No.761


 東京から北九州に戻りました。
 9月2日、一条真也の映画館「ホーンテッドマンション」で紹介したディズニー映画をTOHOシネマズ日比谷で鑑賞した後、日活製作の日本映画「スイート・マイホーム」を観ました。これは大傑作でした。これほど怖い映画を観たのは久々です。「ホーンテッドマンション」の怖さを10点満点で1点だとしたら、本作は10点。日活がディズニーを圧倒。これはもう、今年の一条賞の有力候補作品です!
 
 映画ナタリーの「解説」には、「極寒の長野に住むスポーツインストラクターの清沢賢二は、妻子のために地下に暖房設備が整った一軒家を手に入れる。理想の家で清沢一家は充実した新生活を始める。しかし、差出人不明の脅迫メールや、地下に興味を抱く娘など不可解な出来事が一家を襲い始める」とあります。
 
 映画ナタリーの「あらすじ」は、「第13回小説現代新人賞に輝いた神津凛子のデビュー作を映画化。極寒の地で地下暖房設備の整った一軒家を手に入れた一家が、身の毛もよだつ恐怖に襲われる様子を描く。監督は俳優としても活躍している齊藤工。主演は『劇場版ラジエーションハウス』の窪田正孝。共演は蓮佛美沙子、『余命10年』の奈緒、『よだかの片想い』の中島歩、里々佳ら」です。
 
 原作は、2018年の小説現代長編新人賞の選考会で選考委員全員が戦慄したという傑作長編ホラー。著者デビュー作にして業界を騒然とさせたことが話題となりました。アマゾンの内容紹介には「長野の冬は厳しい。スポーツインストラクターの清沢賢二は、たった一台のエアコンで家中を隅々まで暖められると評判の『まほうの家』のモデルハウスに心奪われる。寒がりの妻と娘のために、その家を建てる決心をする賢二。新居が完成し、家族に二人目の娘も加わって、一家は幸せの絶頂にいた。それなのに――。赤ん坊の瞳に映るおそろしい影。地下室で何かに捕まり泣き叫ぶ娘。念願のマイホームに越した直後から奇妙な出来事が起こり始める。立て続けに起こる異変の先、賢二を待ち受けていた衝撃の結末とは――」と書かれています。
 
 この映画は、本当に怖い。よく「幽霊よりも生きている人間の方が怖い」などと言いますが、それを地で行った内容です。最初は、Jホラーの金字塔である「呪怨」シリーズとか、一条真也の映画館「残穢―住んではいけない部屋―」で紹介した作品のような心霊ホラー映画を予想していたのですが、観客の想像力を斜め上を行く展開には脱帽しましたね。主人公の不倫相手が謎の人物から嫌がらせをされるシーンも最高に怖かったです。わたしは、「幸せな家庭を築くには、素敵な家を持つ前に不倫をしないことが大前提」というメッセージのように思えました。こんな作品のメガホンを取ったのが、一条真也の映画館「昼顔」で紹介した不倫映画で主演した齋藤工だというのも面白いですね。これ以上書くとネタバレになるので、やめておきましょう。
 
 齊藤監督は原作について「風が吹くというか、映像的な文体、物語、世界観だなと思いましたし、非常に人の業というか、奥の奥にあるものが、すごく丁寧に描かれていると思いました」と語っています。また、「これは誰の目線なんだろうということ、スマートホーム的な、いわゆるセキュリティーカメラを含めて、この目線は誰が見ている、どういう景色なんだろうということで、同じものでも意味が変わってくる」と、撮影のこだわりについても明かしています。演技陣も充実しており、主演の窪田正孝、蓮佛美沙子、奈緒、窪塚洋介ら実力派俳優たちの熱演が光りました。窪塚洋介・窪田正孝が兄弟を演じるのですが、この「窪・窪」コンビもなかなか良い味を出していました。