿をした殺し屋はなかなか凄みがありましたね。本郷泰多もわたし好みの俳優なのですが、非日常的なシーンほど絵になる役者だと思います。女性陣では、なんといっても真矢みきが良かった。さすがに宝塚の男役でスターだっただけあって、華がありました。
この映画、スフレをはじめとして、いろいろな料理が登場します。しかし、ハンバーガー、それもビッグマックみたいな料理が多くて、わたしは「美味しそうだな」とか「食べたいな」とは思いませんでしたね。唯一、加奈子が食べたパスタは美味しそうでしたけど。加奈子は料理が得意で、ラストでは自分のレストランを持ちます。そこにボンベロと愛犬の菊千代がやってくるのですが、その場所と言うのがメキシコで、しかも「死者の日」の時期なのでした。ということは、加奈子とボンベロが再会したのはこの世なのか、あの世なのか......最後は観客の想像力に委ねられるということでしょうか。オチを含めて、ストーリーが今イチでしたね。
「Diner ダイナー」を鑑賞した劇場では、蜷川実花監督の次回作「人間失格 太宰治と3人の女たち」の予告編が流れました。常に恋の噂が絶えず、自殺未遂を繰り返した「人間に失格した男」である太宰治を小栗旬、その妻の美知子に宮沢りえ、愛人で作家志望の静子に沢尻エリカ、太宰の心中相手である富栄に二階堂ふみという豪華キャストです。しかも、藤原竜也も出演します。今年の9月13日から全国ロードショーだそうですが、これは絶対に観なければ!