No.571


 2月25日の夜、一条真也の映画館「焼け跡クロニクル」で紹介したドキュメンタリー映画をシネスイッチ銀座で観た後、TOHOシネマズ日比谷の1番シアターのボックスシートで、この日公開されたばかりの映画「ナイル殺人事件」を観ました。面白かったです! わたしの世界一好きな女優であるガル・ガドットがこの上なく美しく、まさに「目のごちそう」でした!

 ヤフー映画の「解説」は、「アガサ・クリスティの推理小説『ナイルに死す』を、『オリエント急行殺人事件』に続きケネス・ブラナーが監督・主演を務めて映画化。エジプトのナイル川をめぐるクルーズ船を舞台に、名探偵ポアロが密室殺人の解明に挑む。共演には『ワンダーウーマン』シリーズなどのガル・ガドット、『君の名前で僕を呼んで』などのアーミー・ハマー、ドラマシリーズ『セックス・エデュケーション』などのエマ・マッキーに加え、レティーシャ・ライト、アネット・ベニングらが集結。前作同様リドリー・スコットらが製作に名を連ねる」です。

 ヤフー映画の「あらすじ」は、以下の通りです。
「エジプトのナイル川をめぐる豪華客船内で、新婚旅行を楽しんでいた大富豪の娘リネット(ガル・ガドット)が何者かに殺害される。容疑者は、彼女とサイモン(アーミー・ハマー)の結婚を祝いに駆け付けた乗客全員だった。リネットに招かれていた私立探偵ポアロ(ケネス・ブラナー)が捜査を進めていくうちに、それぞれの思惑や愛憎が絡み合う複雑な人間関係が浮き彫りになっていく」

「ナイル殺人事件」は1978年にも映画化されています。このときはイギリス映画で、監督はジョン・ギラーミン、主役のポアロをピーター・ユスティノフが演じ、ベティ・デイヴィス、マギー・スミス、ジェーン・バーキン、ミア・ファロー、オリビア・ハッセーなどが出演しました。第51回アカデミー賞において衣裳デザイン賞(アンソニー・パウエル)を受賞。当初、フランソワ・トリュフォー監督に「ナイル殺人事件」のメガホンを取る依頼が寄せられましたが、イギリスからの電話を受けとったプロデューサーのアラン・ヴァニエ(フランス語版)が相手の態度が失礼だと怒って断ったそうです。

 ジョン・ギラーミン監督版「ナイル殺人事件」は、1978年12月9日、東宝東和配給により日本公開されました。その際のフィルムは、エンディングの楽曲がサンディー(サンディー・オニール名義)のヴォーカルによる「ミステリー・ナイル」に差し替えられました。この曲は日本独自のイメージソングです。本来のエンディング曲とは相容れないアップテンポなポップス・ナンバーでしたが、サビがテレビCMで印象的に用いられ、当時、中学1年生だったわたしもよく耳にしました。この「ミステリー・ナイル」が大受けして、興業的成功をもたらすと共にシングル盤も大ヒット。以後の「クリスタル殺人事件」「地中海殺人事件」でも同様にエンディング曲を女性ヴォーカルのポップス・ナンバーにする改変が行われました。「ナイル殺人事件」と聞くと、わたしは反射的に「ミステリー・ナ~イル♪」というサビの部分を思い出します。

 今回の「ナイル殺人事件」は、一条真也の映画館「オリエント急行殺人事件」で紹介した2017年の映画に続いて、ケネス・ブラナーが監督・主演を務めました。「オリエント急行殺人事件」は、これまで幾度も映像化されてきたアガサ・クリスティの傑作ミステリーの映画化です。ヨーロッパ各地を巡る豪華列車を舞台に、世界的な名探偵エルキュール・ポアロが客室で起きた刺殺事件の解明に挑みます。ジョニー・デップ、ミシェル・ファイファー、デイジー・リドリー、ジュディ・デンチ、ペネロペ・クルスら豪華キャストが集結しました。「オリエント急行殺人事件」に関しては、わたしはトリックや真犯人を知っていましたが、それでも大いに楽しめるエンターテインメント大作でした。とにかく映像が美しかったです。

「オリエント急行殺人事件」のトリック&真犯人を、わたしは観る前から知っていました。一方、「ナイル殺人事件」に関しては、まったくの白紙状態で鑑賞しました。クリスティの原作も読んでいません。1978年版の映画も観ておらず、テーマ曲だけ知っている状態でした。ですので、この極上のミステリーをハラハラドキドキしながら楽しむことができました。真犯人も最後の最後までわからず、「あっ!」と言わされましたね。この、まんまと騙されることこそミステリー映画の醍醐味なので、まことに愉快でした。よく考えてみれば、想定できる展開だったのかもしれませんが、観ている間はクリスティの仕掛けにまったく気づきませんでした。

