No.926


 7月18日の夜、出版の打ち合わせをした後、TOHOシネマズシャンテで「Shirley シャーリイ」を観ました。作家の内面を探る映画ということで楽しみにしていたのですが、「よく、わからん!」というのが正直な感想です。この日は早朝から月次祭があって寝不足だったこともあり、上映中はかなりの時間を爆睡してしまいました。
 
 ヤフーの「解説」には、こう書かれています。
「映画化もされた『たたり』などで知られる作家シャーリイ・ジャクスンの伝記をベースにしたスリラー。新作執筆に苦慮する彼女が、ある若夫婦との共同生活を通じて創作のインスピレーションを得る。『空はどこにでも』などのジョゼフィン・デッカーが監督を務め、マーティン・スコセッシが製作総指揮に名を連ねた。『透明人間』などのエリザベス・モスがシャーリイを演じ、『シリアスマン』などのマイケル・スタールバーグ、『帰らない日曜日』などのオデッサ・ヤング、『ウォールフラワー』などのローガン・ラーマンらが共演」
 
 ヤフーの「あらすじ」は、以下の通りです。
「1948年、短編『くじ』で作家としての名声を築いたシャーリイ・ジャクスン(エリザベス・モス)は、ある未解決事件が題材の新作に取り組むもスランプに陥っていた。そんな中、大学教授である夫のスタンリー・ハイマン(マイケル・スタールバーグ)の勧めにより、彼の補佐であるフレッド(ローガン・ラーマン)とその妻のローズ(オデッサ・ヤング)が居候として家にやって来る。当初は他人が家にいることを嫌がるシャーリイだったが、献身的に自分の世話や家事をするローズと過ごすうちに、創作のインスピレーションを得るようになる」
 
 映画「Shirley シャーリイ」」は面白い映画でもありませんし、楽しい映画でもありません。「よく、こんな華のない作家を主人公にしたな...」と思うほど地味な作品ですし、大学教授の夫も嫌な感じで、とにかくストレスフルな映画でした。女子大生が行方不明になった未解決事件も中途半端な描き方ですし、全体的に不条理なストーリーでしたが、唯一思い当たることがありました。それは、この映画には妊娠したばかりの女性が登場するのですが、彼女の不安な精神状態がこの理解しがたい物語に反映しているのではないかということです。
 
 シャーリー・ジャックソンには、『山荘綺談』というベストセラー小説がありますが、映画「ウエスト・サイド物語」(1961年)のメガホンを取ったロバート・ワイズが制作並びに監督にあたり、「たたり」(1963年)として映画化されました。ニューイングランドの古い屋敷には、怪奇現象が起こるという噂が常に付きまとっていました。超常現象の研究家であるマークウェー教授(リチャード・ジョンソン)は、その噂の真偽を確かめるべく、二人の助手と共にやってきます。やがて屋敷に不可思議な現象が起こり始めるのでした。
 
 怪奇映画の名作と知られた「たたり」を「スピード」(1994年)、「ツイスター」(1996年)のヤン・デ・ボン監督がSFⅩを駆使してリメイクしたホラー映画が「ホーンティング」(1999年)です。霊に対する恐怖を研究しているマロー教授(リーアム・ニーソン)が、睡眠障害の実験とだまして3人の男女を幽霊屋敷のヒル・ハウスに招待します。長年にわた母親の看病生活に耐え忍び、あげくに受け取れると信じていた遺産を奪われ、住む所を追われた内気な性格のネル(リリ・テイラー)。一文なしの彼女は新聞広告で募集されていた不眠症の臨床患者のアルバイトに参加するため、人里離れたヒル・ハウスに赴くのでした。
 

 シャーリイ・ジャクスンは、1916年12月14日、アメリカ合衆国カリフォルニア州サンフランシスコで生まれました。1965年8月8日に没しています。日常と非日常の境界、日常生活のなかの人間心理の異質さを描く作風で知られる作家です。2008年、彼女の名を冠したシャーリイ・ジャクスン賞が創設されました。映画「Shirley シャーリイ」では、創作に悶え苦しむ彼女の姿が描かれていますが、怪奇小説という完全なる非日常世界を産み出すことの大変さを思い知りました。かの江戸川乱歩が暗い土蔵の中で小説を書いていたことを思い出します。わたしもホラーが好きなので、いつか怪奇小説を書いてみたいと思っているのですが、「Shirley シャーリイ」を観て、ちょっとその気が萎えました。