No.501
日本映画「さんかく窓の外側は夜」を鑑賞。昨年10月30日に公開予定でしたが、新型コロナウイルスの感染拡大の影響で公開延期となり、今年の1月22日に公開された作品です。岡田将生と志尊淳のW主演で、平手友梨奈がヒロインを演じ、さらには心霊ホラーだというので楽しみにしていましたが、イマイチでした。画面がずっと暗いので、睡魔との戦いでした。
ヤフー映画の「解説」には、こう書かれています。
「漫画家ヤマシタトモコによるミステリーコミックを、岡田将生と志尊淳の主演で実写映画化。霊をはらうことができる除霊師と、霊が見える書店員がコンビを組み、連続殺人事件に挑む。物語の鍵を握るヒロインに平手友梨奈がふんし、滝藤賢一、マキタスポーツ、新納慎也、桜井ユキ、和久井映見、筒井道隆らが共演。『おじいちゃん、死んじゃったって。』などの森ガキ侑大が監督を務め、『本能寺ホテル』などの相沢友子が脚本を手掛けた」
ヤフー映画の「あらすじ」は、「幼いころから霊が見える特異体質に悩む書店員の三角康介(志尊淳)は、除霊師の冷川理人(岡田将生)に能力を見い出され彼の助手になる。コンビを組んだ二人はさまざまな依頼を受けて除霊作業に関わる中、刑事の半澤(滝藤賢一)から1年前に起きた連続殺人事件について相談される。調査に乗り出して間もなく遺体を発見するが、その遺体には呪いがかけられていた。真相を追ううちに、二人は死んだ殺人犯の声を耳にする」です。
霊が見える書店員と除霊師の男が心霊探偵コンビを組んで、除霊や連続殺人事件の謎を追うミステリー・ホラーということですが、同性愛的な設定も含め、いろんなものを詰め込み過ぎて消化不良を起こした印象です。原作漫画は「MAGAZINE×BOY」(リブレ)にて、2013年4月号から2021年1月号まで連載されていますが、長期にわたって描かれた漫画を2時間弱で映画化するのに失敗しています。この物語の世界観とか、主役2人のこれまでの人生などがゴチャゴチャし過ぎて、わかりにくい。脚本の失敗です。漫画が原作の実写映画でも優れた作品は多いですが、この映画は残念でした。
あと、この映画の霊の描き方はまったくダメでした。霊が怖くもないし、哀しくもない。わたしは古今東西にわたって心霊ホラー映画はかなり観てきたつもりです。霊が見える人間の物語で好きなのは、M・ナイト・シャマランの「シックス・センス」(1999)で、映画館での鑑賞のみならず、DVDでも何度も観ました。主人公の少年コールには死者を見る能力としての「シックス・センス(第六感)が備わっていますが、コールの死者への接し方にはオカルトを超えた仏教的な世界観さえ感じました。最後には予想もつかない真実が待ち受けており、サスペンス・スリラー映画としても最高傑作であると思います。
さて、原作の『さんかく窓の外側は夜』は基本的にミステリー・ホラー漫画ですが、ブロマンスに近いことから「匂い系」のボーイズラブ漫画と見られることもあるそうです。「ブロマンス」というのは「2人もしくはそれ以上の人数の男性同士の近しい関係のこと。性的な関わりはないものの、ホモソーシャルな親密さの一種とされる」そうですが、まあ、「男同士のアツい友情」みたいなものですね。映画版でも、岡田将生が霊をよく見るために志尊淳に抱き着くシーンは限りなくBL的でした。まあ2人のルックスなら絵になりますけどね。岡田将生は現在31歳ですが、やはり美しいですね。わたしの中では、三浦春馬のイメージと重なるところがありますが、1歳年下だった三浦春馬が演じるはずだった役なども、これからは岡田将生に回ってくるのではないでしょうか。
霊が見える書店店員の三角は、志尊淳が演じました。勤務中に冷川に見出されて助手となった三角は、幼い頃から母と2人暮らしの設定です。母親役は和久井映見が演じ、なかなか良い味を出していました。わたしが志尊淳を初めて知ったのは、2017年にNHKで放映されたドラマ「植木等とのぼせもん」でした。植木等と小松政夫の師弟の物語でしたが、山本耕史が植木等を演じ、志尊淳は小松政夫を演じました。このときの演技に光るものがあり、彼の存在がわたしにインプットされたのです。その翌年に、トランスジェンダーの役で主演を務めた「女子的生活」(NHK)は、第73回文化庁芸術祭賞テレビ・ドラマ部門で放送個人賞を受賞するなど高い評価を受けました。
でも、この映画の最大のウリは、なんといっても、謎の女子高校生である非浦英莉可を平手友梨奈が演じていることでしょう。非浦英莉可は「呪い師」ですが、この映画では「霊」と同様に「呪い」の描き方も中途半端だったことが残念でした。あと、彼女が能力を使った後に必ず鼻血を出しているのは、NETFLIXオリジナルドラマ「ストレンジャー・シングス 未知の世界」の影響を受けているのではないかと思いました。でも、平手友梨奈の演技は良かったです。一条真也の映画館「響 -HIBIKI-」で紹介した作品以来の彼女の出演作ですが、やはり只ならぬ存在感があります。この作品で、彼女は「第31回日刊スポーツ映画大賞・石原裕次郎賞」の新人賞、第42回日本アカデミー賞新人俳優賞、2018年度日本インターネット映画大賞 日本映画ニューフェイスブレイク賞、第28回日本映画批評家大賞の新人女優賞などを受賞しています。
平手友梨奈は女性アイドルグループ「欅坂46」の不動のセンターでしたが、体調不良などもあって、ちょうど1年前の2020年1月23日、グループを脱退することが公式サイトで発表されました。これによって、デビューから脱退まで全てのシングル表題曲・カップリング曲でセンターポジションを務めた存在となりましたが、センターしか経験せずグループを離れたアイドルは、秋元康プロデュースのグループでは初めてとのこと。同年12月9日にフジテレビ系列「2020FNS歌謡祭 第2夜」に生出演し、自身が作曲にも参加したオリジナルのソロ曲「ダンスの理由」を初披露。同月22日、自身のYouTubeチャンネルを開設し、「ダンスの理由」ミュージックビデオを公開。このMVの完成度は非常に高く、彼女のダンスは観る者の心に響いてきます。
平手友梨奈といえば、正直言って、気難しいイメージがあります。よく「周りに媚びない性格」などと表現されることもあります。しかしながら、人見知りで正直すぎる性格ゆえに他人に心を開くまでに時間がかかったり、思ってもいないお世辞は言えなかったりするだけで、一度心を開いた人間には子供のように甘えたり、心からの笑顔を見せたりする一面もあるそうです。そういえば、「響 -HIBIKI-」で共演した北川景子に抱きついたり、ジャれたりしているメイキング動画を見ると、それがよくわかります。そこには19歳の女の子の等身大の姿がありました。それにしても、コロナ禍の日本の映画館をスクリーンジャックしている感のあった北川景子が本当に一瞬だけ、「さんかく窓の外側は夜」に出演したのには驚きましたね。だって、本当に一瞬だけなんですから。
あまり面白くはなかったこの映画ですが、岡田将生、志尊淳、平手友梨奈のファンたちは劇場へ足を運んだことでしょう。結局、この映画の見どころは、魅力に溢れた役者を楽しむことぐらいだと思います。もっとも、彼らの良さを生かし切っていないので、もったいなかったですけど。