No.760
東京に来ています。
9月2日の朝一番で水天宮のホテルで朝食ミーティングをした後、日比谷へ。TOHOシネマズ日比谷で前日から公開されたディズニー映画「ホーンテッドマンション」をドルビー・アトモスで観ました。音響はすごい迫力で、まるでテーマパークのアトラクションのようでした。内容はホラーとしては怖くなかったですが、愛する人を亡くした人の悲しみを描いたグリーフ映画としては興味深かったです。
映画ナタリー「解説」には、「ディズニーランドの人気アトラクションのホーンテッドマンションを映画化した、アクションエンタテインメント。呪われた館・ホーンテッドマンションを手に入れた家族が、館の怪異に巻きこまれる。監督はジャスティン・シミエン。出演はロザリオ・ドーソン、オーウェン・ウィルソン、ティファニー・ハディッシュ、ララキース・スタンフィールドら」とあります。
映画ナタリー「あらすじ」は、以下の通りです。
「医師として働くシングルマザーのギャビーは、ニューオリンズで破格の条件で豪邸を手に入れる。9歳の息子のトラヴィスと引っ越すが、豪華なマイホームで、ふたりは不可解な現象に何度も遭遇してしまう。ふたりを救うため、クセのある心霊専門家たちが集まり......」
映画のモデルになった「ホーンテッドマンション」は東京ディズニーランドをはじめ、世界各国のディズニーパークにあるライド型お化け屋敷のアトラクションです。ゲストはプレショーとして、「年老いていく肖像画の部屋」「伸びていく肖像画と壁の部屋(ストレッチングルーム)」の順に案内され、それを見たあと、ドゥームバギー(Doom Buggy、死の車)と呼ばれる3人乗りの黒い椅子型のライドに乗り込みます。登場する亡霊たちは様々なオーディオアニマトロニクスによって複雑に動き、ライドに内蔵されたゴーストホストの声に連動してゲストを恐怖に陥れます。コンセプトアートはマーク・デイヴィスが担当し、アトラクション内の音楽はバディ・ベイカーが担当。
わたしも何十回と堪能したこのディズニーランドの人気アトラクションをモチーフに映画化したのが映画「ホーンテッドマンション」。999人のゴーストが住む館が舞台です。新たな生活を始めるため、医師である母親のギャビー(ロザリオ・ドーソン)と息子のトラヴィス(チェイス・W・ディロン)は、ニューオーリンズの壮大だけどちょっと不気味な館に引っ越してきますが、2人には想像をはるかに超える不可解なことが次々に降りかかるのでした。
呪いの館の謎を解明するために、ギャビーたちは、ゴーストを信じない心霊写真家ベン(ラキース・スタンフィールド)と、調子が良すぎる神父ケント(オーウェン・ウィルソン)、何かと大げさな霊媒師ハリエット(ティファニー・ハディッシュ)、幽霊屋敷オタクの歴史学者ブルース(ダニー・デヴィート)の4人に助けを求めることになります。だが、このエキスパートたちも全員がワケアリのメンバーした。不気味な体験を通して、メンバーたちはついに館に隠された悲劇的な真実に気付き始めます。
このチームを組んでゴーストを退治するというストーリーは、あの有名な映画を連想してしまいます。そうです、「ゴーストバスターズ」(1984年)です。ピーター、レイモンド、イーガンの科学者3人組が結成したオバケ撃退部隊ゴーストバスターズ。派手な宣伝のおかげで3人が一躍人気者になった頃、ニューヨークでは門の神ズールと鍵の神ビンツが出会おうとしていた。2つの神が人間の体を借りて結合した時、世界は悪魔の支配下に置かれます。
映画「ホーンテッドマンション」の監督を務めるのは、ディズニーランドの元キャストという異例の経歴を持つジャスティン・シミエンです。母親ギャビー役を務め、ドラマ「スター・ウォーズ:アソーカ」で主演のアソーカ役として注目を集めるロザリオは、シミエン監督について「彼の細部のレベルまでこだわる姿勢、アトラクションに対する情熱、そして彼のビジョンはとても明確だったわ」とコメント。「彼が創造し、装飾し、再構築したアトラクションに招待してもらえて、本当に素晴らしく感じたわ」と称賛を送っています。
さて、映画「ホーンテッドマンション」にはクランプという悪霊の親玉が登場します。彼は生前は不動産王だったそうです。不動産王クランプ! これはもう、誰が見てもモデルはトランプ前大統領だとわかりますね。こういうわかりやすすぎる風刺表現をするところはいかにもアメリカらしいですが、それにしてもトランプはディズニーから嫌われているようですね。トランプ氏は前回の大統領選挙で、ジョージア州の票の集計作業に介入したとして起訴されました。24日にジョージア州アトランタの拘置施設に出頭したトランプ氏は、マグショットと呼ばれる被告人としての顔写真を撮影され、保釈後に公開されました。
『ロマンティック・デス』(国書刊行会)
映画「ホーンテッドマンション」の冒頭、舞台となるニューオーリンズの街が登場しますが、「この街の人々は、すべてを楽しむ。死は忌み嫌うことではなく、この街では葬式も祝祭となる。悲しみは喜びの入口となる」といったナレーションが流れて、いきなり感動しました。これは、かつて、わたしが『ロマンティック・デス』(国書刊行会、幻冬舎文庫)で訴えたメッセージと同じであり、最近提案した「リメンバー・フェス」の考え方にも通じています。『ロマンティック・デス』は「月」と「死」の関係を考察した本ですが、「ホーンテッドマンション」の幽霊たちは満月の夜にしか姿を現さず、満月の光によってパワーアップするという描写も同書の内容を連想させました。
『唯葬論』(三五館)
ちなみに、『ロマンティック・デス』のアップデート版と新刊『リメンバー・フェス』を「R2本」として刊行する計画があります。版元は「WC本」と同じオリーブの木です。『ロマンティック・デス』のアップデート版といえば、2015年に上梓した『唯葬論』(三五館、サンガ文庫)にもその要素はありました。同書は「なぜ人は死者を想うのか」というサブタイトルがついており、幽霊という考え方そのものに始まり、降霊会も心霊写真も、みんな亡き死者に再会したいという死者への想いが根底にあり、それらはすべてグリーフケアの文化なのだと述べました。
『愛する人を亡くした人へ』(現代書林)
「ホーンテッドマンション」に登場するトラヴィス少年は、父親を亡くしています。彼は亡き父親と心の中で会話して、寂しさを紛らわしています。また、写真家ベンは、最愛の恋人アリッサを交通事故で失い、彼女に再会したいという想いから霊視カメラを開発します。彼らはともに「愛する人を亡くした人」であり、トラヴィスとベンの間には「悲縁」がありました。ちなみに12月1日からヒューマントラストシネマ有楽町など全国の映画館で公開されるドキュメンタリー映画「『グリーフケア』の時代に」にはわたしも出演し、「悲縁」について語りました。
12月1日に全国公開する「『グリーフケア』の時代に」
同作で「悲縁」について語りました