No.949
日本映画「サユリ」をT・JOYリバーウォーク北九州で観ました。ホラー映画の名作を多く手がけてきた白石晃士監督の最新作です。面白かったですが、ちょっと設定に無理がありましたね。根岸季衣の怪演にはぶっ飛びました!
ヤフーの「解説」には、こう書かれています。
「『ミスミソウ』の原作などで知られる押切蓮介のホラー漫画を、『貞子VS伽椰子』などの白石晃士監督が実写映画化。夢の一戸建てマイホームに越してきた一家が、次々と不可解な現象に見舞われるさまを描く。新居にすみ着く少女の霊・サユリによって家族を奪われた主人公を『ザ・ファブル』などの南出凌嘉、サユリへの復讐を誓う祖母を『殺人鬼を飼う女』などの根岸季衣が演じるほか、近藤華、梶原善、占部房子らが共演する」
ヤフーの「あらすじ」は、「憧れの一戸建てマイホームに越してきた神木家。家族7人そろって新居での生活が始まるが、不可解な出来事が立て続けに起こり、家族が一人、また一人と命を落としていく。一家を不幸に陥れる呪いの根源は、この家にとり着く少女の霊・サユリだった。絶望に打ちひしがれる一家の長男・則雄(南出凌嘉)の前に、認知症が進行しているはずの祖母・春枝(根岸季衣)が現れ、家族を奪ったサユリへの復讐を誓う」です。
憧れの一戸建てマイホームに越してきた一家が悪霊に祟られるというホラー映画は無数にありますが、そういった映画を観るたびに、わたしは祟られた一家が気の毒でならず、たまらない不条理さを感じてしまいます。せっかくお父さんが一生懸命働いて、ようやく購入した夢のマイホームをムチャクチャにしたばかりか、家族の生命まで奪ってしまう悪霊に対して、「それはないだろう」「その人たちに罪はないだろう」と思ってしまうのです。本来は、悪霊となる原因になった張本人に恨みを晴らすべきですが、それが出来ないところが地縛霊の悲しさ。
しかし、「サユリ」では、根岸季衣が演じるイカれた老婆・春枝が、悪霊ばかりか、悪霊が恨む張本人をも探し出し、きちんと落とし前をつけようとします。普通のホラー映画では、悪霊に祟られた人々は泣き寝入りするしかありませんが、この映画は違うのです。正直、こんなにもカタルシスをおぼえたホラー映画は初めてです。大暴れする春枝の雄姿からは、「エイリアン」シリーズでシガニー・ウィーバーが演じたエレン・リプリーを連想しましたね。いやあ、春枝ばあちゃん、最高でした!!
「サユリ」というホラー映画で印象的だったのが、悪霊を怖がると相手に付け入る隙を与えるので、わざと大声で笑う場面でした。この場面を観て、わたしは今は亡き作家・景山民夫さんのホラー小説『ボルネオホテル』(角川ホラー映画)の内容を思い出しました。景山さんには生前とてもお世話になったのですが、『ボルネオホテル』で最恐の幽霊屋敷を描いたとき、悪霊を追い払う画期的な方法を示されたのです。それは恐怖の感情こそが悪霊にパワーを与えるので、怖がらないために明るいハッピーな歌を歌うというというものでした。景山さんは「この世で最もハッピーな歌といえば、あの歌しかない!」として、なんとディズニーの「ミッキーマウス・マーチ」を登場人物に歌わせます。その歌のポジティブなパワーに気圧された悪霊は退散するのでした。いやあ、なつかしいですね。景山さん、いま、あちらの世界では元気にされていますか?