「オリエント急行殺人事件」と同様、「ナイル殺人事件」にもバラエティに富んだ人物たちがたくさん登場します。彼らの情報を、ポアロの友人であるブークが教えてくれます。どんな人間にも他人には窺い知れない秘密がありますが、「ナイル殺人事件」の登場人物たちの場合も例外ではありません。ブーク自身は黒人女性に恋をしています。この物語の時代背景は1930年代ですので、白人男性が黒人女性と恋愛や結婚をするというのは、まだまだタブー視されていました。他にもタブー視されていたことがあります。同性愛です。この映画には1組の同性愛カップルも登場します。クリスティの原作にこれらの描写があったかどうかは知りませんが、原作にないエピソードを昨今の多様性ブームで加えたとしたら、正直ちょっと白けますね。


 わたしがこの映画を非常に気に入ったのは、やたらとシャンパンを開けて飲むシーンがあるからです。じつは、わたしは一部の方々の間で「シャンパン王子」などと呼ばれるほどのシャンパン好きなのですが、シャンパン好きというのは100%がパーティー好きです。わたしも、「パリピ」とは自分で思っていませんが、コロナ前はいろんなパーティーに参加していました。「ナイル殺人事件」で描かれるパ―ティーは1930年代の世界大恐慌の直後であるにもかかわらず非常にゴージャスで、観ているだけで浮かれてきます。特に、ナイル川の豪華客船でグラスにシャンパンを注がれたガル・ガドット演じるリネットが「シャンパンなら、いくらでもあるわよ。このナイルの水と同じぐらいに!」と言ってグラスの中のシャンパンを川に投げ入れるシーンがありますが、最高にカッコ良かったですね!

 あと、この映画、とにかくピラミッドをはじめとするエジプトの景観が圧倒的に素晴らしかったです。ボックスシートで鑑賞したこともありますが、本当にエジプト旅行をしているような錯覚にとらわれました。ピラミッドやスフィンクスを空撮しているので、実際の位置関係もよくわかります。じつは、わたしは何度もエジプトに行く計画を立てたのですが、そのたびにテロや事件が発生して、行けなくなった苦い思い出があります。

 ぜひ、生きているうちにエジプトに行ってみたいです!
 人類史上に特筆すべき大いなる「死」と「葬」の文明を築いた地を訪れないわけにはいきませんから。映画の中で荘厳な姿を見せたアブ・シンベル神殿も、この目で見たいです。アブ・シンベル神殿はエジプト南部とスーダンの国境近くのヌビア遺跡群の中にあります。わたしが親しくしてさせていただいているアフリカ医療支援のNPO団体であるロシナンテスの川原尚行代表の活動の場がスーダンですので、いつかエジプトと併せてスーダンに行き、川原代表を表敬訪問したいですね。

 そして、なんといっても、映画「ナイル殺人事件」はリネットを演じたガル・ガドットのための映画だと言えるでしょう。今年で36歳になる彼女はまさに女盛りの美しさで、この映画では露出度の高いファッションに身を包んでいるので、目の保養になりました。(笑) 今や世界の映画界を引っ張るほどの大スターになったガドットですが、今後の作品として「ワンダーウーマン」シリーズ第3作、エジプトの女王の物語である「クレオパトラ(原題:Cleopatra)」、さらには、ディズニー実写版「白雪姫」などの注目作が待機しているそうです。クレオパトラ役ならガドットにとって適役中の適役でしょうが、白雪姫役というのは「?」ですね。年齢的にもキャラ的にも大いに疑問であります。


 パラマウント・ピクチャーズのもとで進行していた「泥棒成金」(1955年)の再映画化企画にガドットが主演・製作を務めることが明らかになりました。「泥棒成金」は、デイヴィッド・ドッジによる同名小説を基に、アルフレッド・ヒッチコック監督が脚色し映画化した作品で、わたしの大好きな作品です。物語は、「猫」という異名を持つ引退した宝石泥棒のジョン(ケイリー・グラント)が、リヴィエラの屋敷で何不自由ない生活を送っていたところ、「猫」と同じ手口の宝石盗難事件が続発し、自身にかけられた疑惑を晴らすため調査に乗り出します。

「サスペンスの神様」と呼ばれたヒッチコックならではのスリリングな展開に加えて、ジョンとグレイス・ケリー演じる令嬢の恋の駆け引きも見どころです。リメイク版のプロデューサーにはガル・ガドットのほか、彼女の夫であるヤロン・ヴァルサノ、「ワイルド・スピード」シリーズのニール・H・モリッツが名を連ねています。リメイク版の物語については不明ですが、当然ながらガドットはグレース・ケリーが演じた令嬢を演じることが予想されます。しかしながら、昨今の風潮で男女逆転した物語も有り得るとされています。まあ、どちらにしても、ガドット主演の「泥棒成金」が楽しみです!