No.805


 東京に来ています。11月28日の夕方、日比谷で打ち合わせをした後、TOHOシネマズ日比谷で映画「ロスト・フライト」を観ました。翌日が島薗進先生との対談なので止めようかと思ったのですが、わたしのような重症の映画中毒者には無理でした。ネットでかなりの高評価なのと、地元の北九州では上映されていない作品なので、思い切って鑑賞した次第です。結果は大満足。すごく面白かったです!
 
 ヤフーの「解説」には、こう書かれています。
「『エンド・オブ』シリーズなどのジェラルド・バトラーが主演を務めたサバイバルアクション。悪天候によるトラブルで、反政府ゲリラの支配地域に不時着した飛行機の機長が、乗客らを守るために移送中の犯罪者と協力して敵に立ち向かう。小説家のチャールズ・カミングが脚本、『アサルト13 要塞警察』などのジャン=フランソワ・リシェが監督を担当。バトラーふんする機長と手を組む犯罪者をドラマシリーズ「Marvel ルーク・ケイジ」などのマイク・コルターが演じる」
 
 ヤフーの「あらすじ」は、以下の通りです。
「悪天候の中、落雷によりコントロールを失ったブレイザー119便は、フィリピンのホロ島に不時着する。トランス機長(ジェラルド・バトラー)をはじめ乗客らは一命を取り留めたものの、不時着した場所は反政府ゲリラが支配する無法地帯だった。ゲリラたちが迫り来る中、乗客らを守るためにトランスは移送中だった犯罪者、ガスパール(マイク・コルター)と手を組むことにする」
 
 映画に出てくる機長と副機長は、プロフェッショナルの鑑です。2人とも、自らの命を危険に晒しても、乗客の安全を第一に考えます。その姿は、顧客第一主義の会社を経営する社長と副社長(あるいは専務)のようです。経営を飛行機の操縦に例えるならば、会計データは経営のコックピットにある計器盤に表示される数字に相当します。計器は経営者たる機長に、刻々と変わる機体の高度、速度、姿勢、方向を正確かつ即時に示すさなければなりません。そのような計器盤がなければ、今どこを飛んでいるかわからないわけですから、まともな操縦などできるはずがありません。そんなことを考えました。会社経営を飛行機の操縦に例えることは、故稲盛和夫氏から学びました。
 
 どこだかわからない場所に不時着したトランス機長は、古びた施設を見つけて電話回線を修復。なんとかブレイザー社の本社に連絡を取りますが、あろうことか電話を受けたオペレーターがトランスからの必死の電話をイタズラ電話だと思い込んでしまい、無情にも通信は途切れます。ブログ「LINEが使えなくなる?」でも述べましたが、なんでもかんでも詐欺やイタズラと決めつけてすぐ信じないのは現代病にほかなりません。わたしは、この場面を見て、「わが社にもこのようなことがないだろうか?」と自問しました。ただし、オペレーターは最低でしたが、ブレイザー社の危機管理室の面々は立派でした。乗客や乗務員の生命を守るために適切な対応としたと思います。
 
 不時着した乗客の中には、移送中の殺人犯もいました。同行の刑事が飛行機事故で死亡してしまい、後には手錠をかけられたガスパール(マイク・コルター)のみが残りました。トランス機長は、彼の手錠を解くべきか解かざるべきかと迷いますが、彼の私物の中にあったサバイバルナイフを見て、彼の正体を見抜きます。そして手錠を解かれたガスパールは八面六臂の大活躍でトランスを助けるのでした。わたしは基本的に性善説の立場に立っていますので、「人を信じるか、信じないか」という選択においては、究極のところで信じる方を選びます。「それで裏切られても仕方ない」と考えます。人生は選択の連続ですが、人を信じない人生は虚しく、ストレスフルです。
 
 それにしても、たまたま不時着した場所が反政府ゲリラが支配する無法地帯だったとは! わたしは、昔読んだコナン・ドイルの短編小説を思い出しました。それは、ある異星人が地球を訪れたとき、到着した場所が密林だったという話でした。その密林には凶暴なトラがいて、か弱き異星人はそのままトラに食われてしまったという内容だったと思います。なんとか命拾いした他の異星人は故郷に逃げ帰って「地球はきわめて危険な場所である」と報告したのでした。もちろん、地球上のすべてが猛獣が生息しているわけでも、反政府ゲリラが潜んでいるわけでもありませんが、「たまたま、その場所が〇〇だった」という設定は、人生における摩訶不思議な運命を象徴していますね。
 
「ロスト・フライト」はとても面白いアクション映画ですが、飛行機や軍事の専門家から見れば、突っ込み所は多いと思います。でも、「犯罪組織に捕らわれたときは?」」「身代金ビジネスの今」「主人公の行動の真意とは?」などの点において、危険地帯ジャーナリストの丸山ゴンザレス氏は自身の経験をもとに「ロスト・フライト」のリアルを熱く語っています。わたしは、トランス機長の気性が荒く、腕っぷしが強いところが気に入りました。特に、彼はグラップラー(柔術に代表される組技系の格闘者)として優れており、中でも相手の首を絞める技術が素晴らしかったです。「男はやっぱり強くないと!」と痛感しましたが、こんなことを言うと、フェミニストに怒られますかね? 感動のラストは、 一条真也の映画館「インターステラ―」で紹介したSF映画の名作を連想させました。