No.917


 7月10日の夕方、出版関係の打ち合わせや映画関係の打ち合わせの間を縫い、ヒューマントラストシネマ有楽町で韓国映画「WALK UP」を観ました。今年観た90本目の映画でしたが、つまらなくて爆睡しました。
 
 映画ナタリーの「解説」には、「第74回ベルリン国際映画祭銀熊賞に輝き、通算5度目の銀熊賞受賞を果たしたホン・サンス監督による人間ドラマ。4階建ての小さなアパートを舞台に、芸術に携わる人々の人間模様が繰り広げられる4つの物語をモノクロで描く。出演は、ドラマ『冬のソナタ』のクォン・ヘヒョ、イ・ヘヨン、ソン・ソンミ、チョ・ユニ、パク・ミソらが名を連ねる」とあります。
 
 映画ナタリーの「あらすじ」は、以下の通りです。
「映画監督のビョンスはインテリア業界を志す娘と、インテリアデザイナーの旧友ヘオクのアパートを訪れる。アパートは各階にレストラン・料理教室・賃貸住宅・アトリエが入っていた。3人はワインを飲みながら語り合うのだが、ビョンスに仕事の連絡が入り......」
 
 ホン・サンス監督の映画を観るのは一条真也の映画館「小説家の映画」で紹介した昨年日本公開の映画以来です。名声を得ながらも大きな葛藤を抱えた作家と女優が、偶然の出会いを通じて映画を撮ろうとする物語でした。作家として成功を収めながらも執筆から遠ざかっているジュニ(イ・ヘヨン)は、疎遠になっていた後輩を訪ねる旅に出ます。その道中、韓国・ソウル近郊の町でかつての人気女優・ギルス(キム・ミニ)と出会います。初対面ながらも彼女と気持ちが通じ合うのを感じたジュニは、ギルスを主演に短編映画を撮りたいと持ち掛けるのでした。
 
 前作「小説家の映画」も、本作「WALK UP」も、モノクロで会話ばかりの展開に眠くなりました。結局、何が言いたかったのか、両作品ともよくわかりませんでしたね。やたらと食べたり飲んだりするシーンがダラダラ続くのも退屈でした。「もしかして、小津安二郎を誤読していないか?」と思ってしまいました。ホン・サンス監督は長編映画を28本も作っているそうですが、もしかして全部がこんな感じなのでしょうか? モノクロなので何となくアートっぽいのですが、まったく内容がありません。
 
 映画監督がやたらとモテる展開なのも違和感をおぼえました。「WALK UP」では、主人公ビョンスに初めて会った中年女性が2人とも「監督のファンなんです!」と目がハートマークになり、1人は「監督の作品は全部観ました!」とアピール。「どの作品が一番好きですか?」という質問には、「全部好きです!」と答える始末。「おいおい、本当にこの監督の映画を観たことあるの?」と突っ込みたくなりました。結局はその女性とベッドインするのですが、「なんだなかあ...」と思ったのは、わたしだけではありますまい。これがホン・サンス自身の投影なら醜悪でしかありません。映画監督による映画監督が主人公のナルシスト映画だと思いました。もう、この監督の映画は観ないことにします。