No.419
日本映画「イソップの思うツボ」を観ました。「ダンスウィズミー」とどちらを観ようかと悩んだのですが、「ダンスウィズミー」のネットでの評価があまりにも低くて鑑賞意欲が萎えてしまったので、こちらを選びました。この映画、なんと公開当日までネットでは「未評価」となっていました。試写会をまったく行わなかったということですね。
ヤフ―映画の「解説」には、こう書かれています。
「異例のヒットを飛ばした『カメラを止めるな!』のスタッフが再び組んだ異色作。3人の少女たちが出会って始まる奇跡を描く。『きらきら眼鏡』などの石川瑠華、『クロノス・ジョウンターの伝説』などの井桁弘恵、『白河夜船』などの紅甘がヒロインを演じる。『カメラを止めるな!』のメガホンを取った上田慎一郎、同作の助監督の中泉裕矢とスチールの浅沼直也が共同で監督を担当した」
また、ヤフ―映画の「あらすじ」は、以下の通りです。
「シャイな大学生の亀田美羽(石川瑠華)の友人は、カメだけだった。超売れっ子"タレント家族"の娘で大学生の兎草早織(井桁弘恵)は、いつも恋愛を求めている。戌井小柚(紅甘)は、"復讐代行屋父娘"として行き当りばったりの生活を送っていた」
公開当日までネットでは「未評価」となっていた「イソップの思うツボ」ですが、鑑賞して、その理由がわかった気がしました。面白くなくはないのですが、ちょっと企画倒れというか、ストーリーに無理があり過ぎます。この映画に関しては詳しく書くとネタバレになるのですが、あまりにも復讐の動機が弱いし、各所に御都合主義が目立ちます。3人も監督がいて、「何をやってるんだ?」と言いたくなりました。
出演している役者さんたちは悪くありません。特に亀田美羽を演じた石川瑠華は初めて見る女優さんですが、もう少し目がパッチリしていれば、広瀬すずに似ていると思いました。兎草早織を演じた井桁弘恵も可愛かったです。ただ、何という名前かわかりませんが、大学の臨時講師になった若い男性がモテる設定になっているのですが、黒縁眼鏡をかけた彼はどう見ても「宮川大輔」のようです。なんで宮川大輔が可愛い女子大生からモテるのか......これは、複数の大学で客員教授を務めてきたわたしにとって、まったくリアリティを感じることができませんでした。
この映画は、「カメラを止めるな!」の上田慎一郎監督を中心とした製作スタッフが再結集し、再び予測不能な物語を紡ぎだしたオリジナル作品です。「カメ止め!」とは全く違うけれど、やはり似てもいます。たとえば、8月13日に更新された「映画.com」には、「家族愛、人間ドラマ、二重の"罠"・・・『カメ止め!』超える物語のカタルシス!」として、以下のように書かれています。
「『 カメ止め!』でも重要な柱となっていた、家族愛や人間ドラマ。本作でもそれは欠かせない柱であるが、少々、毛色が異なる。『カメ止め!』では家族愛によってピンチがチャンスへと好転していくが、本作ではそれによって"人間の裏側"が顔をのぞかせる。人の弱さや本質がえぐり出され、見る者に問いかけるようなドラマが紡がれていくのだ。さらに、開始40分ほどで待ち受ける "構造転換"。そして登場人物同士の騙し合いにより、観客は"二重の罠"に陥る。騙されることで得られるカタルシスは、『カメ止め!』を超えるといっても過言ではない」
「映画.com」では、「カメ止め!」と比較して、「熱狂を呼んだ"あの快感"はそのままに、"また別種の魅力"が味わえる」などと評してもいますが、それはちょっと無理があるように思います。「イソップの思うツボ」は構想に約3年が費やされており、じつは「カメ止め!」よりも前から存在していた企画だそうです。まさに「カメ止め!」が大フィーバーとなり、上田監督らが殺人的な忙しさに追われていた18年11月7日に本作の撮影は始まりました。その意味では、「カメ止め!」のほうが丁寧に作られた感は否めません。まあ、「カメ止め!」のヒットがなければ、「イソップの思うツボ」のようなマイナー感が炸裂する映画は全国上映されなかったでしょうけどね。最後に、この映画に登場する「カメ」は「カメ止め!」の駄洒落で、製作者はきっと「カメを止めるな!」と言いたかったのでしょうね。わたしは「だから、何?」と言いたいですけど。(笑)