No.494


 11月26日の夜、全互協の広報・渉外委員会の志賀委員長(セレモニー社長)の計らいで、2名の映画関係者とキャピトル東急ホテルで会食しました。お二人とも超大物ですが、名は秘しておきます。グリーフケアをテーマにした映画を作る話で大いに盛り上がりました。その後、TOHOシネマズ日比谷で映画「ザ・ハント」をレイトショーで鑑賞。終了時はもう深夜でしたが、非常に面白かったです。一条真也の映画館「泣く子はいねぇが」で紹介した日本映画の10倍は面白かった!

 ヤフー映画の「解説」には、こう書かれています。
「富裕層が娯楽目的で行う人間狩りを描いたバイオレンススリラー。標的として集められた男女のサバイバルを、アメリカ社会への風刺を盛り込み活写する。『ゲット・アウト』など数々のヒット作を送り出してきたジェイソン・ブラムが製作、『コンプライアンス 服従の心理』などのクレイグ・ゾベルが監督を務めた。オスカー女優のヒラリー・スワンク、ドラマシリーズ「GLOW:ゴージャス・レディ・オブ・レスリング」などのベティ・ギルピン、『パロアルト・ストーリー』などのエマ・ロバーツらが出演する」

 ヤフー映画の「あらすじ」は、以下の通りです。 「広々とした森の中で12人の男女が目覚めると巨大な木箱があり、中には1匹の豚と数多くの武器が入っていた。状況が飲み込めないまま何者かに銃撃された彼らは武器を手に逃げ惑う中、あるうわさが本当であったことに気付く。それは、『マナーゲート』と呼ばれる一部の富裕層によるスポーツ感覚の『一般市民狩り』だった。一方、狩られる側の1人であるクリスタル(ベティ・ギルピン)が反撃を開始する」

 このハチャメチャな映画から学ぶことは2つ。1つは、SNSへの書き込みの恨みは怖いということ。もう1つは、女は強いということです。全米各地で誘拐された男女が富裕層の娯楽として狩られる物語ですが、最初はとにかく意味不明で不条理のきわみです。みんな、「どうして、ここにいるのか?」「なぜ、猿轡を噛ませられているのか?」「どうして、正体不明の相手から殺されなければならないのか?」など、まったく理解できません。わたしは、「ソウ」に代表されるシチュエーション・スリラー映画を連想しました。限定された空間・設定・場所で巻き起こる現象や恐怖を描いたジャンルですが、確かに「ザ・ハント」の前半はその要素があります。

 誘拐された人々の中で最初に登場するのは、金髪の可愛い子ちゃん(エマ・ロバーツ)です。あまりにも可愛いので、「この娘が主人公かな?」と思いましたが、なんと、次の瞬間には死んでしまいました。この衝撃的なシーンを見て、わたしは70年~80年代の有名なホラー映画の数々を思い出しました。それらの映画では、最初にとびっきりの美女が殺されるのです。もちろん、「ザ・ハント」では美女以外も殺されますが、その殺され方が非常にエグイです。かつてのスプラッター映画も真っ青なくらいのグロテスク描写なので、R15+指定を受けるのは当然ですね。

 さて、この映画、冒頭に「大統領はバカ」などとLINEでやり取りするシーンが出てきます。アメリカ映画なので、大統領とはもちろん、ドナルド・トランプのことです。この映画自体が、反トランプ陣営がトランプ陣営を粛正することを暗示した内容と見る向きもあるそうです。トランプは激怒して、この映画を上映中止にしようとしたとか。

 Wikipedia「ザ・ハント」の「風刺要素に対する批判と製作サイドの釈明」には、「本作のストーリーは『富裕層が一般人を娯楽として殺害する』というものだが、保守層は本作を『リベラル・エリートがトランプ大統領の支持者を虐殺していく様子を描いた映画だ』と批判した。2019年8月9日、ドナルド・トランプ大統領は自身のTwitterで『リベラルを標榜するハリウッドは怒りと憎悪に燃える最悪のレイシストだ。(中略)。近日公開予定の映画は社会に混乱をもたらすために製作された。ハリウッドは自らの手で暴力を生み出し、異なる思想の持ち主を糾弾しようとしている。ハリウッドは真のレイシストであり、我が国にとって害悪である』とツイートした」と書かれています。

 トランプ大統領は作品名を挙げていませんが、マスメディアは「ザ・ハント」に対する批判であると解釈して報道しました。「試写会に参加した者の中に、本作の政治風刺に対して不快感を露わにした者がいた」「当初、本作のタイトルは『Red State Vs.Blue State.』だった」という報道もありました、ユニバーサル側はそのような事実はないと否定しています。なお、ゾベル監督は「『ザ・ハント』は分断されて闘争を繰り広げる両サイドを風刺するものであって、どちらかの側に立った映画ではない」という趣旨のことを述べています。いずれにしても、ゾベル監督がトランプ大統領に好意を持っていないことは明らかのようですね。

 映画の冒頭からプライベートジェットやシャンパンやキャビアが登場しますが、こういうアイテムを富裕層のシンボルとして描いているところは逆に「貧乏くさいな」と思いましたが、ヒラリー・スワンク演じるアシーナの別荘のキッチンは非常にスタイリッシュでセレブ感に溢れていました。このオシャレなキッチンで、アシーナはベティ・ギルビン演じるクリスタルと死闘を繰り広げます。 この映画、とにかく男はみんな弱くて、女はみんな強いのですが、最後に最強の女戦士2人が闘うシーンはド迫力です。キャットファイトどころではない、牝ライオン同士の闘いのようです。戦闘本能剥き出しで殺し合いをする女2人の姿には少々引いてしまいましたが、最後に、ジョージ・オーウェルの『動物農場』の話題になって、2人ともその本を読んでいたことがわかって奇妙な親近感が芽生えるところが面白かったです。殺伐とした闘いの後の読書談義は究極の「平和」をイメージさせてくれました。

 それにしても、強い女性には問答無用で圧倒されます。強い女性といえば、ワンダーウーマン。そういえば、わたしの大好きなガル・ガドット姐さん主演の「ワンダーウーマン1984」が来月12月18日(金)から公開されます。この日も予告編で流れました。この映画だけは観ないと、年が越せません!(笑)